「脱走は絶対許さない」…ウイグル弾圧“内部文書”衝撃内容を詳しく読み解いた

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  • 「脱走事件は絶対に許してはならない」
  • 1週間で1万6000人を収容…アプリも監視
  • 中国政府は完全否定

「脱走事件は絶対に許してはならない」

中国の新疆ウイグル自治区で、イスラム教を信仰するウイグル族ら少数民族が多数、「再教育施設」に収容されているとして、国際社会から批判が強まる中、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は住民への監視や施設の管理の実態を示す当局の内部文書を入手したとして公開した。施設について中国当局は「職業技能教育訓練センター」と主張しているが、文書からは強制的な拘束や、徹底した思想教育などが行われていることが伺え、その内容は衝撃的だ。詳しく紹介したい。

自治区党委政法委は新疆ウイグル自治区の司法、公安など治安部門を主管する党の機関

公開されたのは新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安部門のトップ名で出された文書などを含む2017年の文書で、施設の運用について細かな要求が並んでいる。

「訓練所の絶対安全を確保する」という項目では、「脱走事件は絶対に許してはならない」「トラブルや騒動は絶対に許してはならない」「職員への襲撃事件を絶対に許してはならない」などと書かれている。脱走防止策に関しては、見張り台の設置や、外部との隔離などを求めているほか、鍵付きドアは2人の監視員が別々の鍵を持って管理することや、宿舎や教室には「死角がないよう」監視カメラを設置するよう求めている。トイレや入浴時なども徹底して管理することなどが指示されているほか、入所者が規定外に外界と連絡を取ることや、携帯電話を隠し持つことも厳しく禁じるなど、入所者の扱いはほぼ刑務所のそれである。

「脱走事件は絶対に許してはならない」などの文言

FNNは今年7月にウイグル自治区で「職業技能教育訓練センター」とみられる施設を撮影しているが、文書の通り確かに施設は高い壁に囲まれ、外部から隔離するように人目につかず地図にも載っていない場所に建てられていた。巨大な敷地内には収容施設のような殺風景な建物がいくつも並んでいて、教育施設という風には見えなかった。

人目につかないような場所に建てられていた施設 殺風景な建物が並んでいた

「悔い改めと告発を促す」…徹底した思想教育

「教育」については、「毎日中国語、法律、技能の授業を堅持する」とした上で、「中国語を主な課程とし、法律、技能の授業は一律に中国語を使用する」「『過激化を取り除く』などの内容を中国語授業に盛り込む」などと方針を示している。さらに「毎週1回小テスト、毎月1回中テスト、毎四半期1回大テスト」を行うよう求めている。思想教育については、「悔い改めと告発を促し、過去の行為の違法性、犯罪性、危険性を深く認識させる」といった文言が並ぶ。入所者には少なくとも週に1回電話、月に1度はビデオ通話を保証するとしているが、「家族との連絡後に生じる思想問題や感情の変化に注意し、適宜思想指導を行う」とされている。

ポイント制で管理

施設には「強管区」「厳管区」「普管区」を設置し、それぞれ異なる教育訓練や管理制度を採用すると書かれている。具体的な管理方法は書かれていないが、「強」「厳」「普」という字からも、厳しさの異なる3段階の管理区域があることが伺える。入所者は思想転換、学習訓練、規則の遵守などの面から評価され、ポイントで管理されるといい、態度やポイントに応じて、入所区域の調整が行われる。

また、ポイントが一定水準に達すると、「修了」に向けた審査が行われるが、「修了」の条件として、1)入所時の問題が比較的軽い、2)センターでの教育訓練が1年以上、3)「普管区」の入所者であること、4)教育訓練総ポイントと、思想転換、学習成績、規則の遵守などのポイントがそれぞれ既定の水準に達していること、5)その他問題がないこと
が挙げられている。

施設への入所者をめぐっては、国際人権団体などが裁判も経ず行政の判断で決められるとして批判をしているが、中国政府は「本人の意思で入所している」などと説明していて、誰をどんな基準で入所させるのか実際の運用は不透明だ。

7月にFNNの取材に応じてくれたウイグル族男性は、中国語が話せない人たちは就業機会に恵まれないため、施設内では主に中国語を学ぶ、と話していた。何人かの知人が入所していると言い、「週に1度は帰宅が許される」「期間は1年や2年、人によって異なる」などと話していたが、具体的なことは話したがらなかった。地元の人でも実態を知ることは難しく、仮に知っていたとしてもそのようなことを外部の人間に話すことは極めて危険なことなのだ。

「新疆は良い所」との標語 隣にはバザーに入るための手荷物検査場

出所後も続く監視

文書によると「修了」が決まった入所者に対しては、さらに3-6か月間職業技能強化クラスでの職業教育が行われた後、就業に向けた支援が行われる。驚きなのは「修了」し、施設を出た後も、「1年は視線から離してはならない」として、「追跡支援教育」と称する監視を続けることが求められている。

施設の運営に当たっては各地方の党組織と公安、司法、教育、衛生部門などが共同で対応に当たるよう求められており、かなり大掛かりなものであることが伺える。その上で、文書は施設について「政策性が強く、敏感度が高い」として「厳格な秘密保持」を要求している。

1週間で1万6000人を収容…アプリも監視

「一体化統合作戦プラットフォーム」の“通報”

このほか別の文書からは、「一体化統合作戦プラットフォーム」という名の大規模な監視システムが構築されており、「通報」という通達文書によって日々情報が共有されていることが伺える。今回公開された文書の中には2017年6月に出された「通報」4通もあり、そのうちの1つには、南新疆で1週間に約1万6000人が「教育訓練センター」に送られたとの記述があった。中国政府は収容人数を明らかにしていないが、国連は100万人規模に上る可能性を指摘している。

また別の「通報」によると、当局は「Zapya(中国語名:快牙)」というファイル共有アプリが「暴力・テロ分子によく使われている」としてユーザーについて調べ、2016年7月から2017年6月の間に、新疆の約187万人のウイグル族がこのアプリをダウンロードし、そのうちの4万557人について「有害」と報告している。Zapyaはネットに接続しなくてもスマートフォン同士でファイルのやり取りができるため、通信環境の悪い地域で人気があり、コーランやイスラム教の教えを共有するために使われているという。

中国政府は完全否定

文書について、ICIJは、国外に逃れたウイグル族のネットワークを通じて提供を受けたもので、専門家の検証を経て本物と判断したとしている。一方で、ICIJメンバーであるイギリス、ガーディアン紙の取材に対し、在英中国大使館は「完全なでっちあげで、フェイクニュースだ」などと回答。中国外務省も定例会見で、「一部メディアが卑劣な手段で新疆問題を騒ぎ立て、中国の反テロ・反過激化の努力を中傷し、泥を塗ろうというたくらみは達成できないだろう」と述べた。いずれにしても施設は自治区内の各地に増え続けているとされ、今、どのような運営がなされているか実態は不透明なままである。

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【執筆:FNN取材班】

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