木村拓哉さん主演の映画「教場」が話題を呼んだ今年、実際に富山県内でも警察官の卵たちが日々、厳しい訓練に励んでいる。早朝6時の点呼から始まり、午後11時の消灯まで続く寮生活。食事さえも「訓練の一環」となるその1日に密着した。

午前6時、緊張感の中で始まる朝


「おはようございます」「番号1・2・3〜異常なし」


夜明けとともに、富山県警察学校には凛とした声が響き渡る。点呼が終わると、すぐに「錬成」と呼ばれる朝のトレーニングが始まる。教官の号令のもと、学生たちは「いち・いち・いちにー」と声を合わせて駆け足を続ける。

2026年4月に入校したのは、18歳から32歳までの85人。そのうち女性は18人で、女性の割合は年々増加傾向にあるという。この85人が、6カ月から10カ月にわたって寮生活を送りながら、一人前の警察官を目指す。
週1回の服装点検、シャツのシワも見逃さない


午前中には週に1回の服装点検が実施された。シャツのシワ、ベルトの位置—細部にわたって念入りに確認が行われる。
教官の指示に従い、学生たちは一糸乱れぬ動作で応じる。「気を付けい、敬礼、お願いします」という学生の声が、張り詰めた空気の中に響いた。



毎日9時から始まる授業は、1コマ80分。「教場」と呼ばれるクラスでは、憲法や法律、職務倫理など、警察官として必要な教養を幅広く学ぶ。
昼食10分で完食 それも訓練のうち

「やっと一息」と思いきや、昼食の時間にも驚きが待っていた。この日のメニューはタコライス。しかし、これも訓練の一環だという。突発的な事件や事故に備えて素早く食事をとることが、警察官には求められている。


85人全員が、わずか10分間で完食した。
午後は逮捕術 警棒、柔道、拳銃操法


午後からはいよいよ逮捕術の授業だ。犯人を制圧するための体さばきを実践的に訓練する。
「イチ、エイ! ニ、エイ!」

相手の刃物を打ち落とし、威圧する際に欠かせない警棒の使い方も学ぶ。教官は細かく指導する。「曲がった状態だと力が入らない。しっかり伸ばして打ち付ける」。ミット打ちの練習にも、学生たちは全力で臨む。


逮捕術のほかにも、柔道・剣道・拳銃操法など、警察官に欠かせない技術を日々鍛錬する。午後5時半、ようやく1日のカリキュラムが終了した。
夕食の時間は「オフ」


昼食と違い、夕食には時間制限がない。教官もその場におらず、同期だけで食卓を囲む。

「ご飯の時間がとてもリラックスできる。皆で話し合いながら食べてるんで楽しい。今日のご飯は格段にうまいっすね」

「授業とかは(スイッチが)オンのときなんですけど、この夕食のときオフになって皆で楽しく食べる」
緊張の連続である日常の中で、夕食のひとときが学生たちにとって唯一の息抜きとなっている。

夕食後は課外時間。午後11時の消灯まで、入浴や自主運動、授業の予習など、各自が自由に過ごす。テストに向けて逮捕術の動作を練習し合う姿もあり、時には教官が付き合うこともある。

「奥田交番襲撃事件が、きっかけでした」
それぞれの志を持って集まった85人。なぜ警察官を目指したのか聞いてみた。

「自分の祖父が警察官をしていた。ドラマをみて警察官という仕事に興味をもった。事件や事故のニュースを見ているだけでは辛く、警察官となり、辛い思いをする方を少しでも減らしたい」

「奥田交番襲撃事件がきっかけ。地元で起きた大きな事件で衝撃だった。地域を守る警察官になりたい。凶悪な犯人を捕まえたい」
なかには、保育士から転身を志した人物もいる。米田航太巡査だ。


「保育士の仕事をしている中で一番やりがいを感じたのが、誰かが喜んでくれたり頼りになったと言ってくれたこと。幅広くいろんな人の役に立つ仕事がしたいなと思ったときに警察という仕事を見つけて目指したいと思った」
米田巡査が特にやってみたいのは、防犯教室だという。「警察としての知識も持っているし、どうすれば子どもに伝わりやすいかという知識も持っている。上手く経験を生かしてできないかなと」。保育士としての経験と警察官としての使命を重ね合わせた、ひとつの志がそこにある。

それぞれの思いを胸に、富山県警察学校の85人は今日も訓練を続ける。6カ月から10カ月後、彼らが地域の現場に立つ日が来る。
(富山テレビ放送)
