鳥取・日野町の山間に、かつて子どもたちの声が響いていた校舎がある。3年前に近隣の学校との統合で役割を終えた旧日野中学校が今、全く新しい姿に生まれ変わろうとしている。
手がけるのは、東京で有名アーティストのライブ映像を制作してきた鳥取市出身の男性クリエーター。光と映像を使った没入型アートギャラリーづくりに挑んでいて、プロジェクターやセンサーを使った空間演出だけでなく、廊下や他の教室も活用し、地域の作品展示やワークショップも展開。里山に新たな文化拠点を生み、次のクリエーター育成を目指すプロジェクトにかける思いを取材した。

施行中の教室
施行中の教室
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日野町の旧日野中学校は3年前、町内の小学校2校とともに小中一貫の義務教育学校に統合され、生徒の姿は今はない。
しかし、この校舎であるプロジェクトが進められている。

プロジェクトの発起人が鳥取市出の奥谷秀平さんだ。結婚をきっかけに、2024年にふるさとの鳥取市にUターン。妻の仕事の都合で、2025年に日野町に生活の拠点を移した。

“Uターン”クリエーターが描く新たな地域拠点

奥谷修平さん
奥谷修平さん

奥谷さんは、高校卒業後に上京。映像クリエーターとして、誰もが知る有名アーティストのライブや音楽番組、大規模イベントなどで使われる背景映像の演出・制作を手がけてきた。

映像クリエーターとして働く東京時代の奥谷さん
映像クリエーターとして働く東京時代の奥谷さん

東京時代の仕事はリモートで継続しながら、奥谷さんが新たに目指すのは「光と映像を使ったアートギャラリー」の創設だ。「プロジェクターを3台使って、一面、二面、三面とコの字型に映像を投影するという。この中に人がいて、映像の中に没入するように体験できるという場所になる予定です」と構想を語る。

廃校全体をクリエイティブ空間へ

「3D完成イメージ」時ノ時間―トキノマ—
「3D完成イメージ」時ノ時間―トキノマ—

核となるのは、かつての教室をリノベーションしたデジタルギャラリーだ。奥谷さんが制作した映像を投影し、人の存在に反応するセンサーを使って光や映像に「没入する」体験を提供する。投影される映像のテーマは『都市と里山が交差する教室』。廃校の持つ独特の雰囲気と日野町の豊かな風土を生かした演出で、人口減少が進む里山に「アートの力」で人を呼び込む場所を作り出そうとしている。

廊下
廊下

プロジェクトは一室にとどまらない。「こっちは廊下なんですけど、ここにモニターを置いて、廊下にも歩きながら作品が見れるような場所にしたい」と奥谷さん。廊下にはモニターを並べて仲間のクリエーターの映像を上映し、他の教室は地域の愛好家による写真や陶芸作品の展示・販売スペース、ワークショップ会場として校舎全体をフル活用する計画だ。

教室は展示・販売スペース、ワークショップ会場へ活用
教室は展示・販売スペース、ワークショップ会場へ活用

地域の力を借りて夢の実現へ

ただし、映像の専門家である奥谷さんにとって、電気工事などは専門外。プロジェクトを応援する地域住民の協力を得ながら作業を進めている。「計画から結構大変なことをしてるなと思いつつ、地域の人にいろいろ手伝ってもらいながら、今進めているところです」と地域の支えに感謝する。

地元住民の協力を得ながら作業準備
地元住民の協力を得ながら作業準備

プロジェクトを手伝う久城雅文さんは「やっぱりソフトウェア的なところは、やれる人が限られているし、特にこういった地方になるとなかなかいらっしゃらない。もう本当にワクワクドキドキという感じですね」と期待を込める。

地方と都会の文化・エンタメ「格差」 才能を育む拠点に

拠点空間で構想を語る奥谷
拠点空間で構想を語る奥谷

プロジェクトにかかる費用は全て奥谷さんの自己負担で、銀行融資やクラウドファンディングによる寄付で賄っている。「身銭」を切ってまで情熱を傾ける理由について、奥谷さんはこう語る。「一番の目的としては、クリエーターとかその創造性を育むような事業を提供するっていうことをミッションにしていて、ここに来て影響を受けたり、クリエイティブの発信拠点になれるんじゃないかと思っていて、その一環のプロジェクトでもあります」。

「3D完成イメージ」時ノ時間―トキノマ—
「3D完成イメージ」時ノ時間―トキノマ—

地方出身だからこそ痛感する、都会との文化・エンターテインメントの「格差」。美術館も映画館もない山間の町で、アートに触れる機会を自ら創出することで刺激を与え、次世代の才能発掘につなげたいという思いが込められている。「クリエーターやアーティストなどを育てたり、発信したりするようなそんな場所になればいいなと思っています」と語る。

旧日野中学校・廃校が映像アートの聖地に
旧日野中学校・廃校が映像アートの聖地に

このプロジェクトのクラウドファンディングでは、目標額200万円に対し、220万円余りが集まり目標を達成することができた。オープン予定は3月13日。廃校から生まれ変わる新たなクリエーター・アーティストの発信・育成基地として、奥谷さんの挑戦が本格的に始まろうとしている。

TSKさんいん中央テレビ
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