プレスリリース配信元:アスタミューゼ株式会社
アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、フィットネスに関する技術領域において、弊社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめました。

フィットネスの技術とは
健康寿命の延伸や疾病予防への社会的関心により「フィットネス」への注目が高まっています。フィットネスは、「からだづくり」のための運動にとどまらず、トレーニング機器や補助器具、測定センサ、施設管理システム、データ活用、そして健康とスポーツの科学的関係性のような、幅広い技術とサービス領域をカバーする分野です。
政策面でも、フィットネスと健康の関係性は重視されています。厚生労働省は2024年1月に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(注1)を公表し、週2~3日の筋力トレーニングをふくむ定期的な運動を初めて推奨事項として明記しました。
注1:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
また、スポーツ庁は従業員のスポーツ活動推進に積極的な企業を「スポーツエールカンパニー」(注2として認定しています。2026年度の認定企業数は1,635社。年々増加しており、健康経営の核としてもフィットネスが重視されています)。
注2:https://sportinlife.go.jp/sports_yell_company/
スマートウォッチやフィットネストラッカといったウェアラブルセンサ技術の普及により、日常的なトレーニングデータ管理にも変革があります。フィットネス施設においても、DX化による24時間型・無人型ジムの拡大やオンラインフィットネスの台頭など、設備や運動機器も大きく変化しています。IoTセンサによるデータ収集基盤の整備、AIを活用したトレーニング最適化、施設管理システムのDX化など、技術革新の余地が大きい分野です。
本レポートでは、フィットネスに関する特許と研究プロジェクトをベースに、アスタミューゼが有する独自のデータベースをもちいて直近の動向を紹介します。
フィットネスに関する特許およびグラントの動向分析
フィットネスに関連する特許をデータベースから抽出しました。図1は2015年以降のフィットネスに関する出願件数推移および、グラントの配賦額推移です。特許・グラントのデータは公開からデータベースへのデータ格納までにタイムラグがあるため、直近の2023年以降の集計値は参考値となります。また、中国のグラントは開示が2021年以降非公開のため、除外しています。配賦額についてはプロジェクト期間で均等割りし、各年度に配分して値を集計しています。

図1:フィットネス領域の特許出願およびグラント投資額推移
特許出願では、2015年から2021年までは増加しています。2021年は2015年の約1.7倍になりましたが、2021年がピークでその後はのびなやんでいます。一方、グラント投資額は、2024年まで一定額の投資が見られます。既存のフィットネス技術が成熟しつつある一方、次世代技術への研究開発投資は継続しているといえます。
グラント投資の国別動向が図2です。

図2:フィットネス領域のグラント投資額の国別推移
アメリカが圧倒的に多く、近年も増加し続けており、今後も本領域の研究をけん引しています。一方他の国々はアメリカと異なりと横ばいですが、日本はそのなかでも投資額が多く、継続した投資が行われています。
フィットネスに関する「未来推定」分析
フィットネス領域の文献にふくまれる特徴的なキーワードを抽出し、年次推移を分析することで、近年注目されている技術要素を特定する「未来推定」分析をおこないました。キーワードの変遷をたどることで、これから脚光をあびる要素技術の流れを可視化できます。
図3はフィットネス領域における特許のキーワード分析結果です。成長率(growth)は2020年以降の出現数を、2015年~2024年の出現数で割った比率です。0.5以上であれば近年増加しているキーワードとなり、1に近いほど近年になって出現し始めたワードとなります。

