こだわりの「天然もの」たい焼きです。長野県飯田市で約80年続く店。創業当時から続く一つずつ丁寧に型で焼く「一丁焼き」の技法で「天然もの」と呼ばれるたい焼きの味を守り続けています。

■伝統の味を守る5代目と6代目親子

生地を型に流し込み、ぎっしりとあんこを詰めて、一つずつ丁寧に焼き上げられた「たい焼き」。

約80年の歴史がある飯田市座光寺のたい焼き店「美角屋(みかくや)」です。

訪れた客:
「おいしい」

店を切り盛りするのは6代目の代田千英さん(27)と、母で5代目の千恵子さん(63)。2人で伝統の味を守っています。

美角屋 5代目・代田千恵子さん:
「何年やっても私は難しいです。たい焼き屋さん、焼くのは。焼きは大変ですよね」

■始まりはリヤカーでの販売

美角屋は80年ほど前に千英さんの高祖父の仲太郎さんがリヤカーでたい焼きを販売したことが始まり。そして、1958(昭和33)年に飯田市白山町に店を構えました。

美角屋 6代目・代田千英さん:
「(きっかけは)分からないんですよね」

美角屋 5代目・代田千恵子さん:
「昔は甘いものがなかったから?」

美角屋 6代目・代田千英さん:
「知っている方がいたら教えてほしいくらいの感じです」

その後、店は千英さんの曾祖父・昴さん(2代目)、曾祖母・とらのさん(3代目)、祖母のいちゑさん(4代目)と受け継がれていきました。

■リニア計画で訪れた店の転機

2018年、いちゑさんの時代に転機が訪れます。白山町の店がリニア中央新幹線の整備計画地にあったため場所を移すか店を閉じるかの選択を迫られました。

5代目・代田千恵子さん:
「白山町のお店が道路に当たってしまってなくなるということで、年取ってからもできるし、この味を絶やしちゃいけないという気持ちでここへ移ることにした」

2018年7月、座光寺の今の場所に移り、千恵子さんが5代目となりました。

そして、2024年、東京で会社員をしていた千英さんが戻り、6代目として店に加わりました。

6代目・代田千英さん:
「ずっと昔から、おばあちゃん(いちゑさん)が焼いている姿を見ていて、昔からいつかはやりたいなというふうには思っていた。生活環境とかの兼ね合いもあってタイミングでたまたま2年前だった」

■昔ながらの生地と自家製あんこ

2人は昔からの作り方を守っています。生地に加えるのは『黒糖』。

5代目・代田千恵子さん:
「嫌な甘味じゃないというか、自然の甘みというか、口に残らない甘みですよね。使っているものは変えていないですよ」

あんこも手作りです。

6代目・代田千英さん:
「これ(升)も昔から使っているやつです。初代とまではいかないけど、2代目のおじいちゃんくらいからずっと使っているって、ばあちゃんが言ってました」

北海道産の小豆を使い丁寧に仕上げます。

6代目・代田千英さん:
「混ぜて蒸発させていきます。落ちたところがそのまま残る感じになってきたら、そろそろかなって感じで。これは昔、高校生の時にばあちゃんから教わりました」

■「天然もの」と呼ばれる一丁焼き

2人が手本にしているのは千英さんの祖母・4代目のいちゑさん。1950年代から移転する前までの約60年間、店を守り続けました。この動画は千英さんが学生時代に撮影したものです。

6代目・代田千英さん:
「偶然その時に思ったんですよね、焼いている姿を見て。撮ろうっていうつもりでいなかったんですけど、自然と撮っていたって感じです」

そして、焼きの工程。しっぽの部分まであんこを詰めて、直火で一つずつ丁寧に焼き上げる「一丁焼き」。創業時からの技を2人が引き継いでいます。

6代目・代田千英さん:
「昔のおばあちゃんの動画を見比べながら日々研究しながら焼いている感じですね」

ファンはこの焼き方を「天然もの」、まとめて焼く方法を「養殖もの」と呼んでいます。「型」は初代・仲太郎さんから代々受け継がれ、定期的にメンテナンスしながら使い続けています。

6代目・代田千英さん:
「この飯田で昔からずっと大事に使い続けている型で、変わらぬ味を出すってことにすごく意味があるなって日々感じています」

80年の歴史が詰まったたい焼きが完成しました。

「天然もの」は手間はかかりますが、表面はカリッと、中はしっとりと仕上がるそうです。

■たい焼きに合うコーヒーの提供

変わらぬ味を求め―。

常連客(岐阜・中津川市から):
「おいしい。あんこが、私は甘すぎるのが嫌いなんだけど、そういうのがなくて程よい感じで」

常連客(飯田市から):
「今寒いときだから温かいものが一番いいじゃないですか。おいしいな、やっぱりね」

千英さんが6代目となってから新たに「たい焼きに合うコーヒー」の提供も始めました。「カフェ」が好きだったこともありますが「美角屋」を住民の憩いの場所にしたいという思いがあるからです。

6代目・代田千英さん:
「昔の店舗の方でかき氷とか、ちょっとしたお茶を提供していたという話が、おばあちゃんとか、お客さんからあって、昔の姿を取り戻していきたいなっていう思いがあったのと、みんなの集いの場所というか」

■何年もこの味を残していきたい

80年の伝統を守る5代目と6代目の親子。この先何年もこの味を残していきたいと意気込んでいます。

5代目・代田千恵子さん:
「長年続けてくれたので、より良くやってもらえれば。それしかないですからね。私としても動けるうちは自分なりに協力していきたいと思っているし」

6代目・代田千英さん:
「たまに『おばあちゃんに似ているね』って言われることもあったりして、70歳になっても焼き続けていたら、おばあちゃんみたいになれるのかなみたいな。長年、その昔からの味を受け継いで続けているという姿を今後も一緒に見せていけたらと思っています」

長野放送
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