富山市婦中町の美容室「メアリスト」では、ハサミの「チョキン」という音やドライヤーの音でパニックになってしまう子どもたちが、安心してヘアカットを受けられる環境づくりに取り組んでいる。発達障がいで「感覚過敏」などのある子どもたちに寄り添う、全国的にもまだ少ない取り組みだ。

実家改装の美容室から始まった挑戦

小林沙季さんが実家を改装して美容室「メアリスト」を開業したのは10年前。2020年から保育士と連携した託児スペースを設置し、生後2か月から子どもを預かって「子育て中のお母さんも安心してヘアカットできる」環境を整えてきた。

利用者からは「すごくお母さんに優しい美容室だなと。いつも子供も安心して利用させてもらっている」との声が聞かれた。
「美容室が苦手」な子どもたちの受け入れ

小林さんが去年から本格的に始めたのが、発達障がいなどのある子どもたちの受け入れである。託児スペースを「美容室が苦手」な子どもたちの部屋としても活用している。
「いきなりはカットせず、とりあえず部屋に入ってもらって、怖くない場所なんだと遊んでもらう。場所に慣れてもらう」と小林さんは説明する。

発達障がいのある子どもは、初めての場所でパニックになることがある。音や光、匂いなどの刺激に敏感な「感覚過敏」を持つ子どもも多い。
専門スタッフによるきめ細やかなサポート
そこで店内を貸し切り状態にして、絵や図を使って事前に何をするかを説明。発達障がい支援の資格も持つ保育士スタッフがサポートに入る体制を整えている。
保育士で子ども発達障がい支援実務士の友山茉莉さんは、感覚過敏の子どもたちの特性について詳しく説明する。
「『感覚過敏』を持つ子どもにとって私たちが普段ふつうに聞こえる音や感触もひとつひとつすごく恐怖と感じることが多い。ハサミの『チョキン』という音、バリカンの音。本当にパニックにつながる恐怖の音に。ドライヤーの音もパニックになってしまう子が多い」

対応方法も工夫している。「まずはちょっと離れたところから『こういう音だよ』『聞いてみよう』まず耳慣れ。『こういう音なんだ』と感じてもらって徐々に近くに(慣れてもらう)」という段階的なアプローチを取っている。
高まる需要と限界への挑戦

こうした美容室は全国的にもまだ少なく、現在「メアリスト」には県の内外から年間80人の子どもが通っている。小林さんのもとには切実な声が届く。
「他の美容室で断られちゃったという声を聞くことが増えて、ひとりで座れないとだめとか、大きな店だと他のお客さんに迷惑になると、ママたちが気を遣って遠慮しているということもある」

小林さんが市内の支援学校などに通う子どもの保護者約300人にアンケートを行ったところ、その7割が専用のカットサービスを「利用したい」と回答した。
需要が増える一方、一般客の予約との兼ね合いも難しくなってきたことから、専用ルームを設けることを決断。
安心できる環境づくりへの取り組み
専用ルームでは、走り回ってもケガをしないよう壁をクッション素材にし、防音加工を施す予定だ。事前に美容室に理解を深められる絵本も制作することにしている。
小林さんは今後への思いを語る。「『カットしてほしい』声がたくさんあるが、ちょっと今受け入れきれていない現状。改装して専用ルームができてもやっぱり限界があると思うので、このようなお店がもっと富山県中に広がったり、美容師さんたちの関心もそこに広がればいいなと」

発達障がいではなくても、「じっとしていられない」「不安感が強い」などさまざまな“苦手”を抱える子どもたちがいる。そんな子どもたちが安心できる環境づくりを目指して、一つの美容室から始まった取り組みが、県内全体に広がる可能性を秘めている。
(富山テレビ放送)
