北海道で暮らす働くママの1日を追いかける観察ドキュメント「ママドキュ」。
子育ても仕事も頑張りながら働くママさんたちのリアルな1日をのぞくと、限られた時間で家事・育児をこなす究極の時短ワザの連続でした。
今回の主役ママは三笠市に住むたまきさん(40)。長女のいちかちゃん(11)と長男のあきひとくん(7)、2人の子どもを育てながらネイリストとして働いています。
たまきさんのもうひとつの顔はハンター。
猟友会に所属し、シカやクマの有害駆除に取り組んでいます。
午前6時50分。朝食作り。
まとめて朝食セットが作れるプレートを活用。魚焼きグリルで3分、ほったらかしでOK。
「目玉焼きが楽にできるので、最近はこれに頼りきりです。きれいに丸い目玉焼きができるので、ちょっと料理がうまくなった気がする」とたまきさん。
オーブンではパンを焼きつつ、コンロが空くので、お味噌汁を温めて…と同時に調理できるのが魅力です。
午前7時に朝食。
その後、晩ごはんの準備。作り置きできるものは作っておきます。
冷蔵庫からあるものを取り出すと、ごく普通の朝食風景が一変。
「スライスしたクマ肉です。先月箱わなにかかったクマですね。三笠産のクマです」と、たまきさん。
なんと、たまきさん自ら撃ってさばいたクマ肉でした。
「(駆除したら)食肉処理施設が引き取ってくれるけど、クマはおいしいので自分たちで食べたい。解体は大変だけど、みんなで分けて食べる」と話してくれました。
この日の夕食は「クマじゃが」です。
クマの肉を炒め、タマネギやニンジン、ジャガイモと煮込んでいきます。
クマ肉は脂が甘くておいしいんですって。
水戻し不要の乾燥糸こんにゃくも投入。
小分けになっていて、袋から出してそのまま使えるから時短に。常温で2年保存できるのも魅力です。
20分ほど煮込めば「クマじゃが」の完成。
子どもたちを学校に送り出し、午前9時から仕事を開始。
自宅の一室で完全予約制のネイルサロンを営むたまきさん。子育てをしながら自宅で働けることに魅力を感じ、7年前に開業しました。
施術が終わったら、仕事の合間を縫って、シカの駆除に出発。
たまきさんがハンターになったのは4年前。当時飼っていた鳥たちのご飯用にシカ肉をとり始めたのがきっかけでした。
ところが始めてみると、その才能が開花。正確な射撃技術に加えて、クマやシカに遭遇する引きが人一倍。
「たまきさん、すごいと思いますよ、シンプルに。射撃技術も高いし、どれだけ努力しても運は身につかないけど、たまちゃんのクマ運は道内随一かもしれない」と話すのは、北海道猟友会三笠支部長の高崎梨徒さん(26)。
猟友会で活動する中で、地下による農作物被害の深刻な実態を知り、能力を生かして地域に貢献したいと考えるようになりました。
「農家から『シカがいる』と連絡くれるので、困っている人たちもいることを考えると、町周辺のシカの多さには何とかしなきゃいけないんじゃないかと思う」と話します。
取材中にも、シカに遭遇。
年間100頭以上のシカを捕獲。市から要請を受け、クマの見回りも行っています。
発砲しましたが、枝にはじかれて1発では仕留められず「一発じゃなかったので、だいぶ反省点があります。久々に1頭に対して撃ちました」と悔しそうなたまきさん。
この日は70キロ以上のオスを回収。
駆除したシカは食肉処理施設に持ち込んだり、自分たちで食べるためにさばくこともあるそう。
午後4時30分。疲れた体で帰宅すると…。
「お米を研いでおいてね」と頼まれていたのをすっかり忘れていた、いちかちゃん。
夕飯に間に合うように、急いで準備します。
息つく間もなく、宿題のチェック。
「まだ低学年のうちはいいですけど、高学年になってくるとだいぶ厳しいものがありますね」とたまきさん。
丸つけも一苦労です。
午後5時15分、再びネイルのお仕事。
ハンターとしての収入はごくわずか。シカ1頭の駆除で1万円、少ない月は2頭の時もあります。
それもガソリン代や弾代などでほとんど消えていくため、家計を支えるために再び働きます。
午後6時50分、仕事終了。
この日ネイルサロンに来たお客さんには、なんと、クマ肉のおまけつき!ハンターのたまきさんだからこその心配りです。
朝のうちに仕込んでおいたクマじゃがは、いい感じに火が通っています。
クマ肉のうま味たっぷり、甘い脂が溶け込んだ、ゴロゴロ野菜たっぷりの肉じゃがです。
山菜取りが趣味だというたまきさん、冷やっこにのせるのは、行者ニンニクを漬け込んだもの。
春に大量にとって、しょうゆとめんつゆの2パターンで作るのだそう。1年ほど保存が可能です。
午後7時40分に家族そろって夕食。
クマじゃがのお味は…
「うまい。ちょっと甘い」と長男のあきひとくん。「意外とクセがないので全然食べられます」とパパ、もとしさん(43)。
家族にも評判のようです。
子育てと仕事を両立しながら、有害鳥獣駆除の最前線に立つたまきさん。
ママの仕事かっこいいよね?と聞いてみると「そんな器用じゃないからムリ」と長女のいちかちゃん。
「いっつも心配。気をつけてほしい」とあきひとくん。
ハンターの高齢化が進む今、たまきさんを突き動かしているのは「自分がやらなければ」という使命感。
「趣味で始めたけれど、仕事としての責任も、有害鳥獣駆除に関わるようになってからは重たい。中途半端なことはできない。おじいちゃんたちも腕はすごい良いけど、体力的な問題があって、クマの見回りやりましょうとか言えない。これだけクマ駆除の担い手がいなかったら、自分がやらなきゃという気持ちにはなります」と話してくれました。