図3:フィットネスに関する特許のキーワード年次推移
「BFRT(血流制限トレーニング)」、「resistance-training(レジスタンストレーニング機器)」、「ewot(酸素強化トレーニング)」、「aerobic(有酸素運動)」といった運動形式に関するワードや、「muscle-sensing(筋肉センシング)」、「multiparameteric(多パラメータ)」のようなセンシングに関するワードが見られます。さまざまな運動形式、運動機器や補助具、および運動モニタリングののびがうかがえます。
運動機器以外には「avatar-incentive(アバター動機付けシステム)」、「leaderboard(ランキングシステム)」など、ゲームフィケーションおよびモチベーションに関する用語が少数ながら増加しています。また「intervation(介入研究)」、「sarcopenia(サルコペニア)」、「obesity(肥満)」、「farailty(フレイル)」のように、特定疾患の研究に関するものも見られます。とくに「sarcopenia」は加齢や疾患等により筋肉量・筋力が低下する病気であり、頻度自体は少ないものの出現割合は急上昇しています。
図4はグラントにおけるキーワード分析結果です。

図4:フィットネスに関するグラントのキーワード年次推移
グラントでは「hiit(高強度インターバルトレーニング)」、「aerobic-resistance(有酸素+抵抗運動複合)」のような効率的なトレーニングに関するワードや、「wearable(ウェアラブル)」、「esteps(電子歩数計測)」のようなモニタリング関連の用語は見られますが、特許とはことなり特定の病気に関するワードは減少し、「myokine(マイオカイン)」、「exerkine(エクサカイン)」、「cgcn5l1(ミトコンドリア代謝関連遺伝子)」、「gpld1(脳機能改善マイオカイン)」といった運動に関連した成分や遺伝子に関するワードが多数出現しています。
「myokine」、「exerkine」は運動したときに放出されるシグナル分子やホルモンです。これらの運動応答性物質に関する研究が注目されています。
特許およびグラントの結果から見える注目技術分類が図5です。

