春先の住宅街に、なぜクマが現れたのか。富山県内でクマの出没が相次ぎ、30日、県はツキノワグマ出没警報を発令した。専門家は「元々の生息地外に出たクマは自分が逃げるべき方向を把握していない可能性がある」と指摘し、市街地でのクマとの遭遇に強い警戒を呼びかけている。

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「河川敷ルート」が現実に 海近くまで移動したクマ

今回クマが出没したのは、海に近い地域だった。クマの生態に詳しい立山カルデラ砂防博物館の白石俊明学芸員は、その移動経路についてこう分析する。

「上空から俯瞰した地図を見ると神通川がある。常願寺川やその他の河川を通じて一旦海岸に出たクマが南下してきたということも考えられる。平野で市街地であるとはいえ、やぶや屋敷林、畑などもあって、クマが身を隠しながら移動してしまうルートはあったのだろう」

川沿いの河川敷が、クマの"移動回廊"となっていた可能性が高い。新田知事もこの点を受け止め、30日の会見でこう述べた。

「今回、海の近いところで出没したということはやはり"河川敷ルート"が改めて現実に。河川敷の伐木についてできるだけ早期に実施できるよう検討していきたい」

知事は今後、河川の管理者など関係者と情報を共有した上で中長期的な対策を検討し、「1日でも早い実施に道筋をつけていきたい」と強調した。

春先の出没、過去にも事例 「十分ありうる」と専門家

春先に市街地でクマが出没するのは、今回が初めてではない。白石学芸員は過去の事例を挙げてこう話す。

高岡高校に現れたクマ(2021年5月)
高岡高校に現れたクマ(2021年5月)

「2021年の5月、高岡高校の敷地内に若いクマが進入し、駆除されたという事例もあった。オスの成獣やメスの成獣がエサを求めて市街地に出てきてしまうことも考えられる。過去の富山県内の出没状況を考えると十分ありうる」

エサを求めて行動範囲を広げる春のクマが、住宅街にまで踏み込んでくるリスクは、今後も続くと見るべきだ。

「気が動転したクマは人を襲う」 市街地出没の危険性

生息地の外に出たクマは、通常とは異なる行動をとりやすいという。白石学芸員はその理由をこう説明する。

「元々の生息地外に出たクマは自分が隠れるべき場所とか、逃げるべき方向を把握していない可能性がある。人と出会ってしまうと気が動転している、落ち着いていないクマは人を襲い、襲っている間に逃げ道を確保する可能性が高い」

つまり、山中でのクマとの遭遇とは異なるリスクがあるということだ。慣れない環境に置かれたクマは、パニック状態で人を攻撃する恐れが高く、より一層の注意が必要となる。

具体的な対策 帽子・リュック・防御姿勢

では、万が一の際にはどう対処すればよいのか。白石学芸員は具体的な備えをこう提案する。

「帽子やヘルメットを装着する。襲われたときに皮膚の露出を防ぐためのリュックやランドセルを背負う。どうしても逃げられないときは、決して重傷化しないように防御姿勢をとる心構えを。クマ問題を自分事として捉えてできる対策や装備を整えてほしい」

さらに、自宅の玄関を出るときにも注意が必要だと白石学芸員は付け加える。庭などにクマが潜んでいる可能性を考え、玄関のドアをすぐに開けず、まず物音を立ててから開けることが効果的だという。

県内各地で目撃情報 「クマっぷ」で確認を

資料
資料

29日夜の富山市での出没にとどまらず、30日は南砺市や上市町、小矢部市などでもクマの目撃・痕跡情報が報告されている。富山県が提供するウェブサービス「クマっぷ」では、こうした出没情報をリアルタイムで確認することができる。自分の住むエリアの情報をこまめにチェックする習慣を持ちたい。

県はツキノワグマ出没警報の発令に合わせ、不要な果物の木の伐採や生ごみの処分を徹底するなど、クマを寄せ付けない対策をとるよう県民に呼びかけている。

捕獲上限数の拡大も議論 春の捕獲は今年が初めて

県では、昨秋にクマの出没や人身被害が相次いだことを受け、個体数管理のための捕獲を先月末から開始している。高度な技術を伴う春の捕獲は今年が初めての試みで、ハンターの育成も兼ねて富山市有峰地区で来月まで実施される予定だ。今月28日までに10頭を捕獲しており、今後は他の地域にも取り組みを広げるべく検証が進められる。

30日に開かれた緊急の対策会議では、立山町の担当者が、年間160から170頭ほどに定められているクマの捕獲上限数をさらに拡大すべきと訴えた。県はこの要望に対し、今後検討する考えを示している。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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