いまや大学生の3人に1人が利用している奨学金。一方、金融政策の見直しで金利が上昇するなど返済への不安を抱える学生もいる中、企業や自治体の支援制度が拡充している。その背景とは?

大学生活の”光と影”?奨学金のリアル

子供たちにとって大きな挑戦とも言える大学入試。

3月に入り、受験シーズンもいよいよ大詰めだ。

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都内にある大学への進学が決まっているという男子生徒は「空き時間に都心に行って友達と遊ぶのが楽しみ」と話せば、静岡県内にある大学への進学を目指している女子生徒は「楽しいサークルに入ったり、1人暮らしを楽しんだりしたい」と春からの新生活に心を躍らせる。

一方で、受験生が懸念を抱いているのが、いまや大学生の3人に1人が利用している奨学金だ。

県内大学への進学が決まった女子生徒は「出来たら返さなくてもよい(給付型)奨学金の方がいいが…返せるのか不安」と口にし、同じく県内の大学に進学する男子生徒は「早めに返さないと利子が付いてしまうので、早めに返せるように貯金していきたい」と答えた。

金利上昇でピンチ…どうなる?奨学金返済

日本学生支援機構が運営している奨学金は現在3種類。

返済が不要な給付型、利子のない貸与型、そして利子のある貸与型だ。

2024年度の利用者は全体で約143万人。

中でも、利子が必要な奨学金を利用している学生は62万人に上る。

一方、国内における金融政策の見直しは奨学金にも影響を及ぼしていて、返済期間中の金利が変わらない固定方式の場合、2022年の3月には約0.4%だった利率が、2026年1月の時点で2.512%にまで跳ね上がった。

返還利率は貸与を終えた時点の金利が適用されることになっていて、大学生が借りる奨学金の平均額である336万円で試算すると、4年前の卒業生と比べて返済額に80万円近い差が生じる状況となっている。

奨学金返済に救世主?サポート最前線

こうした中、アルミ建材の開発や製造・販売などを手掛ける静岡市駿河区の理研軽金属工業では、2年前から奨学金返済の支援制度を導入している。

図面やデータの作成を担当している入社8年目の村山建至さんも利用者のひとりで、制度の導入を知った時のことを「登録する以外の選択肢がない。ただただ、うれしいという心境だった」と振り返る。

理研軽金属工業では250万円を上限に従業員の奨学金の返済を肩代わりしていて、総務人事課の海野有紀さんは、社員が安心して働くことができる環境を作るため制度の設立を社長に提案したという。

この制度により、村山さんも「経済的にすごく楽になった。経済的に楽になると、精神的にも楽になり、だいぶ余裕を持って生活できるようになった」と笑顔を見せる。

今のところ応募者数の増加など目に見える成果は出てはいないものの、就活生の反応は良いといい、海野さんも「製造業という部分や会社名を知らないという部分で学生にスルーされてしまうところもあったが、奨学金返済制度があるとアピールすることで、(説明会などで)学生が席についてくれたり、声をかけたりしてくれる機会が増えたので、反響は大きいと思う」と証言する。

県も企業の魅力向上や人材確保に向けて、こうした支援制度を後押ししていて、採用した従業員(35歳以下)の奨学金を代理で返済した場合、負担額の3分の2を助成する制度を2025年に新設。

すでに牧之原市と菊川市では運用が始まっていて、上限額は1人あたり年間8万円、 最長で5年間となっている。

また、静岡市では中小企業だけでなく、大企業も対象とする独自の制度を取り入れ、同市商業労政課の岡村萌香さんは「どの企業も規模にかかわらず、人手不足が課題と聞いているので、市と市内の企業が協力して静岡市で働きたい若者を応援するということを通じて、市内企業の採用力向上や人材不足の解消につなげていきたいと考えた」と狙いを明かす。

理研軽金属工業も静岡市の制度を活用する予定で、助成によって”浮いた”資金を住宅手当など福利厚生の充実や採用活動のさらなる強化に回していきたい考えだ。

学生が将来を考えるにあたって不安要素の1つとなっている奨学金。

若者から選ばれる企業や自治体を目指して、負担軽減の動きが今後も広がっていくのか注目されている。