「いつでも来い、戦ってやる、みたいな感じがするから良くないと思う」
街の人が思わずそう口にしたロゴが、陸上自衛隊を揺るがした。銃を構える象、青い炎、そして胸元に刻まれた頭蓋骨。制作者は人間のデザイナーではなく、対話型生成AIの「ChatGPT」だった。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、公的機関や企業が生成AIを使用して、イラストなどをデザインして使用することの危険性を解説した。
■「象」「かっこいい」「青い炎」3つの単語が生んだ問題のロゴ
問題のロゴは、陸上自衛隊第1普通科連隊第4中隊のものだ。象は第4中隊のシンボルであり、隊員の士気向上を目的にロゴとして使われてきた。
共同通信によると、今回、そのデザインを刷新しようとした隊員が、ChatGPTに「象」「かっこいい」「青い炎」などの単語を入力して作成したのが、この新ロゴだったという。
隊員は中隊長・連隊長の了承を経て、先月29日に第1普通科連隊のSNS(X)へ投稿されると、すぐに「好戦的」「悪趣味」という批判が相次いだ。さらに、タイの「国境警備隊射撃クラブ」のエンブレムと酷似しているとの指摘も浮上。銃を構える象というモチーフがほぼ同じ構図で描かれており、SNS上では「丸パクリはあかんやろ」という声も上がった。陸上自衛隊は今月2日、Xで釈明するとともにロゴの使用中止を発表、投稿を削除した。
■「画像生成AIでロゴのような重要なものを作るのは、すごくリスクがある」
番組ではITジャーナリストの三上洋さんが問題の構造を解説した。「画像生成AIというのは、もともといろいろな画像を学習して、その学習から新しいものを作るというものです。つまり大元があるんですね」と三上さんは指摘。
「画像生成AIでロゴのような重要なものを作るのは、すごくリスクがあります。この2、3年、画像生成AIを使った企業が炎上するという事件がたくさん起きています」と続けた。
生成AIは膨大な既存画像を学習データとしているため、出力されるデザインが意図せず既存の著作物と類似してしまうリスクが構造的に内在している。今回の陸自ロゴと国境警備隊エンブレムの酷似は、まさにその典型的な事例といえる。
■「クリエイティブな作品を公にするのは絶対にやめたほうがいい」
元大阪市長で弁護士の橋下徹氏は、生成AIの著作権リスクについて警笛を鳴らす。
「クリエイティブな作品を今AIで作るというのは絶対今やっちゃいけません。著作権侵害のリスクがものすごく高い」と断言。「世界中のデータを集めて、クリエイティブな作品をAIで作りますから、何かしら似てきます。今の段階では、クリエイティブな作品をAIで作って自分で楽しむのはいいんですけども、公にするのはもう絶対、一般企業では絶対やりません」と語気を強めた。
著作権侵害の判断基準について橋下氏は「似ているかどうかだけ」と端的に説明する。人間がデザインする場合と比べ、AIは学習データから引き出す性質上、どうしても既存デザインとの類似リスクが高くなるという。
■アニメ風AI広告も炎上 化粧品メーカーのケース
生成AIをめぐる炎上は陸自ロゴだけではない。化粧品メーカー「ウテナ」は今月1日、生成AIで作成した「うるおい戦士モイスチャー」と名付けた変身ヒロイン風アニメのPR動画を公開した。しかしSNSでは「90年代の美少女戦士と勘違いした」「権利関係は大丈夫なのか」「どう見てもアウトだろう」といったコメントが相次ぎ、同日中に削除される事態となった。
ウテナは番組の取材に対し、「法的観点から慎重に検証を重ねてきましたが、既存の創作物の独自性や文化的背景に対する敬意を欠き反省している」とコメントした。
橋下氏はこのケースについても「AIが優秀すぎる。人間が何か似せて絵を描いてもそこまで著作権侵害になかなかならないが、AIはその雰囲気を言っただけでいろんなデータを読み込んでいるから、何かに触れてしまうリスクがものすごく高い」と指摘した。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年5月6日放送)