新学期が始まって1カ月半です。
子供たちも保育園や学校に慣れ始めたころかもしれません。
保育園や幼稚園の子供たちが楽しみにしている、お散歩の時間。
その裏には、スタッフの見えない努力があります。
走って、走って、走りまくる!新人保育士の奮闘を取材しました。
しっかりと手を上げて横断歩道を渡っている散歩中の保育園児たち。
この日の散歩コースは車通りが多く、狭い道路。
保育士が、安全確認を行いながら歩いていきます。
そんな中ひときわ目立っていたのが…、走って、走って、走りまくる新人保育士。
なぜ、こんなにも走り回っているのでしょうか。
そこには子供たちの命を守るための重要な使命がありました。
東京・目黒区にある、上目黒どろんこ保育園。
3歳から5歳の子供たちがお散歩に出発。
すると、保育園を出て100メートルほど進んだところで思わぬハプニングが発生。
前日まではなかった工事が行われていたのです。
警備員と話し、人の通行は問題ないことを確認。
狭い道を慎重に歩き、通り抜けていきます。
この時、列の先頭に立って子供たちを誘導していたのは青色のビブスを着た保育士。
2026年4月に入社したばかりのしのださん(22)です。
横断歩道の真ん中に立ち手を上げて車を止めます。
全員が渡り終わるとドライバーに一礼。走って先頭へ戻ります。
そのあとも、横断する子供たちを見守っては走り、また走り…。
新人保育士・しのださん:
(Q.すごく走り回っている)先回りしないといけないので。
しのださんの、この日の役割は人数確認リーダー。
子供たちが全員いるか常に人数を数えます。
列の先頭に戻りながら人数を数え、駐車しようと動いている車を見つけると、さっと壁になるなど臨機応変に動きます。
ところが…。
上目黒どろんこ保育園・松久保陽子施設長:
できるだけ横断歩道・道路を渡る前は、固まって短時間で渡った方がいい。
横断時間が長いと事故のリスクが高くなると施設長から指導を受けました。
そして、出発から約45分。
目的地の公園へ到着しました。
新人保育士・しのださん:
危険なところも小走りしてくれたのでよかったです。
子供たちが遊んでいる間も離れたところで人数確認を徹底。
全員無事に帰ってくることができました。
初めての散歩コースを終えたしのださんは「(Q.きょうは何点?)もうちょっと動けたかなという部分もあります」と
自己採点は、やや厳しめですが施設長からは…。
上目黒どろんこ保育園・松久保陽子施設長:
完璧でした。新卒でも「(子どもが)そっちに行ったので見てください」と先輩に言えるようになったので、チームで見られているかなと。
安全な散歩のために保育士の行動ルールを細かく決めている理由について、松久保施設長は「私たちが交通ルールを守っていても突然、車が間違って突っ込んでくる大津市の事故なんかもある。まず命を守ることを最優先しています」と話しました。
2019年、滋賀・大津市では散歩中の保育園児らの列に車が突っ込み、園児2人が死亡。
14人がけがをするという痛ましい事故がありました。
このような予期せぬ事故を防ぐため、リスク管理を徹底しているのです。
上目黒どろんこ保育園・松久保陽子施設長:
4月に入園してきた子どもたちが、どんな行動をするのかが予測しきれない時期は大変(事故の)リスクが高い。
施設長によりますと、子供や保育士の入れ替わりが多い今の4月から5月にかけては、1年の中でも特に散歩中の事故や見失いのリスクが高くなるといいます。
そこで、散歩の5日前にはあることが行われていました。
子供たちが昼寝をしている間に何人かの保育士が出かけます。
上目黒どろんこ保育園・松久保陽子施設長:
必ず下見をしてハザードマップを作って、それから(散歩に)行くようにしている。
新しい散歩コースに行く前には、実際に歩いて危険が潜んでいないか確認。
十字路では渡る順路まで細かく設定し、ハザードマップを作成しているのです。
この保育園では、これまでに下見を行って散歩コースから除外した危険な場所がいくつかありました。
まず1つが駅前の大きな横断歩道です。
松久保施設長は「私たちこっちから渡りたいのに、向こうからダーッと(人が)来ると見失いのリスクが非常に高い」と説明します。
さらに、「自転車と電動キックボード、あと、車の横切りがすごく多い」という交差点。
続けてバイクが曲がってきたり、歩行者の目の前に車が飛び出してくる場面も。
交通量が多く、子供たちを歩かせるには危ないことが分かります。
散歩中の事故を防ぐ対策は他にも。
この日、子供たちが帰ったあとの夜7時ごろ。
走り回って遊んでいるのは全員大人、保育士です。
よく見ると、「子ども」や「保育リーダー」といったプレートを身に付けています。
上目黒どろんこ保育園・松久保陽子施設長:
公園を保育施設内に作って、そのリスクを想定したロールプレーイング研修をしています。
園内を散歩コースや公園に見立て子供役と保育士役に分かれて実際に動き、危険な場所でどのように対応するべきかを確認していたのです。
約1時間に及ぶ研修が終了。
初めて研修に参加した新人の、しのださんは…。
新人保育士・しのださん:
こういうのがあると自分の動きにも自信が出てくるので、毎日の保育に生かせると思う。
日々、さまざまな対策を行っている保育園。
事故を防ぐために一番、大切なことについて、松久保施設長は「職員間のコミュニケーション・人間関係がリスクマネジメントに大きな影響がある。人の命を預かるって相当責任が重い仕事ではあるが、それに負けないやりがいがあるので、子どもたちの成長のためにできることはこれからもしたい」と話しました。