日本政府が韓国向けの輸出管理の強化を発表してから、7月1日で2年。韓国では過激な反日不買運動が展開され、日本製品が姿を消した。

その韓国でいま、日本からの輸入が急増している。

FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、韓国ソウル支局の川崎健太記者が伝える「“脱日本”を進めたら皮肉にも世界が“脱韓国”」

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反日不買運動から2年…韓国に異変

FNNソウル支局 川崎健太記者:
徴用工問題で日韓が対立する最中、日本政府が韓国向けの輸出管理を強化すると発表してから2021年7月1日で2年です。韓国側の反発は当時ものすごいものがありました。“脱日本”をスローガンに、日本のモノを買わない、売らない、行かないという“ノージャパン運動”が韓国全土で展開されたんです。家電とか自動車、お酒、衣類や化粧品。あらゆる日本製品が不買の標的となったわけです

FNNソウル支局 川崎健太記者:
ただあれから2年がたって、実は潮目が大きく変わってきました。確かに韓国の日本からの輸入はいったん落ち込んだんですけれども、最近は急増しているんですね。2021年1月から5月、日本からの輸入は2兆4000億円を超えています。前年同期比で2割も増えているんですね。この結果、韓国の貿易赤字(対日赤字)は1兆1100億円を超えて、結局前の日本依存の構図に戻りつつあるというわけなんですね

反日疲れで距離を置く人が出てきた

FNNソウル支局 川崎健太記者:
これはなぜか。そのキーワードがこちらです。反日疲れですね。確かに反日不買運動は韓国全土で展開されたんですが、不買運動を強要されているようで嫌だと、いわゆる同調圧力を毛嫌いする人も中にはいまして、最近はノージャパン運動から距離を置く人も出てきたんですね

FNNソウル支局 川崎健太記者:
具体例を見ていきますとやっぱりこれですね。日本製のビール。2年前は輸入が9割減ったんですけど、今は回復傾向になってます。あと不買サイトで、当時「nonojapan」というサイトが立ち上げられたんです。韓国人が自分が不買したい日本製品をサイトに書き込んでみんなで共有しようというもので、アクセスが殺到したんですよ。でもこれは2020年から書き込みが止まっています。あとは旅行ですね。2021年4月の世論調査で、韓国人の6割がコロナが収束したら日本に行きたいと答えているんですね。反日不買運動は熱しやすく冷めやすい若者たちの一時的なトレンドだった。これに過ぎなかったというわけなんですね

韓国企業の日本依存は変わらず

加藤綾子キャスター:
でも川崎さん、この一時的なトレンドが過ぎたからといって、全体の輸入額がこんなに増えるものなんですか?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
そこが大事なポイントなんです。というのも不買運動に参加していたのは消費者だけだったからです。どういうことかというと、韓国に駐在している日本の大手機械メーカーの社員さんに話を聞いたんですけれども、そもそも自分たちのような消費者向けじゃなくて法人向けの製品を扱う企業は、最初から不買の影響を受けなかったと。日本が競争力を持つ業界では、今も韓国の日本依存は変わらないと話してくれたんですね

FNNソウル支局 川崎健太記者:
これを裏付けるように、韓国の日本からの部品とか素材などの輸入なんですけど、2021年1月から5月で1兆5000億円を超えているんです。前年比で15%増えている。額としては、日本からの輸入額の半分以上に上るわけなんですよ。そもそも韓国は内需が小さいと言われてますから。貿易構造はこうなっています。素材とか部品を輸入して、これを加工して完成品として半導体などの形で輸出する。いわば、外国頼りですね

FNNソウル支局 川崎健太記者:
なので、日本からのこうした素材とか部品の輸入は欠かせないわけなんです。確かに輸出管理を受けてこの2年間、文在寅政権はこうした素材分野の国産化を進めて、ここでも脱日本を強調してきました。ですが韓国メディアは、やっぱり「日本が数十年かけて築いた技術に短期間で追いつくのは難しい」と結構冷静に受け止めているんです

不買運動の結果は世界からの投資激減

FNNソウル支局 川崎健太記者:
その輸出管理強化を受けて、逆に激減したものがあるんですよ。これが世界の韓国への投資なんですね。2020年の日本から韓国への投資額800億円を超えていて、額は大きいんですけど前年からは半減してるんですね。同じく、日本から韓国に新たに進出する企業も半減しているんです。この背景としては、やはり過激な不買運動で韓国で企業活動を行うのはリスクが高いと判断しているものと見られています

FNNソウル支局 川崎健太記者:
この“脱韓国”は日本だけじゃないんです。アメリカも韓国への投資2割減りました。EUからも韓国への投資3割減りました。確かにコロナの影響はあるんですけれども、韓国メディアは「企業の経営者を厳しく締め付ける法律が次々に韓国で制定されたので、投資を避ける要因になっているんじゃないか」と報道しているわけです

FNNソウル支局 川崎健太記者:
いずれにせよ。不買運動があった。これを受けて日本からの投資や企業が進出する数が減ったとなると、韓国での雇用が減ることを意味します。これは皮肉な話ですが、不買運動によって韓国が自国経済の首を絞める結果になったというわけなのです。輸出管理強化を受けて声高に脱日本を叫んできたわけですけれども、日本依存の構図は結局変わらず、逆にその反動として脱韓国が進んでいる。こうした現状です

不買運動がブーメランとなり返ってきた

スタジオではコメンテーターでジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
柳澤さん、韓国で不買運動起きてから2年になりますけれども、韓国の今の動きというのはどうご覧になりますか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
不買運動ってブーメランだったんだな…とね。経済の結び付きっていうのは一国だけでは成り立たないから、互いに相互依存しているということが改めてわかりますし、不買運動というのは一時的な熱情かもしれませんけど、逆に自分の首を絞める教訓として受け止める必要があるのかなということは、しっかり胸にしまったほうがいいような気がしますね

(「イット!」7月1日放送より)