今回のテーマは竹林の利活用です。
竹林面積が全国1位の鹿児島。
竹は生活用品への加工や食用のタケノコとして私達の生活に恩恵をもたらしてきましたが、手つかずの放置竹林が徐々に拡大していて、今後、課題となる可能性もあります。
鹿児島の竹林を巡る「今」を取材しました。
鹿児島市の仙巌園で風に揺れる孟宗竹。
中国が原産で江戸時代中期、当時の薩摩藩主・島津吉貴が中国風の庭園を造るために輸入したのが県内での始まりとされています。
その後、タケノコの需要を受けて食用として県内に広まっていったそうです。
タケノコ農家・山内龍也さん(67)
「出ました。これだけ元気のあるおいしそうなタケノコだったらいいと思う」
そのタケノコの県内有数の産地さつま町。
子供のころからタケノコづくりに関わってきた山内龍也さんの竹林は、良質なタケノコを育てるために適度に竹が間引かれています。
山内さん
「今の時期はウグイスが鳴いたり、気持ちのいいところですよ、竹山は」
食用として、さらにはその丈夫さから生活用品などにも加工され、私たちの生活に恩恵をもたらしてきた竹。
しかし、輸入品の増加などを受け竹の消費量は減少。
その結果、県内の竹林面積は2012年の1万6千ヘクタールから、2024年は2万ヘクタールに拡大しました。
国の最新の統計をみると鹿児島は竹林面積が日本一。
2位以下を大きく引き離しています。
竹林が広がり続ける中で問題視されているのが手つかずとなった放置竹林です。
森林計画学を専門とする鹿児島大学の寺岡教授は県内の状況をこう推測します。
鹿児島大学農学部・寺岡行雄教授(森林経営学)
「おそらく(竹林の)9割以上が放置されているのでそれぐらいになっている」
竹の生育が放置されれば、他の植物の生育を妨げることや土砂崩れなどのリスクにも繋がる可能性が指摘され、放置竹林の対策は大きな課題です。
寺岡教授は竹を厄介者ではなく、地域の資源として生かす必要性を指摘します。
寺岡教授
「(竹が)売り物になってそこで人が手間をかける分のコストがまかなえるようなものが大事。この(伐採した竹の)出口をしっかりと確保できれば、孟宗竹林を利用していくことに繋がっていくのでは」
そんな中、放置竹林の活用で全国から注目される自治体があります。
町内に377ヘクタール、東京ドーム約80個分の竹林がある、鹿児島県大崎町。
この日、東京から見学に来ていたのは慶應大学の学生たち。
大崎町・政策研究員 田中力さん
「ここも誰かが住んでいた所。土地利用していたものが竹林が広がって今はこの状態で誰も住めない」
学生たちに説明するのは大崎町の政策研究員、田中力さんです。
田中さんが取り組んでいる竹林対策、その答えがこの大きな釜の中にありました。
釜の蓋を外し、竹炭見せる学生
「おおおおー」
釜から出てきたのは竹を燃やして炭にした竹炭です。
学生からはこんな質問が。
慶應大学の学生
「障がい者と地域住民が一緒に作業をしているということだが、地域の繋がりにどう影響している?」
田中さん
「炭を作ることだけではなくて、自然と人が集まる場があることでそれぞれ目的は異なるけど満たされる。そういうメリット・特徴はあると思う」
自身も耳に障害がある田中さん。
竹林対策を障がい者の働く場につなげようと考えました。
「(窯の中にある竹炭の深さは)46cm」
「そんなにあるの?」
「けっこうたっぷりありますね、今日は」
近くの障がい者就労施設の利用者や地域住民が作った竹炭。
これをイモを栽培している町内の社会福祉法人に土壌改良材として販売し、収入を得る仕組みです。
就労施設利用者
「やっぱりうれしいよね。うれしさだけかな、一番は。みんなと会話もできるし」
「地域の方々とすごく仲良くなれるし、自分も地域の発展に役立っているという実感を持てる」
4年前から始まったこの事業。
大崎町の職員時代から関わってきた中野伸一町長も意義を感じています。
大崎町・中野伸一町長
「行政で言う社会的弱者と言われる方々が社会参加することで地域のためにもなるし、持続可能な取り組みになるのではないかと思う」
田中さん
「就労支援事業所、福祉、この方々の仕事になるとか、地域の人にとっては人が集まることで情報交換ができる、昔話ができる。そういう場づくりにつながる。全国どの地域でも展開が可能だと思っている」
これまでこの事業によって整備された竹林は、0.3ヘクタール。
大崎町全体の竹林面積に対してその成果はわずかですが、薩摩川内市でも同様の取り組みがスタートしたといいます。
恩恵をもたらす一方でリスクにもなり得る竹林。
冒頭で登場したさつま町のタケノコ農家の山内さんは集落の現状をこう話します。
山内さん
「みんな年をとっていくにつれて、竹山の手入れができないという人が多くなっている」
高齢化により今後も増える可能性がある放置竹林。
広がり続ける竹林を資源として活用するにはどうすべきか?
大崎町のモデルは今後、放置竹林対策の一つとして、広がっていくのかもしれません