『ふるさと納税』の商品としても人気の微細な泡を放出するシャワーヘッドなど、泡を生かしたヒット商品を連発する福岡県内の企業を取材した。
室内に飾られた特許証は15通
福岡・筑後市の田園地帯の一角に環境機器メーカー『オーラテック』の本社はある。元々は、公共事業の設計などを手がけていた企業だった。

現在、“泡”を研究している社員は11人。浄水のための技術が思わぬかたちで大ヒットし、以後、話題の商品を次々に生み出している注目のメーカーだ。

「これは全て我が社で取った特許になります」。室内に飾られた特許証は15通。どれも社長の江口俊彦さんが発明した技術だ。

その一部を紹介すると『特許第49143995号』は、1ミクロン以下のナノバブルを自在にコントロールできる技術。また『特許第7282389号』は、数ミクロンのミストを高速で飛ばす技術な。高圧洗浄機よりも洗浄力がある水ができる技術だという。

環境機器メーカーオーラテックの社長、江口さんは福岡・柳川市出身。有明高専で建築設計を学び、1986年に起業した。

「最初は公共事業の設計をしていました。役所仕事です。だから泡を作ることや化粧品を作る技術は全部、我流です」と話す。

元々は公共事業の設計を請け負う会社だったオーラテック。転機となったのが1994年。仕事先で河川の水質悪化に悩む住民の声を聞いたことが発端だった。
きっかけは恩師の言葉
「そういえば、昔は川で泳いでいたなぁ…。今は泳げないもんな…。何かできないかと思い、母校(有明高専)に寄ったんです。その帰りに」と当時を振り返る江口さん。

有明高専の恩師に水をきれいにできる技術について尋ねてみると「マイクロバブル技術が面白いよ。水の中に微細な泡を入れたら水がきれいになる」と言われたという。「ホントかいな」と思った江口さん。スタートは、そこからだった。

早速、江口さんは、河川の水質改善を目標に微細な泡を作り出すマイクロバブル技術の研究を始める。開発の肝となったのは、微細な泡を作り出すノズル。試作は数百パターンに及んだ。

性格的に突き詰めることが好きだった江口さん。次第にマイクロバブル技術の開発に没頭していくようになる。

本業だった設計の仕事も辞め、社員は女性、1人だけが残ったという。「分からないやめられなかった…。やらないと気が済まない」と江口さんは笑う。
濁っていた池の水が透明に
結局、開発にかかった期間は3年。水流の圧力でノズル内に空気を取り込み、微細な泡を無数に作り出す機器が完成。効果を確かめようと、福岡県内の池の底に泡発生機器を置き3カ月間、見守った。

「最初は池の中にどれだけコイがいるかわからない池だったのに、数えられるようになった。水がきれいになった。山に行くと小川の水はきれいでしょ。なぜ、きれいかというと流れがあって、流れの中で空気(泡)を取り込んで、空気を取り込むということは、水の中の汚れを分解してくれる微生物が元気になる」(江口社長)

池に泡で包んだ酸素を送り込むことで微生物の動きが盛んになり、汚れの原因となる有機物の分解が進んだのだ。
創業の地で『ふるさと納税』の商品に
2006年に泡の発生技術の特許を取得。各地の池や河川の浄化に取り組んだ。その後、微細な泡を作り出す技術は新たな製品を生み出すことになる。きっかけは動物病院からの「皮膚の弱い犬はシャンプーするだけでも皮膚が荒れるので、シャンプーを使わずに泡だけできれいにならないか」という相談だった。

江口さんは、微細な泡を生む技術を応用したシャワーヘッドを試作。「空気を取り込んで小さい泡にして出すんです。シャワーの水の中に小さい泡が入ると洗浄力が増すんです」。動物病院では好評を博した。微細な泡は、肌に優しく汚れ落ちも良いことが分かり、続いて一般家庭でも使用できるシャワーヘッドを開発した。

その後、シャワーヘッドの高い美肌効果や手軽さが評価され、美容室などでも販売される話題の商品になったというのだ。

更に創業の地だった久留米市では『ふるさと納税』の返礼品にも採用された。

泡のチカラでさまざまな課題を解決してきた江口さん。その成功の秘訣を尋ねると「諦めが悪いんです。とことんやるんです。まだ満足していないけど」と笑った。
“世界を変える革命”的商品を開発中
江口さんはいま、新たな洗浄機器を開発中だ。それは、空気を使って数ミクロンの水滴を高速で飛ばすというこれまでにない製品。使用目的は半導体の洗浄。

実は、大規模な半導体工場では洗浄だけで1日に数万トンの水が試用されている。今、開発している技術が応用できれば水の使用量を10分の1にすることができる“超節水機器”だということで、完成すれば「世界を変える革命」になるとも言われている。

泡で社会を変えつつある江口さんだが、原点は「昔のように子どもが泳げる川を残したい」という思い。泡で世界を変える取り組み。泡のチカラを使った江口さんの挑戦はまだまだ続く。
(テレビ西日本)
