「私も今まで見た中で初めてのことなので、この人たちが本当に何を考えてこんなことやってるんだろうと思います」

数々の凶行事件を目にしてきた元・神奈川県警捜査一課長の鳴海達之氏ですら、驚きを隠せない、栃木強盗殺人事件。

指示役として逮捕されたのは20代の夫婦、そして実行犯はいずれも16歳の高校生4人という衝撃的な構図が、次々と明らかになっています。

■現場は「田園地帯で、通過交通があるような場所ではない」

現場は田園地帯に位置する住宅。

鳴海氏自身も現場を訪れており、「車も少ないし、歩く人も少ない。ただ、ここ(塀の前の道路)をちゃんと見ていれば、塀を乗り越えることはないと思う」と語りました。

地域では、以前から不審者情報が共有され、コミュニティが機能していたエリアでした。それでも犯行は起きました。

■夫は羽田空港 妻は生後7カ月の娘を連れてホテルでそれぞれ逮捕

強盗殺人の疑いで逮捕されたのは、夫・竹前海斗容疑者(28)と妻・竹前美結容疑者(25)。

夫は羽田空港の国際線ターミナルで逮捕されました。海外逃亡を図っていたとみられています。

妻は神奈川県内のビジネスホテルで身柄を確保された際、生後7カ月の娘を連れていました。

鳴海氏は「海斗容疑者は暴力団との関係や半グレとの交流があって、そっちに逃げれば大丈夫と思ったのかもしれないが、美結容疑者はどうするんだということをまったく考えていない」と指摘します。

■夫婦は指示役ではなくリクルーターか

逮捕された少年の一部は「夫婦に頼まれてやった」と供述しています。警察は夫婦の背後に、さらに上位の指示役がいるとみて捜査を続けています。

鳴海氏はこの構図をこう分析します。

【元・神奈川県警 鳴海達之氏】「この夫婦は指示役というよりはリクルーター的なもので、1人の高校生にその仲間を呼んでもらって集めた。集めた先で何をやるかを考えたのはこの夫婦ではなく、もう1つ上の者がこの夫婦に圧をかけてやらせたのかなという感じがします」

■逮捕の夫婦も“捨て駒”か

実行役4人は全員16歳。うち3人は神奈川県相模原市在住の男子高校生で、過去に同じ学校に通っていた同学年の人物もいれば、知人という関係もありました。

もう1人は川崎市在住の男子高校生で、逃走に使われた白い高級外車に乗ることができず、ヒッチハイクで近くの駅に向かったことも判明しています。

こうした構図は、“トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)の特徴そのものです。首謀者、指示役、実行役という階層があり、実行役は誰が首謀者かさえ知らされません。

犯罪ごとにメンバーが入れ替わるため、全容解明が非常に困難とされます。

鳴海氏は「実行役はもう捨て駒です。捕まっても、指示したほうも首謀者も『もういいんだ』と。『とにかく金目のものを取ってこい』ということだけ」と断言しました。

さらに今回の夫婦についても、「首謀者が指示役を守る、例えば弁護士をつけるといったことはあるが、この2人にはつかないんじゃないか。つまりこの2人も捨て駒なんだなという感じがします」と語ります。

■“トクリュウ”勧誘手法も変化 SNS一斉から”数珠つなぎ”へ

実行役の募集方法にも変化が見えています。

これまではSNSで一斉に募集し、見知らぬ者同士が集まる形でした。しかし最近は、1人にリクルーターが直接声をかけ、その知り合いを数珠つなぎに勧誘させる手口に変わってきているといいます。

■4月から続いていた不審情報 どこかで止められなかったか

事件の背景には、4月から続いていた不審な動きがあります。

4月上旬、被害者の次男(30代)宅で窃盗事件が発生し、被害者・富山英子さん宅の情報が記された資料が盗まれました。

その後、4月下旬から5月上旬にかけて、富山さんの家周辺で不審な車両やバイクが目撃され、親族が警察に連絡していました。

5月7日には、その不審車両に乗っていた男(41)が逮捕されています。

鳴海氏は「通報に基づいて車両やバイクを探し、乗っている人物を特定して職務質問する。県外から来ているとなれば、それはマークをしなければいけないし、ナンバーを控えて警察署内でも情報を共有すべきだし、パトロールの参考にもしなければいけない」と語り、警察の対応の重要性を強調しました。

■上位者を特定しないと壊滅につながらない

鳴海氏は今後の捜査について、明確な方針を示しました。

【元・神奈川県警 鳴海達之氏】「逮捕された指示役の2人をよく取り調べて上位者を特定して、その上位者も逮捕しないとこの組織は壊滅できません。とにかく上位、上位、上に上にって伸びていかないと、本当に壊滅につながらないので、そこらへんの解析や取り調べをしっかりやってもらいたい」

16歳の高校生4人が”捨て駒”として使われ、命を奪う犯行に加わった。その構造の頂点にいる首謀者の特定こそが、今後の捜査の最大の焦点となっています。

(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年5月18日放送)

関西テレビ
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