ヒット作を連発し、小説講座などに引っ張りだこの岡山市出身の小説家・岡崎隼人さん(40)。長いスランプを乗り越えた今、岡崎さんの第2の小説家人生が始まっている。
◆ヒット作連発の小説家が惜しまず伝える「諦めずに作品を完成させる技術」
4月9日、岡山市北区の書店で開かれた小説講座。講師を務めるのは岡山市出身の小説家・岡崎隼人さん(40)。執筆のノウハウを学びに、15人の小説家の卵が参加した。
「第1段階でいっぱいアイデアを出す。第2段階では出したアイデアの中から良さそうな有望案を育てていく」
今回で9回目を数える講座。岡崎さんは自身の体験をもとに、「諦めずに作品を完成させる技術」を惜しまずに伝える。

◆「30点でもいいから一個作る」小説家の卵に対し”諦めない心”を伝える
岡崎さんは”小説家の卵”にこう伝える。
「全然私に才能がないと思ってやめがちだが100点を取ることはできない。30点でもいいと思ってほしい。30点でもいいから一個作るというのを自分に言い聞かせてあげてほしい」
岡崎さんの元で学ぶ参加者は「なかなか小説家で技術まで教えてくれる人はいないので、身近な存在のような感じがする」「夢物語ではなくて実際に活躍している人が目の前にいて、リアリティーがあってとても刺激になった。小説やエッセイを書いて出版したい」と話す。

◆発売直後から続々と重版決定 3月の最新作はなんと発売から5日で
岡崎さんは今、勢いに乗る小説家の一人。
2025年8月に出版したホラー小説『書店怪談』は書店員の間で話題を呼び、発売直後から重版が決定。3月には韓国でも発売されるほどの人気ぶりだ。
そして、3月18日に出版された最新作『ハンドレッドノート 名探偵 司波仁の事件簿』も発売から5日で重版が決定した。
「さっき担当の編集者から電話が来てもう一回重版が決まった。とてもうれしい。いっぱい刷ってくれるようで大重版と言ってもいい。とてもありがたい」
小説講座のさなかで、岡崎さんは喜びいっぱいの様子だった。

◆デビュー作が文学新人賞を受賞…人生を待ち受けたのは18年間にもわたる”深刻なスランプ”
次々にヒット作を出し、小説講座やワークショップなどに引っ張りだこの岡崎さん。しかし、小説家としての人生は決して平坦ではなかった。
岡崎さんのデビューは2006年、20歳の時。デビュー作の『少女は踊る暗い腹の中踊る』が文学新人賞の「メフィスト賞」を受賞し、一躍、脚光を浴びた。
順風満帆な小説家人生を歩むと思った矢先、行く手を阻んだのは深刻なスランプだった。
小説を書こうと思っても書き進めることができないジレンマが岡崎さんを苦しめた。一生懸命書こうとするが、満足のいくものができない・・・ボツにするというのを延々と繰り返した。
ついには「1行も書くことが難しい段階まで追い詰められてしまった」。
気付けば18年の月日が流れていた。

◆”諦めない心”の原点は…積み重ねたノートに現れる「あらゆる物語の構成分析」の繰り返し
それでも諦めずに小説と向き合った岡崎さん。スランプを打破すべく、行ったのは小説をはじめ映画などあらゆる物語の構成を分析することだった。ノートに物語のあらすじを決まった文字数でまとめるなどの作業をひたすら繰り返したという。
この努力が実り、岡崎さんはヒット作「書店怪談」を生み出した。

◆「人生の壁にぶつかっている人」には「過去を探る」ことを伝えたい
「過去の功績や過去の遺産に触れたり相談したり研究したりすること。要は大先輩の肩を借りる。今スランプに陥っている本人よりもその人が一生懸命やっている芸術や文化、クリエイティブそのものの歴史の方が長いので、過去を探ることが行き詰まりを解消することにつながるヒントを得やすいと思う」
スランプを乗り越えた今、岡崎さんはこの思いについて、小説だけでなく「人生の壁にぶつかっている人」にも伝わればという思いがある。

驚くべきペースで作品を生み出し、第2の小説家人生を駆け抜けている岡崎さんは「書く人を増やすことで小説という芸術の炎をちょっとでも大きくしていきたい。そのために自分が書けない時期に蓄えた知見や技術や物の考え方を皆さんに伝えている」
岡崎さんが人に伝えることを通じて思い描く未来は「読む人、書く人が増えて、小説を愛する人が増えること」だ。
(岡山放送)
