中東情勢緊迫化でエネルギーの代替調達が模索される中、ロシア産原油を積んだタンカーが日本に到着、受け入れ作業が始まった。

LNGとともに軽質油を生産

原油は、ロシア極東の資源開発プロジェクト「サハリン2」で生産され、石油元売り4位の太陽石油が調達したものだ。

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船舶情報サイト「マリントラフィック」が4月下旬にサハリン島南端のプリゴロドノエを出航したとしているタンカーは、4日愛媛県の沖合に到着した。5日正午ごろ接岸し、今治市の製油所への搬入作業が始まった。

「サハリン2」のLNG製造工場
「サハリン2」のLNG製造工場

「サハリン2」は、「サハリン1」に続くサハリン島北東部の大型天然ガス・石油開発事業で、2008年に出荷が始まった。ロシア国営ガスプロムが77.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資する。日本が輸入するLNG(液化天然ガス)は、サハリン2からの分が約9%を占め、JERAや東京ガスをはじめ、国内の電力・ガス会社が発電や都市ガス向けに調達を行っている。

ロシア産石油が禁輸される中、「サハリン1」からの輸入は停止されているが、LNGの重要な供給源である「サハリン2」については、日本側の求めに応じ、アメリカが制裁の例外として認める措置を6月18日まで延長している。

サハリン2では、天然ガス生産時に「コンデンセート」と呼ばれる原油の一種も随伴して採掘され、これをベースに「サハリンブレンド」と呼ばれる原油が輸出されている。主流の中東産とは異なる軽質油が特徴だ。サハリン島から原油の搬出ができなくなった場合、「サハリンブレンド」がサハリン島の原油タンクにたまり続け、満杯になって、LNG生産も止めざるを得なくなるおそれがあることから、「サハリンブレンド」の搬出はLNGの安定供給にも資することになる。

距離メリットと制裁リスクは

ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態にある中、原油のホルムズ依存度が93%に達する日本は、調達リスクが顕在化している。  

代替先が模索される中、サハリンは日本から地理的に近く、輸送日数も数日程度と短いという大きな利点がある。

オマーン船籍のタンカー「ボイジャー」
オマーン船籍のタンカー「ボイジャー」

一方で、関係者の視線が集まっているのは、制裁の例外措置が恒久的ではない点だ。アメリカが対ロ制裁を強化することで、延長されなくなる可能性が指摘されている。また、今回原油を運んだオマーン船籍のタンカー「ボイジャー」は、ロシア産原油を運ぶ「影の船団」180隻余りのうちの1隻として、2025年1月にアメリカが制裁対象に指定した船だ。サハリン2の原油の日本への輸入は2025年6月にも行われたとされるが、今回も、サハリン2事業に関連する輸送については継続でき、制裁リスクがないと判断された。

フィンランドのエネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)は、2026年3月の海上輸送によるロシアの原油輸出収入額は前月比で115%増えたとしている。海上輸送の48%が制裁下にある「影のタンカー」によって輸送されていて、制裁対象の船舶による輸送に対する視線は一段と厳しくなる可能性がある。

問われる調達多角化

サハリン2からの原油調達は、ホルムズ海峡封鎖のもとで日本が取り得る代替策の1つになる可能性がある一方、長期的には“ロシア産”に起因する欧米による制裁リスクを抱えることになる。距離の短さというメリットから、危機時の補完的選択肢としては有効だとしても、供給確保の柱の1つに据えるには不確実性が残る。

5月1日からは国家備蓄の第2弾放出も始まった。政府は、年明けまでの安定供給にメドがついたと説明しているが、備蓄を取り崩していくのが前提だ。中東依存のリスク低減に向け、原油調達先の多角化が引き続き問われることになる。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
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できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員