突然、周囲がぐるぐると回り出す激しいめまい…吐き気や冷や汗を伴うこともある「良性発作性頭位めまい症」。それは、耳の奥にある小さな石の“迷子”が原因かもしれない。さらに、女性に多い骨粗しょう症との意外な関係も。
福井県済生会病院耳鼻咽喉科の清水良憲医師にメカニズムと予防法を聞いた。
耳石が三半規管の中に入り込むことで発症
ベッドから起き上がるときや寝返りを打ったときに、クラっときた経験がある人もいるのではないだいろうか。
清水医師によると、良性発作性頭位めまい症は、平衡感覚を司る三半規管に耳石が入り込むことで起こる病気。三半規管の付け根に耳石が詰まった器官があり「本来は耳石器の中にある耳石が剥がれて塊になり、三半規管の中に入り込む」ことでめまいが起きるという。
剥がれた耳石は三半規管の内部を移動し、人が寝返りをしたり寝たり起きたりするたびに動く。「その耳石が動く刺激が、三半規管の付け根にある感覚細胞に伝わることでめまいとして自覚される」のが発症のメカニズムだ。

周囲がぐるぐると回るように感じる激しいめまいに加え、多くの人が吐き気を伴うほか、動悸がしたり冷や汗をかく人も。
症状の激しさゆえに深刻な病気と混同されやすいが、病名に「良性」とあるとおり、適切な対処によって改善が見込める。
中年女性が多く発症…骨粗しょう症との関係
誰にでも起こりうるが、発症しやすい傾向にあるのは「一般的に40代から60代ぐらいの中高年で、男女比では2対1ぐらいで女性に多い」と清水医師。
なぜ中高年の女性に多いのか。
「一説には、カルシウムの代謝や骨粗しょう症が関係するといわれていて、特に骨粗しょう症が起こりやすい中高年の女性に多いといわれている」

耳石の主成分はカルシウム。骨粗しょう症の人はカルシウムの代謝異常が起こりやすく、その影響で耳石が剥がれやすくなると考えられている。ただし、だからといってカルシウムをたくさん摂れば予防できるというわけではなく、現時点で治療法は確立していない。
特定の方向で寝ると耳石が剥がれやすく
骨粗しょう症でないからといって油断は禁物。実は、日常のちょっとした習慣がリスクを高めている可能性がある。それが、偏った体勢で寝ること。

例えば、テレビの位置の関係で、いつも右側を下にして寝ながらテレビを見ているような場合、右の三半規管に耳石が入りやすくなる。特定の方向に繰り返し圧力や刺激がかかることで、耳石が剥がれやすい環境が作られてしまうのだ。生活の中の何気ない習慣が、思わぬ形で影響する可能性があるのだ。
そこで、予防法としては以下のようなことが挙げられる。
▼同じ方向ばかりを向いて寝ない
▼規則正しい生活を送る
▼ストレスや過労を避ける

就寝時に無意識に同じ向きで寝ている人は、まず自分の寝る姿勢を意識することが第一歩となる。
「頭転がしゲームのような」治療で耳石を元の位置に
もし病院で良性発作性頭位めまい症と診断された場合、まずめまいや吐き気を抑える点滴が投与される。
その後、迷い込んだ耳石を元の位置に戻す処置が行われるのだが、これが実に“原始的”なやり方。清水医師は「頭転がしゲームみたいな感じで」と清水医師がデモンストレーションをしてくれたのは、患者の頭を持ってゆっくりと左右に動かすという治療法。
自宅での対処としては、左右にゆっくりと寝返りを打つことも効果的だとされている。
気圧の変化が生じる 梅雨・台風シーズンは要注意
清水医師によると、梅雨や台風の時期は気圧の変化によってめまいの患者が増えるという。

気圧の変動が内耳の環境に影響を与えると考えられており、季節の変わり目には特に注意が必要だ。「目がぐるぐるとめまいがある場合、あるいは吐き気がある場合、良性発作性頭位めまい症の可能性がある」として「寝返りをしても治らないという場合は、速やかに耳鼻科受診を」と呼びかけている。
