体育館に足を踏み入れると、キュッ、キュッと床を鳴らすシューズの摩擦音と、ダムダムと力強くバウンドするボールの音が響き渡っていた。コートを駆け抜けるドリブル、相手の意表を突く巧みなフェイント、そしてリングに吸い込まれる正確なシュート。

彼女たちは、高知県内唯一となる60歳以上の女性バスケットボールチーム「エンジョイ」である。チームには現在7人が所属しており、なんとその平均年齢は70歳。競技歴が最も短い近藤明美さんでさえ23年というベテランであり、最年長の中島道子さんは60年、藤岡ちづ子さんに至っては62年という年月をバスケットボールとともに歩んできた。

年齢を重ねてもなお、若者に決して負けない情熱をコートに注ぎ続ける彼女たち
年齢を重ねてもなお、若者に決して負けない情熱をコートに注ぎ続ける彼女たち
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年齢を重ねてもなお、若者に決して負けない情熱をコートに注ぎ続ける彼女たち。そのあふれるバイタリティの源はどこにあるのか。バスケットボールの魅力と、いつまでも輝き続ける「元気の秘訣」に迫った。

半世紀を超える絆。苦しさの先にある最高の笑顔

チーム「エンジョイ」のルーツは、今から半世紀以上前にさかのぼる。もともとは「高校卒業後もバスケを続けたい」という思いから、小津高校出身のメンバーを中心に発足した。

毎週土曜日、高知市の三里中学校の体育館が彼女たちの練習場である。激しく体力を消耗する8分間の試合形式の練習を終えてコートから戻ってくるなり、メンバーからはこんな言葉が次々と飛び交う。

「長かったね」 「死ぬ死ぬ、ほんまに死ぬる」 「長すぎー」 

「死ぬ死ぬ、ほんまに死ぬる」
「死ぬ死ぬ、ほんまに死ぬる」

「しんどいです、日常生活でこんなことはない」とぼやきながらも、メンバーの顔からは汗とともに満面の笑みがこぼれている。「ただただしんどい」と口では言いつつも、「汗かいたら体が軽くなります」と充実感をにじませる。息を弾ませながら文句を言い合うその姿からは、心からバスケを楽しみ、仲間との時間を満喫する様子が伝わってくる。

走って、転んで、大声で笑う。それが「最高」

チームが持つ唯一無二の魅力について、69歳の稲田由佳子さんは次のように語る。

「楽しいですよ、この年になって走ったり転んだり寝そべったり大声で笑ったり、それが一番最高です」。大人になるにつれて忘れてしまいがちな無邪気な感情を、彼女たちはコートの上で爆発させている。同じく69歳の武市香織さんも「(練習に)来るときはきょうはしんどいからどうしようかなと思うけど、来てやったら気持ちがいい」と 頷いた。

武市さん「(練習に)来るときはきょうはしんどいからどうしようかなと思うけど…」
武市さん「(練習に)来るときはきょうはしんどいからどうしようかなと思うけど…」

チームのリーダーであり、責任者を務める市川佐知さん(69)にとって、エンジョイのメンバーは単なるチームメイトの枠を超えた「家族みたいな感じ」だという。「何でも言える感じのチーム。メンタルもすごい前向きになれる」と信頼を寄せる。

市川さん「何でも言える感じのチーム。メンタルもすごい前向きになれる」
市川さん「何でも言える感じのチーム。メンタルもすごい前向きになれる」

13歳でバスケと出会い、小津高校時代にはチームメイトの稲田さんとともにインターハイに出場した経験も持つ市川さん。出産などをきっかけに一時的に競技から離れた時期もあったが、足掛け56年もの間バスケを続けている。

市原さんは小津高校時代に稲田さんとともにインターハイに出場した経験も…
市原さんは小津高校時代に稲田さんとともにインターハイに出場した経験も…

「(バスケを続けて)良かったのはやっぱりいろんな年代の人と関われることもあるんですけど、体力的にどんどん落ちてくるじゃないですか。病気したりもするが、いつまでも元気で孫の面倒も見られるし、足腰もやっていると元気なのでそれが一番かな」

最年長76歳の中島道子さんにもバスケの魅力を尋ねると、「チーム5人でのフォーメーションがあるがですよ。それがピタッと決まった時がもう、サイコー!」と話してくれた。

バスケットボールの魅力を笑顔で語る中島さん
バスケットボールの魅力を笑顔で語る中島さん

「過去と比べるな」。背中で見せる楽しむことの大切さ

エンジョイの活動は、同世代でバスケットボールを楽しむだけにとどまらない。そのエネルギーは、若い世代にも確かな影響を与えている。

10代~50代の世代もエンジョイと交流
10代~50代の世代もエンジョイと交流

体育館では、10代から50代の若い世代も一緒に試合や練習を通じて交流している。50代の参加者はコートを駆ける先輩たちの姿を見つめ、「すごいと思います、ほんとに。私たちもあれくらいの年齢までやれたらと目標にして頑張っています」と尊敬の眼差しを向ける。

中には、現役の高校生の姿もあった。小学校からバスケを続けてきたものの、ケガを理由に一度は競技を諦めていた高知商業高校1年の橋田乃蒼さんだ。

「最初、あの人たちの年齢を知らなくて知ったときすごい驚きました。シュートもすごい入って、走れてすごかったです」

「エンジョイ」メンバーのプレーに驚く橋田さん
「エンジョイ」メンバーのプレーに驚く橋田さん

体育館で目の当たりにしたエンジョイのプレーは、橋田さんの心に再び火をつけた。諦めかけていたバスケが、以前よりも好きになっていたという。孫世代の若者にも、言葉ではなく「全力で楽しむ姿」という背中で、スポーツの本当の素晴らしさを伝えているのだ。

そんなエンジョイの最年長である中島さんには、ずっと大切にしてきた言葉がある。

「過去の自分と比べるな。今の自分に満足して、未来の自分に希望を持て」

中島さん「過去の自分と比べるな。今の自分に満足して、未来の自分に希望を持て」
中島さん「過去の自分と比べるな。今の自分に満足して、未来の自分に希望を持て」

いくつになってもバスケットボール!

チームのこれからの目標について、リーダーの市川さんは力強く前を向く。

「試合はなかなか難しくなる年齢かもわかりませんけど、練習はこれるならシュートしかできなくなっても来たい。みんなと一緒にバスケットをずっとしたい」

市川さん「みんなと一緒にバスケットをずっとしたい」
市川さん「みんなと一緒にバスケットをずっとしたい」

彼女たちは2024年までは60歳以上の全国大会にも出場し、試合はもちろん、遠征先での観光や温泉も満喫してきたという。現在は年齢や体力面を考慮して大会出場は見送っているが、大好きなバスケの魅力は、これからも確実に高知の若い世代へとパスされていくだろう。

高知さんさんテレビ
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