愛媛で60年ぶりの全国植樹祭 4万7千人が歓迎
「ピースに会うのが夢でした」
皇后さまがそう語るほど、心待ちにしていたとべ動物園訪問や60年ぶりの全国植樹祭へのご出席。
天皇皇后両陛下は2日間にわたり愛媛を訪問し、県内各地で熱い歓迎の輪が広がった。
即位後初めての愛媛訪問 27年ぶりのお二人そろっての来県
16日の愛媛県・松山空港。天皇皇后両陛下は特別機で松山空港に到着され、中村知事らの出迎えを受けた。
愛媛への訪問は即位後初めてで、お二人揃っての訪問はしまなみ海道の開通式典以来、実に27年ぶり。
両陛下を一目見ようと、空港や沿道には大勢の人たちが集まり、お姿が見えると一斉に歓声が上がった。
今治市から:
(Q.見られましたか)
「はい。真正面でしたわたくしは。初めてお目にかかるんですけどもう感激です」
松山市から:
「すごかった。めっちゃきれいやった。9時半くらいから来て(3時間半ほど)ずっと(待っていた)待ったかいあった」

「昔カクレクマノミを飼っていたんだよ」自身のエピソードも
両陛下はまず大洲市の県立長浜高校水族館を訪問された。
高校の部活動として全国で唯一となる「水族館部」が運営する長高水族館。
毎月第3土曜日に行われる一般公開は、生徒たちによる丁寧な解説で人気だ。
海の生き物を中心とした研究も、全国レベルの表彰を数多く受けている。
生徒たちはカクレクマノミが身を守る生態など、研究の成果を両陛下に報告した。
長浜高校水族館部の説明:
「カクレクマノミの体表粘液中には、高濃度のマグネシウムイオンが含まれていることがわかりました」
天皇陛下:
「クマノミ以外はないわけですか?そういうマグネシウムは?」
生徒たちの説明を熱心に聞いた陛下は、カクレクマノミにまつわる自身のエピソードを明かされた。
県立長浜高等学校3年・中村幸乃さん:
「天皇陛下の方から昔、カクレクマノミを実は飼っていたんだよという話をいただきまして、そうなんだというふうにすごい驚いたのと、すごく丁寧に相槌をしてくださって自分も答えやすかったですし、こういう風に話させていただける機会が、すごい貴重なものだなと感じました」

西日本豪雨の被災者と懇談「温かいお言葉をいただいた」
続いて、両陛下は2018年の西日本豪雨で被災した大洲市の状況について、説明を受けられた。
天皇陛下:
「(市長に向けて)大変な災害でしたね」
肱川の氾濫や土砂災害により大洲市では災害関連死を含め5人が亡くなり、住宅など約4000棟が浸水、倒壊するなどの被害が発生した。
養老酒造・山内倫太郎さん:
「その地域だから造れるお酒というものを目指して、全身全霊で造っていけたら」
大洲市唯一の酒蔵、「養老酒造」の山内倫太郎さん。肱川の氾濫で設備のほとんどが破壊された実家の酒蔵を継ぎ、酒造りにまい進する。
山内さんら3人の被災者と懇談した両陛下は、「大変でいらっしゃいましたね」「これからもおいしいお酒を作ってくださいね」などと声をかけられた。
養老酒造・山内倫太郎さん:
「温かい気持ちになりました。すごく真剣に話を聞いてくださって、質問も具体的にいただいて、温かいお言葉までいただいて、本当にこのような機会いただけて良かったなという風に思います」
大洲市・二宮隆久市長:
「両陛下からはやはり被災地、被災者を思いやる御心に触れたといいますか、優しいお心に触れて感銘を覚えました。大洲の風景をご覧いただいて、きれいな川、そしてきれいな景色ですねというお言葉をいただいて、私としては大変うれしく思っております」

800人が提灯で出迎え 道後公園に「万歳」の声響く
このあと、松山市内に移動された両陛下のお姿を一目見ようと、沿道には大勢の人たちが集まった。
福島県警から応援の警察官(街頭):
「こちら天皇さまに見てほしい気持ちが大きすぎて、頭の上で(旗を)振ってしまう方がいらっしゃいます。そうすると後ろの列の方が見えなくなってしまいますので、胸の前で小さく振っていただければと思います。」
全国から警備の応援に駆け付けた警察官たちが沿道で待つ人たちに声をかけ、陛下の車列が通り過ぎると現場は大きく沸いた。
この日、お二人が宿泊した旅館近くの道後公園には、有志ら約800人が集まり、提灯を使って陛下を歓迎する『提灯奉迎』が行われた。
公園に来た人たち:
「天皇陛下万歳~万歳万歳~万歳」
公園を埋め尽くした人たちに、両陛下も旅館の窓から提灯で応えられた。
西予市野村町から:
「うれしくってもう涙が出ます。おかげさまでありがとうございました」
松山市から:
「提灯を一緒に振っていただいてすごく感動しました。いつもより身近に感じることができました」

