イラン情勢の緊迫化を受けて原油価格が上昇するなか、全国のガソリンスタンドでは値上げの動きが相次いでいる。熊本市のガソリンスタンドも3月11日夜に『駆け込み給油』をする客で行列ができていた。
GSでは『駆け込み給油』で行列
中東情勢の悪化による原油価格の急騰に伴い、3月9日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は前の週より3円30銭高い161円80銭となった。2025年12月以来、約3カ月ぶりの160円台で、値上がりは4週連続だ。

3月11日午後6時半ごろ、熊本市東区にあるガソリンスタンドでは、値上げを前に、多くの人が給油に訪れ、店の外まで列ができていた。

給油に来た人は「駆け込み、(値上げは)困りますね…」と話し、「仕事でも車を使うので安いうちにと思って。あっという間に上がっちゃいますね。子供もいるので、遠出が厳しいかな」と話す人も。

『駆け込み給油』の客で混雑していた、この店舗では12日から1リットルあたり28円値上げ。上げ幅は過去最大だという。
ハウス農家では重油の高騰に苦悩
一方、八代市鏡町でトマトを栽培する橘昌史さんは「今の時季は特に日数が掛かって熟し旨味も凝縮され、おいしい」と話すが、4月上旬までは重油を使った暖房器具でハウス内を暖めていて、原油価格の高騰は死活問題だ。

橘さんは「いまの重油の値段が100円前後だとしてそれが120円、130円、150円となったときに経営していけるのか…という話は(農家仲間と)する」と言い、「最初にすることは生産能力を上げる努力をすること。努力に限界がある」と話す。

今後、ガソリン高騰に伴う運送料の値上げが懸念され、資材や肥料などのコストも上がるのではと気をもむ。
国が補助金と備蓄の放出を発表
こうした中、政府は11日夜に1リットルあたり170円程度に抑えるため、補助金を再開すると発表した。

高市首相は「中東情勢の先行きはいまだ予断を許さない状況なので、事態が長期化する場合にも息切れすることなく、持続的に国民の皆さまの生活を支えるべく、今後とも支援のあり方は柔軟に検討する」と述べた。

また、3月下旬以降、原油の輸入が大幅に減少する見通しを受け、日本国内の石油備蓄を16日にも放出する方針だ。熊本県内でガソリンスタンド10店舗を経営する肥後石油によると、この政府の方針により、今後、大幅な値上げはなさそうだという。

肥後石油の小山浩一郎社長は「きのうまでは来週3月19日から、さらに17円相当上がるだろうと思っていた。午後7時半の報道で上がらないと思った。ドバイの相場から逆算すると、あと5円相当の値上がりがあるかな、日々変わるが…。上がっても5円だからゆっくり給油しに来てほしい」と話す。
経費増だけでなく軽油の供給制限も
また、サトウロジックの佐藤栄磨社長は「走れなくなる。そういう可能性を業界としては思っている」と話し、業界的な死活問題に直面していた。

菊池郡大津町に本社を置き半導体精密機械などの配送を行うサトウロジックでは、約70台のトラックを所有し、毎月7万1000リットルの軽油を使っていることから、このまま高値が続くと、年間約4000万円、経費が増えると予想している。

しかし影響はそれにとどまらない。サトウロジックでは、11日に仕入れ先の業者から『軽油の供給を制限する』と連絡があったという。サトウロジックでは自社のタンクに貯蔵し、トラックに給油しているが、業者からは「ガソリンスタンドを優先するため」として、納入が制限されているという。

佐藤社長は「2万リットルの容量を持っているが、1週間くらいでなくなる。一般のガソリンスタンドに入れに行かないといけない。そうすると、一般の人に影響があるのではないかというのが、今の状態」と話す。

政府は国内の石油備蓄を16日にも放出する方針で、小売り価格の急騰には一定の効果が期待できるが、運送業界は危機感を抱いている。

佐藤社長は「最低限できるのは確保を急ぐこと。荷主に情報を流すこと。危機感を持っている」と話し、経済を支えるインフラである物流への影響も、注視する必要がありそうだ。
(テレビ熊本)
