14年前、京都府亀岡市で娘の命を奪われた父親が新人刑務官に講義し、遺族の思いを訴えました。
堺市にある矯正研修所。ここは、近畿の刑務所や拘置所などで働く職員を育成する施設です。
27日、この施設に集まったのは新人の刑務官85人。研修の講師として呼ばれたのが中江美則さん(62)です。
【中江美則さん】「娘を殺されて月日がどんどん経っていくということがどんなにむごく苦しいことか。人生で最も苦しいことの記憶は消すことができません」
■14年前、突然娘の命を奪われた中江さん
中江さんは14年前、突然娘の命を奪われました。
2012年、京都府亀岡市で集団登校の列に車が突っ込み、児童2人と子どもに付き添っていた中江さんの長女・松村幸姫(ゆきひ)さん(当時26歳)が死亡、7人が重軽傷を負いました。
幸姫さんのお腹には子供がいました。
車を運転していたのは、当時18歳の元少年で、無免許のうえ友人と一晩中遊んだ末の居眠り運転でした。
しかし、裁判の中で、元少年が過去に無免許運転を繰り返していたことから「車を運転する技能はあった」と判断され、元少年は「過失」による事故として裁かれました。
そして、遺族の活動から無免許運転の厳罰化など法律の一部改正が実現しました。
■「刑務所は加害者を守るためにあるのかと複雑な気持ちに」元受刑者の更生を支援する活動で落胆することも
【中江美則さん】「命の重みに見合う罰則などありえません。だから罪を深く重く厳しくしないと被害者との釣り合いがあまりにも違いすぎます」
大切な家族を失った中江さんが見たのは受刑者の再犯率が高いという現実。危機感を抱いた中江さんは、8年前から元受刑者の更生を支援する活動を始めました。
犯罪歴がある人たちと一緒に通学路を見守る防犯カメラの設置や、京都刑務所で900人近い受刑者に語りかけたことも。
しかし、活動をする中で関わってきた元受刑者の一部からは、中江さんを落胆させる声も。
【中江美則さん】「『再犯に関わってまた戻りたい』というやつもいたり、『社会に出るのが不安で刑務所にいた方がいい』というやつもいました。
僕がかかわっている受刑者も犯罪者も『刑務所に帰りたいわ』と言うやつもおります。刑務所は加害者を守るためにあるのかと複雑な気持ちになってしまいます」
■「受刑者・加害者に被害者遺族の苦しみをリアルに想像してもらえる教育環境づくりを」
今後、受刑者と向き合い続ける新人刑務官に今、遺族として伝えたいことは。
【中江美則さん】「受刑者からしたら、事件のことは過去にしたいとか忘れたいかもしれません。被害者遺族は一生そんなことはできない苦しみの中にいる。
受刑者・加害者に被害者遺族のことをこの苦しみをリアルに想像してもらえる教育環境づくりをしてもらいたいと願っております。お願いします」
■受講した新人刑務官たちは「2度と犯罪を繰り返さないようにしようと思える処遇を」
受講した新人刑務官たちは…
【新人刑務官】「加害者の改善・更生も大切だけど被害者の方に対して償いの意思を見せられるような少し厳しさを持った矯正処遇・指導のやり方をしないといけないと思いました」
【新人刑務官】「すごく考えさせられるところがありました。加害者に前を向かせるだけじゃなくて、自分の過去ともしっかりと向き合って、2度と犯罪を繰り返さないようにしようと思える処遇をしていきたいと思いました」
「新たな被害者を生まないためには、加害者を生まないこと」と語る中江さん。
苦しみながらそう伝え続ける被害者家族を前に、社会全体で考えることが必要です。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年1月28日放送)