「胸がドキドキして、この辺が熱くなった感じは今でも覚えている」――4年前、福岡でたまたま出会った大道芸人の姿が、鹿児島県鹿屋市に住む岩松菜津美さん(40)の人生を変えた。以来、岩松さんは介護福祉士と音楽教室講師の仕事と並行しながら、全国からパフォーマーを招いて大隅の子供たちに大道芸を届ける活動をコツコツと続けている。

「この文化を子供たちに触れてもらうには」

岩松さんは介護福祉士のかたわら、「おとあそびパフォーマーなつみかん」として保育園や子育て支援センターで音楽教室の講師を務めている。子供たちからは「楽しかった」「優しい先生だった」と慕われる存在だ。

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そんな岩松さんが大道芸と出会ったのは4年前のこと。福岡でたまたま目にしたパフォーマーの演技に、胸が熱くなる感覚を覚えた。しかし、感動と同時にある思いが頭をよぎった。

「私もその年まで知らなかった文化だったので、こうやって大隅の子供たちは知らないまま大人になるかもしれないと思ったら『これはいけない!』と思った」

帰り道、岩松さんはずっと考え続けた。「この文化を子供たちに触れてもらうにはどうしたらいいのだろう」と。

駅もショッピングモールもない町で、自分で呼べばいい

鹿屋市には駅もショッピングモールもない。待っているだけでは、大道芸はやってこない。ならば自分で動くしかない――そう決意した岩松さんは、持ち前の行動力を発揮し、出会ったその年の秋からパフォーマーを招いたイベントを開き始めた。

合言葉は「えっ!こんなところで大道芸?」。

当初は資金不足に頭を悩ませることもあったが、現在はスポンサーを見つけ、家族や友人の協力も得ながら、全国各地からパフォーマーを呼ぶ体制を整えた。パフォーマーはSNSなどを通じて募集しているが、岩松さんの地道な活動はパフォーマーの間でも話題となり、毎回、定員を上回る応募が集まるという。

パフォーマーたちは岩松さんをこう語る。「太陽みたいな人ですね。かんきつ類って感じ」「名古屋からぜひ来てくださいと言ってくれて、来ました。そういう人がいてくれないとこういう場がないので本当にありがたい」

自衛隊基地でも「えっ!こんなところで大道芸?」

そして2026年4月、岩松さんの活動に新たな舞台が加わった。鹿屋市から声がかかり、「エアーメモリアルinかのや」の企画のひとつとして、大道芸を披露する機会が実現したのだ。

自衛隊基地での開催は、まさに合言葉どおりの「えっ!こんなところで大道芸?」である。今回は7組のパフォーマーが招かれ、会場を訪れた人たちは生で見る機会が少ない大道芸にすっかり夢中になった。

「よくマジックと勘違いされるんですけど、マジックではありません。全て本人の努力でございます」というパフォーマーの言葉が会場に響くたびに、子供も大人も目を輝かせた。

大道芸を初めて見たという子供は「すごかったです」「初めてでした」と興奮気味に話し、親子連れからも「感動しました、いい時間だった」「自分でできないことがマジックでできるんだな」という声が上がった。

パフォーマーの背中越しに見る、お客さんの顔が好き

岩松さん自身が大道芸のイベントで最も楽しみにしているのは、パフォーマーの演技そのものではなく、その背中越しに見えるお客さんたちの表情だという。

「チケットを買わなくても、その場にたまたま居合わせただけでみんなが平等に楽しめるのが魅力」

エアーメモリアルに大道芸が加わったことで、航空祭を楽しみに来た人が演技に足を止める場面も多く見られた。「今回はたまたまエアメモを楽しみに来た方が足を止めてくれたのがすごくうれしかった」と岩松さんは目を細める。

そして、こう続けた。「鹿屋の皆さんに長く愛されるイベントに続けていけるようにしていきたい」

駅もショッピングモールもない鹿屋の町で、一人の女性が地道に積み上げてきた活動は、確実に地域の風景を変えつつある。次はどこで、どんな「えっ!こんなところで大道芸?」が待っているのか、楽しみだ。

【動画で見る▶大道芸で子どもと街を元気に 鹿屋で全国のパフォーマーを呼ぶ「なつみかん」岩松菜津美の挑戦 】

鹿児島テレビ
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