特集は親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる、慈恵病院の『こうのとりのゆりかご』いわゆる赤ちゃんポストです。5月開設から19年を迎えました。今回は新しくなった『ゆりかご』、そしてこの19年間、病院の相談員が助けを求める女性たちにどう向き合ってきたのかに迫ります。
【5月8日・尾谷いずみリポート】
「この門をくぐった先に『こうのとりのゆりかご』はあります。入ると細長い通路があります。進んでいくと通路の壁にこれまでにはなかった絵が描かれています。赤ちゃん、そしてコウノトリが描かれています。通路をさらに進むと『こうのとりのゆりかご』があります」
『ゆりかご』は今年デザインが新しくなりました。
【5月・蓮田健理事長】
「アプローチを温かい雰囲気にできないか、お世話になっているデザイナーさんに相談した」
扉には四つ葉のクローバーを背景に赤ちゃんとコウノトリがこれまでより大きく描かれています。
そして今回新たに制作されたのが『ゆりかご』につながる通路の壁画です。
描いたのは熊本市でデザイン会社を営む寺本 圭吾さんとそのスタッフのメンバー。
【3月・ライズデザイン 寺本 圭吾社長】
「ここまで来る人は不安な気持ちで赤ちゃんを連れてくると思う。私たちには想像できない心境だと思う」
寺本さんたちは、赤ちゃんがコウノトリに託され幸せな場所に運ばれるというストーリーを表現しました。
【話・寺本圭吾社長】
「ここを訪れた人がこの絵を見てちょっとほっとするというかここに預けることによって『この子は幸せになるかもしれない』というようなものを直感的に感じていただけたらいいなと思って」
赤ちゃんの遺棄や殺人を防ぎたいと2007年5月10日に開設された慈恵病院の『こうのとりのゆりかご』、2024年度までに合わせて193人が預け入れられています。
【5月・慈恵病院 新生児相談室 蓮田真琴室長】
「(赤ちゃんを預け入れた女性には)看護師が声をかけて相談室に入っていただくのですが私が到着したときには皆さん泣いています。『責められるんじゃないか』
という気持ちが強いんだろうなと」
赤ちゃんを預け入れる女性の多くが親からの虐待や過干渉、貧困などに苦しみ、
孤立した状態で出産して『ゆりかご』に辿り着きます。
【5月 蓮田真琴室長】
「『よく来てくれましたね、大変だったでしょう』という風に声をかけていきます」
女性の心の奥底にある思いに向き合っているのが蓮田 真琴室長をはじめとする慈恵病院の相談員たちです。
現在、常勤と在宅勤務を合わせ13人で24時間365日、相談に応じています。
相談員たちは『ゆりかご』に預け入れに来た女性へ匿名性を守ったうえで声をかけ
赤ちゃんへの思いなど直接話を聞いています。
【5月 蓮田真琴室長】
「お母さんは子どもを置いていくことをすごく申し訳ないと思っているし病院に着いた後に(赤ちゃんが)どんな風に過ごしているのかなとかすごく心配しているので、
育てられないけれど、赤ちゃんを殺めず連れてきてくれたというのは赤ちゃんへの愛情だと思っているので『お母さんが写真がほしいと言っていた』など全部記録として残して、いつか大きくなった子どもたちが(出自を知りたいと病院に)来たときに
それを伝えることができたらと思っていて今はそういうやり方に変えています」
去年、東京・賛育会病院が赤ちゃんポストなどの取り組みをスタート。
そして今年度には大阪・泉佐野市が自治体主導で事業を始める方針です。
【慈恵病院の相談記録】
「助けてください」
妊娠に悩む女性からの訴えです。相談員が呼びかけを続けても女性からの返答が途絶えることも少なくないといいます。
【5月 慈恵病院 蓮田真琴室長】
Q新たに『ゆりかご』などに取り組む自治体や施設にどんなことを伝えたいですか?
「私たちの相談員は諦めないんです。既読がつかなかったりメールで返事が来なかったりしてもずっと送り続けてくれます。1回送って返事がなくても『心配してます』と声をかけ続けると『連絡が来てたから連絡しました』という人もいるので
『ここに来なくてもどこか(別の窓口)に行くんじゃないかな』とか思わずに
離れないでいてほしいなと思います」
この19年間に築かれた『諦めない姿勢』こそが赤ちゃんや女性たちを守る最後の砦となっているのかもしれません。