5月29日は語呂合わせで「呉服の日」。呉服とは本来、絹で織った反物を指す言葉だが、現代では和服用の生地や和服そのものを意味することが多い。なかなか着る機会の少ない和服への支出額は年々減少し、コロナ禍以降はさらに落ち込んでいるという。

しかし一方で、レンタル着物の支出額は徐々に増加している。仙台や松島では、インバウンド客が「東京や京都ほど混雑していない」と宮城を選び、着物姿でプロカメラマンに撮影を依頼するケースが急増している。
さらに、美容室が提案する和洋折衷の着こなしなど、和服の新しい楽しみ方が宮城から広がりを見せている。和服の「いま」に迫る。
外国人利用が6割超え。宮城のレンタル着物が人気の理由
和服離れが叫ばれる中、レンタル着物サービスが人気を博している。仙台と松島でレンタル着物サービスを提供する「梅らぶ」では、意外な客層が主流となっている。
代表の中野由美さんによると、「外国人の方6割ぐらいで、日本人の方4割ぐらい」と、なんと日本人よりも外国人の利用が上回っているというのだ。
昨年、東北を訪れた外国人の数は過去最高を更新したが、大都市圏に比べればまだ少ないのが現状だ。それにもかかわらず、なぜ彼らは着物を着る場所として宮城を選ぶのだろうか。
梅らぶ 代表 中野由美さん:
仙台、東北に来るお客さまは、インバウンドの中でもリピーターが多い。
実際に松島の店舗を訪れていた台湾からの観光客一家は、日本への訪問が「20回から30回」という超リピーターであった。
宮城で着物レンタルを予約した理由について、「宮城は両親を連れてくるのに交通の便がとてもいいし、東京や京都ほど混雑していない。両親は宮城に来たことがないので、今回は旅行先を宮城にしました」と話してくれた。
彼女自身は京都でもレンタル着物を利用した経験があるが、両親と一緒なら宮城が良いと考えたという。
「宮城は自然が多く人も少なくて景色もきれい。着物を着るのに向いていると思います」と彼女が語る通り、宮城ならではのゆったりとした環境が、インバウンド客の心を掴んでいることがわかる。
プロカメラマン同行がトレンド。インバウンドの新たなニーズ
さらに、外国人観光客の着物レンタルには、日本人とは異なるもう一つの特徴が。
中野さんによると、「着物を着てプロカメラマンに撮影してもらうというニーズがある」という。
外国人観光客の多くは、単に着物を着て街を歩くだけでなく、日本の美しい風景の中で本格的な写真を撮ることを目的としている。取材が行われた日も、カメラマンと一緒に1時間で600枚以上もの写真を撮影する観光客の姿があった。
体験の満足度を問われた台湾からの観光客は、「ベリーナイス!」と満面の笑みで答え、宮城での着物体験に大いに満足している様子が窺えた。
「ギャルベルト」に「スニーカー」? ヘアサロンが提案する新スタイル
一方、誰でも和服を気軽に着てほしいと、斬新な取り組みを行っている人もいる。
素敵な着物がずらりと並ぶ店舗。一見すると呉服店のようだが、「tokito hair」という店名が示す通り、ヘアサロンだ。
もともとヘアサロンは、成人式や卒業式などの晴れの日に合わせて、ヘアメイクから着付けまでを行う店も多く、和服との相性はいいと言えるが、この店では、それだけにとどまらない。
オーナーである高津さんは国家資格である「1級着付け技能士」の資格を持つ本格派で、着物好きが高じて、2023年からリサイクル着物の取り扱いを開始しているのだ。
「着物をカジュアルに楽しんでもらいたい」と語る高津さんは、着物をただ販売するだけでなく、洋服とミックスした新しい着こなしの提案を行っている。
実際に、高橋咲良アナウンサーが、自身の着ている洋服に合わせた着こなしアレンジを体験した。
洋服の上からそのまま着物を羽織り、着物の裾から洋服のスカートを覗かせる。さらに、帯を結ばずにひだを作り、2000年代ファッションで流行した太めのベルト、ギャルベルトで留めて、足元をスニーカーを合わせれば、洋服と和服の両方を生かした、全く新しいスタイリングの完成だ。
tokito hair代表 高津彩佳さん:
新しい形で現代的な着こなし方を提案することで、着物を着てみたいけれどハードルが高いと思っていた人にも、親しみを持ってもらいたい。
高津さんのスタイリングは、着物を着る機会が晴れの日などに限られるというイメージを覆し、普段から自由に着る魅力を提案してくれた。
伝統的な和服は今、インバウンド需要という新たな活路を見出し、自由な発想の着こなしによって現代のライフスタイルにも溶け込み得るものとなっている。
決して敷居の高いものではなく、もっと自由に、もっと自分らしく楽しめるファッションとして、これからも進化を続けていくことだろう。
