パレード中継では、音楽にも注目

いよいよ、天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」が10日午後3時から行われる。
皇居・宮殿から赤坂御所までの4.6㎞を約30分かけて走るこのパレード、両陛下がどんな表情でお出ましになるか、皇后雅子さまはどんなドレスをお召しになるのか、沿道にどのくらいの人が集まるかなど、様々な注目が集まっている。

フジテレビなどFNN系列各局では、「令和の即位パレード  華やか御列生中継SP」と題して、その模様を100以上のカメラを駆使し、わかりやすく、完全生中継でお伝えするが、番組の中でも注目したいことの1つが、パレードを盛り上げる音楽だ。

12カ所に音楽隊  新たな行進曲「令和」はどんな曲?

今回のパレードには、宮内庁楽部、皇宮警察、陸海空の各自衛隊、東京・横浜・川崎・さいたま・千葉の各消防、海上保安庁、そして警視庁の各音楽隊が、コース上の12カ所に配置され、生演奏でパレードを盛り上げる予定だ。

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                           皇宮警察音楽隊の練習風景

その中で、出発地点となる皇居・宮殿の南車寄を担当するのが「宮内庁楽部」だ。
宮内庁楽部は雅楽を伝承する部署で、楽部の楽師は重要無形文化財保持者に認定されている。一方で、皇室行事の際には洋楽演奏も行っていて、国内の洋楽演奏団体のうちでも最も古い歴史を持つものの一つだ。

その宮内庁楽部が演奏する曲は、楽部の指揮者を務める北原幸男さんが新たに作曲し、今回のパレードで初めて披露される奉祝行進曲「令和」である。29年前の平成の即位の礼では、当時の宮内庁楽部の指揮者、近衛秀健さんが作曲した「平成」が演奏された。それを踏襲するように、今回「令和」が作曲された形だ。

パレード本番でも自ら演奏の指揮を執る北原さんは「いい意味での高揚感がある。今回新たな思いで、自然体でみなさまのお力になれるよう努めて参ります」と心境を語っている。
その新行進曲「令和」は、午後3時にパレードが皇居・宮殿南車寄を出発する、まさにその瞬間に初めて披露される。 果たしてどんな曲に仕上がったのか、両陛下のお姿とともに、大きな注目が集まりそうだ。

26年前のご成婚時の曲「新・祝典行進曲」の作者は「ぞうさん」も作曲

そして、皇居正門前から赤坂御所正門前までの間の10カ所では、「新・祝典行進曲」が演奏される。この曲は1993年の両陛下ご成婚に際して作られた行進曲だ。作曲したのは、1959年の上皇ご夫妻ご成婚を祝った「祝典行進曲」や、童謡「ぞうさん」の作曲者としても知られる團伊玖磨氏だ。

團氏は、この「新・祝典行進曲」に関して、華麗な部分と優美な部分を対比させたと語っている。そして天皇陛下がお好きだという冒頭部に続いてのゆるやかな部分は「雅子さまのメロディー」と呼んでいたという。

天皇陛下が「大変きれいな曲ですね」と感想を寄せられたというこの「新・祝典行進曲」をバックに、両陛下はパレードコースを進まれる。私たちも、両陛下の思い入れ深いこのメロディーを耳に刻みつけながら、パレードを見るのというのも一つの楽しみ方かもしれない。

パレード前には「世界に一つだけの花」や「海猿」も

そして、音楽隊が演奏するのは、このパレードが通過するときの曲だけではない。沿道の人々のために、パレードの車列が到着するまでの間、それぞれの音楽隊が自ら選んだ曲や得意曲、いわば「持ちネタ」の曲を演奏するのだ。

例えば、国会図書館前で演奏する海上保安庁の音楽隊は「海猿のテーマ」やB‘zの「オーシャン」など海に関わる曲を演奏する。

ほかに二重橋前交差点で演奏する陸上自衛隊東部方面音楽隊は「コバルトの空」と「君が代行進曲」、桜田門前で演奏する警視庁音楽隊は「ジャスト・ライダー」「エル・カピタン」、国会正門前で演奏する東京消防庁音楽隊…「ファイヤーマン・スピリット・マーチ」などといった選曲だ。

そして、首都圏の各消防の曲目はさらにバラエティー豊かで、都道府県会館前で演奏する千葉市消防音楽隊とさいたま市消防音楽隊の合同チームは、「世界に一つだけの花」や「上を向いて歩こう」など、赤坂御用地南門で演奏する横浜市消防音楽隊は「秋の童謡メドレー」「栄光の架け橋」など、青山一丁目交差点で演奏する川崎市消防は「明日があるさ」「ふるさと」などを演奏する予定だ。

いずれも、当日の状況により、必ずその曲を演奏するかはわからないとのことだが、本来は現地に行かないと聴けない貴重な演奏だけに、FNNの特別番組でも取り上げられればと検討している。

そして政府関係者によると、このパレードが来るまでに様々な曲を演奏するという方針の背景には、天皇陛下ご自身の「せっかく来て待っている人々に楽しんでもらいたい」とのご意向があったという。人々を退屈させないようにという天皇陛下の優しさ・お心遣いだとすれば、こうした演奏は私たちにとって、よりありがたく聴こえてくる。

各音楽隊の意気込みと「令和」作者の思い

また、日本中の注目が集まる世紀のパレードだけに、各音楽隊の意気込みとプレッシャーも相当なようで、かなりの練習を重ねて本番に臨んでいるという。

警視庁音楽隊は、「国を挙げての行事であり、最高の演奏ができるように練習を重ねてきました。奉祝者を含め『祝賀御列の儀』に関わる全ての人に喜んでもらえる演奏をしたいと思います」とコメントしている。

ちなみに警視庁音楽隊の今回の演奏メンバーには、29年前の平成の即位パレードでも演奏した隊員が2人いて、フルート・ピッコロ担当の男性(57歳)とチューバ担当の男性(53歳)だという。また警視庁音楽隊では、平成のパレードの時の女性隊員はゼロだったが、現在は11人の女性隊員が在籍しているというのも時代を感じさせる。

そして、パレードの終着点となる赤坂御所の御車寄で新行進曲「令和」を演奏するのは、皇宮警察音楽隊だ。渡辺浩二楽長は、通常の護衛などの仕事の合間を縫って懸命に練習してきたとして、次のように語った。

「重大な任務となるかと思います。まさに行事のフィナーレを飾る役割を担っておりますので日増しに緊張感も高まり、責任の重さも痛感しておりますが、みんなの願いを受け止めて演奏に表したいなと思っております。プレッシャーですね」

様々な思いが込められた音楽が演奏される中、盛大に行われる即位パレード「祝賀御列の儀」。どんな歴史に残る光景が紡ぎ出されるのか、注目したい。

(フジテレビ報道局 「即位祝賀パレード特番」制作班)

<FNN報道特別番組「令和の即位パレード 華やか御列生中継SP」
11月10日(日)午後2時35分~午後4時>
FNNプライムオンラインでも同時にLIVE配信します。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。