人口減少が続く地方都市で、地元自治体などが経営を支援し、“地域の足”を守ろうとする取組みだが、年々厳しさを増している。福岡県の旧産炭地を走る『平成筑豊鉄道』も膨らむ赤字に沿線自治体が“ポスト鉄道”へ向けた検討を進めている。
旧産炭地走る『平筑』利用者減少
1両編成のディーゼルカーが、美しい山なみを背景にガタゴトと走る。沿線には、四季折々の花が咲き、自然豊かな風景が広がる。

地域住民から“へいちく”の愛称で親しまれる平成筑豊鉄道は、JR九州が旧国鉄から継承した3つの赤字路線を、1989年、福岡県や沿線自治体が設立した会社が引き継いだ第3セクター方式の鉄道だ。

もともと旧産炭地の石炭輸送を担っていた路線で、遠賀川沿いの直方から筑豊炭田の中心地、田川を経て、かつての積出港に近い行橋へと至る。

運転本数や駅の新設をはじめとした積極的な利用促進策が功を奏し、1992年には年間の輸送人員が340万人を超えたが、マイカーへの移行や沿線人口の減少で、今では輸送人員がピーク時の3分の1にまで落ち込んでいる。

豪雨災害からの復旧や老朽化した設備の修繕費用もかさみ、このままいけば、毎年約10億円の赤字が出ることが予測されている。

経営支援に伴う沿線自治体の負担が増す中、地域の足となってきた鉄道をどうしていくのか。県や沿線自治体による法定協議会の判断が近く下される予定だ。

「朝の補習を受けられない生徒も」
平日の朝、『平筑』の駅は通学する高校生で賑わう。利用客の中で最も多い約4割は、学生達が占めている。
直方市にある県立鞍手高校では、100人以上の生徒が『平筑』で通学している。

バスなど他の交通手段に替わると、鉄道の強みである『定時性』や『速達性』が損なわれ、授業にも影響が出るのでは?と生徒のみならず、学校側からも不安の声があがっている。

「廃線になった際、生徒が始業時間に間に合わないとか、朝の補習がある場合、『自分は勉強したいけれど、交通手段がないので受けられない』という、ある意味、不公平さとかが出てくると、その子達には申し訳ないという気がします」と鞍手高校の田中憲育校長は危惧する。

学生の通学のみならず、人口の減少や高齢化が一段と進む中、マイカーなどの移動手段を持たない高齢者など、いわゆる交通弱者にとっても公共交通機関は不可欠な生命線だ。

地域の足をどのような形で維持していくのか。法定協議会では、『平筑』の今後について、3つの案が示された。

- 線路や施設を自治体が保有し鉄道会社が運行を担う『上下分離式』。
- 線路の跡にバス専用道を整備する『BRT=バス高速輸送システム』。
- 主に一般道を走行する『路線バス』。
赤字負担 沿線9自治体の判断は
沿線の自治体のうち行橋市は、負担額が少ないことなどを理由に『路線バス』を支持している。

というのも資産の結果、今後30年間の行橋市の負担額は、鉄道を維持する『上下分離式』では66億4000万円かかるのに対し、『路線バス』では、9億4000万円にまで抑えられると出たためだ。
「持続可能性という観点から、交通手段をどんな形であれ、しっかりと確保していく。その時に財政面も含めて最もつけを残さないという形が、『バス路線』であると判断したということです」と行橋市の工藤政宏市長は選択の理由を説明した。更に、『路線バス』の場合、学校や病院の近くに停留所を新設すれば利便性も高まる。

一方、『みやこ町』は、10年の期限付きではあるが、鉄道を維持する『上下分離式』を支持している。今後30年間の負担額は42億4000万円と多額だが、10年間であれば耐えられると判断し、その間に路面電車の導入など、より良い方策を見出そうという考え方だ。

このほか、福智町も学生の利用が特に多いことや住民アンケートで約6割が存続を望んだことから、『鉄道を残す案』を支持している。
7自治体が『バス転換』選択
沿線9自治体の判断をまとめると、『上下分離式』や『BRT』の支持は少数派で、過半数となる5つの自治体は、コスト負担の軽い『路線バス』を支持する結果となった。

法定協議会は、沿線自治体の代表を含む27人の委員の投票で、過半数を得た案を結論とする方針で、平成筑豊鉄道の今後は、最終的には多数決で決まることになる。

協議会の座長を務める県交通政策課の窪西駿介課長は、「全会一致の意見の案を作るというのは、現実的に極めて困難なのかなと考えているので、多数決による決定を1つの着地点として、しっかりそれを受け止め前を向いていくしかないと思っている」との見解を示す。

とはいえ、仮に路線バスへの転換が決まったとしても、課題は残る。現在、大手のバス会社でさえ、減便や路線の廃止を余儀なくされている中、必要とされる44人のバスの運転士を確保できるのか?同様のケースが佐賀県有田町から長崎県佐世保市を結ぶ第3セクター『松浦鉄道』でも起きていた。経営難で路線バスへの転換を図ったもののバスの運転士13人の確保が難しく断念している。果たして平成筑豊鉄道はどうなるのか?困難が予測される『平筑』のこれからについて、公募で社長に就任し、観光列車の運行をはじめ、利用促進による赤字削減と鉄道の存続を目指してきた河合賢一社長の思いは複雑だ。

「これだけのものを維持するということは、お金も人手もかかる。そういったものが全体的に厳しいので、この問題は筑豊、福岡の問題ではなく、全国的に共通する中で、地域としてこういう答えを出すということをご理解頂ければ有難い」。

採決による法定協議会の結論は、近く明らかになる見込みだが、少子高齢化や人口の減少が続く中、地域住民の“足”をどう維持していくのか。社会基盤としての公共交通機関のあり方は、地域の将来に大きく関わる問題だ。
(テレビ西日本)
