29日のニューヨーク外国為替市場で円相場が一時、1ドル=160円台に下落した。

3月30日以来、約1カ月ぶりの円安・ドル高水準だ。市場では、為替介入への警戒感が高まっている。

日銀会合後 円の下押し圧力

円相場では、日銀の金融政策決定会合後28日の植田総裁の会見以降、円の下押し圧力がかかっていた。 

会合では、政策金利が市場予想通り現行水準に据え置かれたが、9人の審議委員のうち、3人が利上げを提案して反対票を投じた。田村委員と高田委員はこれまでも利上げ支持の姿勢を示してきたが、今回は中川委員が加わった。

また、公表された経済・物価についての展望レポートでは、消費者物価指数の上昇率の見通しが大幅に引き上げられた。

中東情勢を背景とした原油価格上昇を主な要因として、2026年度の生鮮食品を除く指数は、前回1月時点の1.9%から2.8%へと0.9ポイント上向きに修正されたほか、2027年度も2.0%から2.3%に修正された。

3人の審議委員の利上げ見送りへの反対と、物価見通しの上振れが発表されたことにより、28日の円相場ではいったん円買いが優勢となって一時158円台をつけた。

タカ派とハト派が混在

しかし、その後の植田総裁の会見は、タカ派的とハト派的な発言が混在する内容になった。

ホルムズ海峡の封鎖が続く環境でも、物価の上振れリスクが高まったと判断されれば利上げに至ることがあり得るとした一方で、中東情勢は不透明さが続いているとして慎重姿勢もにじませ、「6月よりもう少し先のデータで物価上昇の圧力が現れてくる可能性が高い」とも発言した。

円相場は、植田総裁が利上げの時期について明確なシグナルを示さなかったとして円売りで反応し、会合結果発表後の円買い分は消失して159円台後半まで戻す展開となっていた。

封鎖長期化観測で160円台に

そして、中東情勢をめぐる不透明感の一層の高まりが円ドルを160円台まで押し下げる結果となった。

アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議が進まないなか、トランプ大統領がイランの港を出入りする船舶への封鎖措置について、長期的な対応に備えるよう側近に指示したと伝えられるなどしたことで、有事に強いとされるドルを買う動きが再び強まった。

原油の供給不足をめぐる懸念から、WTI先物価格は29日、一時1バレル=104ドル台まで上昇し、日本の貿易赤字が拡大するとの観測も円売りドル買いを加速させた。

一方、29日まで金融政策を決める会合を開いていたアメリカのFRB=連邦準備制度理事会は、利下げを見送り政策金利を据え置くと発表した。

中東情勢悪化に伴う物価上昇を踏まえた形で、パウエル議長は任期最後となる見通しの会見で、インフレは高止まりし、情勢の混迷が経済の不確実性をさらに高めているとする認識を示した。

一方、クリーブランド連銀のハマック総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ダラス連銀のローガン総裁の3人は金利据え置きを支持したものの、今回の声明に将来的な金融緩和を示唆するような文言を盛り込むことに反対した。

片山財務相「24時間対応」

ドルが支えられる環境が強まるなか、心理的節目となる160円を突破したことで、市場では為替介入への警戒感が高まっている。

2年前の同じ時期、2024年の4月末に円が160円まで下落した局面では、政府・日銀は、ゴールデンウィーク中に複数回の為替介入に踏み切った。

片山財務相は28日の閣議後会見で、「かねてから断固たる措置に言及している」として、為替介入は選択肢の一つになり得るとの考えを改めて示すとともに、「行動するときは行動する。24時間対応だ」と述べている。

取引参加者が減り、相場変動が大きくなりやすい大型連休期間に入るなか、円相場の動向と為替介入の可能性に視線が集まっている。

(執筆:フジテレビ解説副委員長 智田裕一) 

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員