SNSなどを通して副業を紹介され、詐欺に遭う被害が急増している。福井テレビが被害を受けた県内在住の女性を取材すると、人の心理に巧みに付け込む悪質な犯行の実態が見えてきた。

「不審ならすぐに辞めよう」と始めるも…

「孫の習い事で多額の費用がかかるし、娘がアルバイトを掛け持ちしているので…私も少しでも助けになりたかった」
    
こう話すのは、福井県内に住むAさん。家族を助けようと始めた副業をきっかけに詐欺被害に遭った。

SNSの副業広告から誘導された
SNSの副業広告から誘導された
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きっかけは“副業で収入アップ”などとうたうポイ活アプリの動画広告だった。
    
Aさんが広告のリンクをタップするとLINEに誘導され、副業を紹介された。

1回数百円の報酬を受け取る内容
1回数百円の報酬を受け取る内容

内容は、指定された動画を見て「いいね」ボタンを押し、そのスクリーンショットをLINEで送るというもの。報酬は1回につき電子マネー数百円分だった。
      
「少しでも不審な点があれば、すぐにでも辞めようという気持ちで始めました」
    
犯人を疑う気持ちがある一方で、報酬は全額が振り込まれた。

金を振り込めば報酬を上乗せ…と新たな“業務”

何度か作業をして報酬を受け取るうちに、Aさんは「Qeylor」というチャットアプリに誘導され、新たな副業を紹介された。
     
指示された金額を振り込めば報酬が上乗せされて戻ってくるというもの。これは、新たに起業する人が融資を受けやすくなるよう、金のやり取りの履歴を増やして信用度を高めるための業務だと説明された。

副業詐欺の手口
副業詐欺の手口

試しに、これまでの副業で貯めた5005円分の電子マネーを振り込むと、6505円分が返ってきた。
 
そして、Aさんはついに多額の現金を振り込むようになる。
   
「以前まできちんと報酬が支払われていたため、信じてしまった 」
  
30万円が39万円に、50万円が70万円に…Aさんはこの副業を県外に住む娘に紹介した。
 
ところが―
  
「それ詐欺だから辞めなさいって言われました」

だんだんと報酬が増え「信じてしまった」
だんだんと報酬が増え「信じてしまった」

娘に詐欺を指摘されるも「冷静さを失ってしまった」

さらに、娘から詐欺の手口が書かれたホームページを見せられたものの―
    
「手口が全く同じであるにもかかわらず、他の人たちは失敗したが自分は失敗しないという、不思議な感覚に陥ってしまいました」
   
この時点では利益を得ていたAさん。娘の忠告を聞き入れられなかった。
   
「常に私が家族を支える立場だったため、娘に指摘されたことでかえって『そんなはずはない』と思ってしまいました。いつもよりも冷静さを失ってしまった」

娘に詐欺の手口を見せられるも…「自分は大丈夫」と信じ込む
娘に詐欺の手口を見せられるも…「自分は大丈夫」と信じ込む

冷静さを失ったAさんに、やがて悲劇が訪れる。
   
ある日、業務の参加者が多数いるとして、Aさんはチャットグループに誘導された。他の参加者とともに業務を進め、指示通り50万円を振り込んだところ、犯人は突然「今回の業務は合計2回戦」と言い出し、さらに156万円の振り込みを求めてきた。

50万円の次は156万円の振り込みを求められる
50万円の次は156万円の振り込みを求められる

すでに振り込んだ50万円を取り返そうと、Aさんは156万円をどうにか集める。
     
「命まで取られたわけではないから大丈夫だ、と自分で自分に言い聞かせていました。当時の自分が本当にどうだったのか…平常心ではなかったです」
    
これで金が戻ってくると思いきや…犯人はAさんが「制限時間内に振り込み手続きを終えられなかったため、グループ全員の金が戻ってこなくなった」とAさんを責め、さらに206万円の振り込みを求めてきたのだ。

実際にAさんに送られたメッセージ
実際にAさんに送られたメッセージ

他の人が報酬を受け取れないのは…と責任を感じ消費者金融に連絡

焦ったAさんは、金を借りようと消費者金融に連絡してしまう。
   
「自分が振り込めなかったことで皆さんが報酬を受け取れなくなるのが申し訳なく、責任感から行動してしまいました」
   
しかし、その日のうちに融資は受けられなかった。

他の参加者に「迷惑をかけられない」と思わせる手口
他の参加者に「迷惑をかけられない」と思わせる手口

一晩たち、冷静になったAさんは、これは詐欺だと気づき始める。
    
「時間が経つにつれて、自分がおかしかったと、なぜ気づかなかったのかと次第に思うようになりました」
  
その後、Aさん自ら警察に相談したが、犯人に振り込んだ286万円と5005円分の電子マネーは返ってきていない。
   
県警生活安全部・真杉順子管理官は「副業広告を見るときには、募集主の住所や氏名、連絡先、業務内容や賃金が表示されているか確認して、正規の広告かどうかの判断基準にしてほしい」と呼びかける。

警察に相談も被害金は返らず
警察に相談も被害金は返らず

今回の詐欺事件の流れを振り返ります。
 
ポイントを集める「ポイ活」アプリで流れた副業広告⇒動画のスクリーンショットを送り少額の報酬をもらえる業務を紹介される⇒金を振り込むと多額の報酬が返ってくる業務へと誘導される。
 
最初は報酬がもらえるため、被害者は犯人を信用し、さらに多額の報酬を得ようと振り込む金額も増えるが、やがて犯人は「時間内に業務を終えなかった」などと理由をつけて多額の金を求める。
 
このとき「金を払わなければグループ全体に迷惑がかかる」などと脅し、被害者に罪悪感を持たせて金の振り込みを促すのだ。
 
人間の心理を巧みに利用した悪質な手口。「簡単に儲かる」といった話は詐欺を疑い、求人広告に募集主の住所や氏名、連絡先、業務内容や賃金が表示されていない副業には注意が必要だ。

福井テレビ
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