図5:フィットネスに関する注目技術分類
直近では、ウェアラブルをふくむスマートデバイスや、デジタル活用技術、スポーツ特化型トレーニングが発展します。そして、短期から中期にかけては、機能的トレーニングの発展や、モチベーション改善、そして肥満や血管関連疾患解決に向けた技術が進みます。さらに長期では、運動時に生成される物質 (エクサカイン等)と運動の関連性が解明され、より高度で効率的なトレーニングや、サルコペニアなどの加齢対策など高齢者向けの社会課題解決にむけた技術が発展していくことが予想されます。
最後に、これまでのキーワードをもとにした注目の特許とグラントの事例を紹介します。
- 特許事例1:スマートフィットネス機器・デバイス
- - 公報番号:CN115590537A
- - 出願年:2022年
- - 出願人:Southwest Jiaotong University、Chengdu Sport University
- - タイトル:Exercise health management method and device, electronic equipment and storage medium
- - 概要:運動中に体表から取得した筋電図(EMG)信号を多次元に変換・解析し、筋肉の動きの複雑さをスコア化。そのスコアをもとに、個人に適した運動方法と食事メニューを自動提案する機器。
- 特許事例2:デジタルコーチング・コーチング支援・ゲーミフィケーション
- - 公報番号:WO2022240829A1
- - 出願年:2022年
- - 出願人:Snap Inc
- - タイトル:Virtual guided fitness routines for augmented reality experiences
- - 概要:ARグラス搭載のIMU・カメラでユーザの動作や器具をリアルタイムに検出し、アバターが音声とアニメーションで運動指導しながら、反復回数を自動カウントして表示するARシステム。
- グラント事例1:運動応答性物質にもとづいた次世代フィットネス技術
- - タイトル:運動誘発性物質エクサカインが血液脳関門に及ぼす影響-運動が脳を守る機序を探る-
- - 機関・企業:順天堂大学
- - 採択年:2024年
- - 資金調達額:約1,900万円
- - 概要:運動により骨格筋から分泌されるエクサカイン(イリシンなど)が、パーキンソン病やうつ病などの原因となる血液脳関門(BBB)の破綻をふせぎ、脳を守まもる仕組みを解明する。
- グラント事例2:筋力・機能的トレーニングおよびその応用、肥満・心血管・血管関連
- - タイトル:Optimizing Aerobic Fitness and Functional Response to Exercise in Older Adults.(高齢者の有酸素運動能力と運動に対する機能的反応の最適化)
- - 機関・企業:University of Vermont & ST Agric College
- - 採択年:2024年
- - 資金調達額:約62.5万米ドル
- - 概要:従来の中等度有酸素+レジスタンストレーニング(MICT+MIRT)では高齢者の骨格筋サイズ・収縮力の回復が不十分なため、代替介入として、高強度有酸素インターバル+高強度レジスタンストレーニングとの比較RCTにより、最大酸素摂取量・身体機能改善効果と筋細胞レベルのメカニズムを検証し、心臓疾患患者への高強度運動の臨床普及をめざす。
フィットネス関連技術の動向分析まとめ
フィットネス関連技術の特許出願動向は、2015年から2021年にかけて出願数は約1.7倍に増加したものの、2021年以降はのびなやんでいます。一方、グラントの投資額は2015年以降継続的に増加しており、米国がけん引役となりながら、日本も一定水準の投資を維持しています。これらのことから、既存のフィットネス技術は成熟期にさしかかりつつある一方、次世代にむけた基礎研究や開発投資は着実に進んでいることがわかります。
特許とグラントのキーワード分析では、現在から近い将来にかけての注目領域として、ウェアラブルをふくむスマートデバイスや、AI・デジタル活用技術の成長が予想されます。実際、2025年4月には経済産業省が「これからの健康経営について」(注3)を公表し、ウェアラブル機器等で取得したバイタル・ライフログデータをPHR(パーソナルヘルスレコード)として健康管理に活用するとりくみを政策的に推進しています。
注3:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/250424_kenkoukeieigaiyou.pdf
他にも「BFRT(血流制限トレーニング)」、「muscle-sensing(筋肉センシング)」、「sarcopenia(サルコペニア)」などの用語の割合が急増しており、多様な運動形式のモニタリングや特定疾患への介入研究への関心が高まっています。グラントでは「myokine(マイオカイン)」、「exerkine(エクサカイン)」といった運動時に分泌されるシグナル分子に関する研究が急増しており、運動の生化学的メカニズムの解明が中長期的な重要課題となっています。
運動と生体分子の関係解明が進むことで、サルコペニアや肥満・血管疾患など高齢化社会の課題解決に向けた高度なトレーニング技術の開発が期待されます。また、ゲーミフィケーション(「avatar-incentive」、「leaderboard」等)を活用したモチベーション改善技術や、機能的トレーニングへの応用も注目されます。フィットネス分野は、テクノロジーと医学・生命科学の融合によるあらたな革新の段階に入りつつあり、企業・研究機関いずれにとっても早期の参入・研究投資の検討価値が高い領域です。
著者:アスタミューゼ株式会社 田澤 俊介 博士(工学)
さらなる分析は……
アスタミューゼでは「フィットネス」に関する技術に限らず、様々な先端技術/先進領域における分析を日々おこない、さまざまな企業や投資家にご提供しております。
本レポートでは分析結果の一部を公表しました。分析にもちいるデータソースとしては、最新の政府動向から先端的な研究動向を掴むための各国の研究開発グラントデータをはじめ、最新のビジネスモデルを把握するためのスタートアップ/ベンチャーデータ、そういった最新トレンドを裏付けるための特許/論文データなどがあります。
それら分析結果にもとづき、さまざまな時間軸とプレイヤーの視点から俯瞰的・複合的に組合せて深掘った分析をすることで、R&D戦略、M&A戦略、事業戦略を構築するために必要な、精度の高い中長期の将来予測や、それが自社にもたらす機会と脅威をバックキャストで把握する事が可能です。
また、各領域/テーマ単位で、技術単位や課題/価値単位の分析だけではなく、企業レベルでのプレイヤー分析、さらに具体的かつ現場で活用しやすいアウトプットとしてイノベータとしてのキーパーソン/Key Opinion Leader(KOL)をグローバルで分析・探索することも可能です。ご興味、関心を持っていただいたかたは、お問い合わせ下さい。
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