明治創業の灯を未来へ 吉成電気商会【アトツギ】

父の急逝、そして母の入院。大分県豊後高田市でまもなく130年の歴史を刻むいわゆる町の電気屋さん「吉成電気商会」の6代目となるのが吉成秋葵さん(24)だ。

デパートの化粧品販売員だった彼女は実家の危機をきっかけに老舗の未来を担うことを決意した。

130年の歴史を紡ぐ、吉成電気商会

明治30年、電力や電灯がまだ行き渡っていない時代に吉成電気商会は大分県豊後高田市で創業した。以来、130年に渡って地域の人々の暮らしを支え続けている。

その6代目として奮闘するのが、24歳の吉成秋葵さん。

守ろうとしているのは、明治から一度も絶やすことなく受け継がれてきた、歴史そのものと地域のつながりだ。

突然訪れた危機

2022年、店は想定していない状況に直面した。

大黒柱だった4代目の父が亡くなり、その後を継いだ5代目の母が入院。お店の危機に立ち上がったのが6代目にあたる秋葵さんだ。

「閉めてたまるか」

――吉成秋葵さん「やっぱり長く続いてるので、終わらせたくないっていうか、負けず嫌いっていうか、そういうのが出てきた。閉めてたまるかみたいな感覚で、どうしても私で終わらせたくない気持ちはありました」

歴史を自分の代で終わらせたくない。その一心で、家業を継ぐことを決意した。

ゼロからの再スタート

高校卒業後、秋葵さんが就職したのは県内のデパートの化粧品販売員だった。

家電業界は全くの未経験のため家業に戻ってからは、まさにゼロからのスタート。これまでとは全く別の世界だった。

――吉成秋葵さん「何もかも分からない状態。まったく別の世界だったんですけど、従業員さんがすごく、優しく丁寧に教えて指示もしてくれるので、どんどん吸収して覚えていかなきゃっていうふうに」


技術的なことは、今もベテラン職人の背中を追いかける毎日が続く。

歴代店主から受け継いだ信念

秋葵さんには歴代店主から受け継いだ「ある信念」があった。

それは創業以来続く「迅速な対応」と、地域に根ざした「対人関係」である。

困っている人のところへすぐに駆けつけ、顔を見て話を聞く。この姿勢こそが、吉成電気商会が地域で長い間、愛され続けてきた理由だ。

地域からの厚い信頼

長い歴史で築いてきた信頼関係は地域の人に脈々と受け継がれている。

――地域住民「テレビの閲覧とか電話するの。そうすると、どっかをどうしてごらんとか言ってくださるんですよ。それでもだめならおじちゃんが来てくれるんだけど、頼りになる。なんでも相談します。ここ、とても大好きなんです」

「人と向き合う」姿勢。それは、秋葵さんが得意とすることだった。

前職のデパートの化粧品セールスでは接客対応1位に輝いた実績を持つ。

新たな挑戦、キッチンカー

その接客スキルを活かし2026年2月から、新しく始めたことがあるという。それが「キッチンカー」だ。

一見、電気屋と関係ないように見えるが、狙いがある。

――吉成秋葵さん「どこかで電気屋さんをしてますっていうふうに打ち出して、買わなくてもいいので悩んでることありますかっていうふうにヒアリングとかできれば。まずは私を知っていただく」

家電量販店などが近くにも進出する中、どのように自社を差別化するのか。その答えは住民との距離の近さをいかしたコミュニケーション。

昔からの得意先はもちろん、移住先としても人気が高い豊後高田で、より多くの地域の人との接点を増やす手段がキッチンカーだった。

今後の目標は明確だ。

――吉成秋葵さん「一人一人対面でしっかりとお客様に会って覚えてもらって。丁寧なサービスをして信頼を作るっていうことが私の目標です」

思いがけない経緯から「閉めてたまるか」という思いで店を引き継いだ6代目。

ともすればリアルでの対人関係が希薄化しがちな今の時代。受け継いできた歴史と地域を思うその決意が、これからも昭和の町を温かく照らしてくれることだろう。

テレビ大分
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