とべ動物園で念願の対面
そして、17日。両陛下は午前中県立とべ動物園を訪問された。
お二人が楽しみにされていた“園のアイドル”ホッキョクグマのピースと対面だ。
皇后さま:
「耳が小さい」
髙市敦広キーパー:
「寒いところにいますと、突起物が小さくなりますので」
ピースは育児放棄した母親に代わり、髙市キーパーが毎日自宅に連れ帰って育て、国内で初めて人工哺育に成功した26歳のホッキョクグマだ。
皇后さま:
「リンゴ好きなんですね」
皇后さまは「ピースに会うのが夢でした」と話し、好物のリンゴを食べる姿を笑顔で見つめていた。
また持病のてんかんなどピースの体調について質問し、髙市キーパーの長年の支えに対し、「幼いころからかわいがられて(ピースは)幸せな子ですね」と労われた。
髙市キーパー:
「(皇后さまが)いい話を聞けて良かったですって、ハンカチを出して目をぬぐっていらっしゃいましたので、なんかこちらが泣きそうになりました。ピースを元気な状態で、いつまでもお世話できるようにまた頑張らないと、と思いました」

オランウータン「ジェニファー」ともご対面
また、種の保存を目的にインドネシアから来日し、6月に「結婚式」を控えたメスのオランウータン「ジェニファー」も見学された。
ジェニファーのお相手、オスの「ハヤト」との相性についても熱心に質問された。
皇后さまはその後も「ジェニファーちゃん」「かわいい」などと、何度も声をかけながら手を振られていた。

60年ぶりの全国植樹祭 草彅剛さんらが式典を彩る
そして午後、両陛下は県総合運動公園に移動し、行幸啓のメイン行事『全国植樹祭』に出席された。
森を守り育てる大切さを広く伝える『全国植樹祭』。愛媛での開催は実に60年ぶりで、陛下はライトグリーンのネクタイ、皇后さまもライトグリーンの装いで臨まれた。
新居浜市出身で、俳優や歌手として活躍する石丸幹二さんが、力強く澄んだ歌声で国歌を独唱。
続いて約5000人の参加者を前に、陛下がおことばを述べられた。
天皇陛下:
「愛媛県は西日本最高峰の石鎚山を始めとする緑深き四国山地がそびえ、北には多くの島々の連なる景観が印象的な瀬戸内海、西には美しいリアス海岸の宇和海など、多彩で豊かな自然環境に恵まれています。このようなすばらしい自然が、多くの人々のたゆみない努力により守り育てられてきたことを喜ばしく思います」

草彅剛さんらが式典を彩る
式では緑化活動に取り組む子供たちから鈴木農林水産大臣らに苗木が贈られ、記念植樹が行われた。
両陛下はクワを持ち、愛媛の林業を支える無花粉のスギやヒノキなどの苗木を植えられた。
また、開催地・愛媛や松山ゆかりのクロマツや、ヤブツバキなどの種をまかれた。
そして、メインアトラクション。元SMAPのメンバーで、タレントの草彅剛さんがストーリーテラーを務めた。
大会テーマソングの演奏にあわせ、地元の高校生たちが書道パフォーマンスを披露した。大きな紙いっぱいに、力強いメッセージを書き上げた。

「本当に生命のエネルギーを感じる場所なので」
ストーリーテラーを務めた草彅剛さん:
「愛媛は魅力あふれるところが多いし、おいしいものも多いし、ここでしか作られないものとかもあって、本当に生命のエネルギーを感じる場所なので、やっぱり自然とか直に自分が触れるというのが大事だなと思わせてくれますね、もう本当、第2の故郷ですね」
またお手植えを陛下のそばで手伝うなど、大役を務めた子供たちは。
天皇陛下のお手植え介添え
大洲東中学校・緑の少年団・山口心結さん:
「とても緊張したんですけど、天皇陛下がお優しくて、練習通りスムーズにできました」
麻生小緑の少年団・武智奏斗さん:
「(苗木が)もっと大きくなって森みたいに大きくなるとうれしいです」

砥部焼・菊間瓦の伝統工芸も視察
式典のあと、両陛下は最後の視察先となる砥部町の窯業技術センターを訪問された。
ここでは砥部焼と菊間瓦の伝統工芸士から、それぞれの焼き物の特徴や後継者の育成について説明を受けられた。
天皇陛下:
「薄いですね」
陛下が手に取られたのは、砥部焼の伝統工芸士白潟八洲彦さん(86)の作品。白潟さんは砥部の土を生かした白磁にあわせ、薄づくりにこだわっている。
天皇陛下:
「(薄いのは)やっぱり砥部焼独自ですか」
八瑞窯・白潟八洲彦さん:
「薄くするのは昔から」
器の重さなどを実際に確かめながら、砥部焼の製法について熱心に質問されていた。

歓迎の声と笑顔が広がった2日間
2日間にわたる愛媛でのご公務を終えた両陛下は松山空港に到着。
集まった人たちに笑顔で手を振り、帰京された。
2日間、両陛下に同行した中村知事は。
愛媛県・中村時広知事:
「行く先々での県民の皆さんのお出迎えに、本当に感動したというのに近いおことばを(陛下から)いただきましたし、お二人そろってのご来県ということで、県民のみなさんが心待ちにしていたんだなということを、沿道でご一緒しながら感じました」
県によりますと、沿道などに集まった人たちは2日間で4万7117人にのぼった。
即位後初めての愛媛訪問。県内各地で歓迎の声と笑顔が広がった2日間となった。

