伝統の絹織物「仙台平」。仙台市出身の羽生結弦さんが、国民栄誉賞の授賞式で「仙台平」の袴を着たことでも話題となりました。

現在の織元はただ一軒で、去年、伝統の技は父から娘に受け継がれました。後継者となって初めて迎える新しい年。父の教えを胸に歩みを進めています。

上品な色合いの糸を幾重にも織りなし、伝統ある織物に仕上げていく。高級絹織物「仙台平」です。

その歴史は長く、江戸時代から400年続く伝統技術は当時、仙台藩主の手厚い庇護を受け、皇室、将軍家に献上されるうちに、上方で評判となり、「仙台平」と呼ばれるようになったそうです。

明治時代には6軒が織っていましたが、太平洋戦争の動乱などを経て、現在の織元は甲田家一軒のみ。

ファッションブランド「グッチ」がバッグの生地に「仙台平」を使用したことで、世界的にも話題となりました。

その技術を受け継いだのが、仙台平5代目の甲田悟子さん(61)です。

祖父の代から続く「合資会社仙台平」に大学卒業後に就職し、現在は日本で唯一の仙台平の織り手です。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「織るデザインはその時のイメージ。ただ単に色を頭の中に並べても、織物なので経糸が入ると感じが変わってくる。そこまで全部頭に入れてデザインしていく」

仙台平の特徴的な風合いは、繊細な「生糸」から生み出されています。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「これは経糸なんですけど、触ってみてください?」

西ノ入菜月アナウンサー
「いいんですか?失礼します。お!軽いですねとっても。思った以上でふわふわで、すこし触ってみるとしっとりしている…」

仙台平5代目 甲田悟子さん
「髪の毛よりも細ーい糸が見えますか?ねじって1本の糸に引きそろえるのではなくて、こういう細い糸を複数寄せて、糸をただ引きそろえるというのが、仙台平の風合いとかに現れてくる大事な糸の作り」

縦方向に通っている経糸だけでも一反で1万本使うといいます。神経を研ぎ澄ませ、淡々と織っていきます。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「その人の踏み加減、手加減がある。同じものでも違う人が織ると風合いが変わったり。父と私も違った感じで」

国の重要無形文化財「精好仙台平」保持者だった悟子さんの師匠、父の綏郎さん。去年10月、96歳で亡くなりました。

綏郎さんは悟子さんの祖父、榮佑さんとともに2代続けての人間国宝で、一子相伝の技術を大切に紡いできました。

仙台平4代目 甲田綏郎さん(当時73歳)
「仕事というのは本当に魂の受け継ぎですものね。だから親を見て、次の時代が育って行くんじゃないのかね」

これは、24年前、父綏郎さんから指導を受ける悟子さん。幼いころから憧れた仕事だったそうです。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「もう小さい時から、ずっとやりたくてやりたくて父の後を追っかけて、大学卒業して父に本気になって覚えるから、仙台平の仕事教えてくださいとお願いしたら、父が『分かった』と、持っている技術、全部教えるから覚えるようにと」

糸作りから行って、一反が完成するのに必要な工程はおよそ「30」。半年から1年かけて完成させるものもあり、気が遠くなるような作業に
最初は苦労したといいますが、無我夢中で習得に励んだそうです。

父、綏郎さんのもとでの修業は30年以上続きました。

最後の工程となる機織り作業。2、3週間で一気に織るということですが、どんなことを考えて作業しているのか聞くと。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「別に何も考えていない。気持ちにむらがありますと織りにも出てしまう。一定した感じで、気持ちで織っている」

それは父、綏郎さんの教えです。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「父がよく言っていたのは、やっぱり“平らな心”で織りなさいと。みんなやっぱりイライラしたり、色々感情の起伏が激しいですが、仕事に向き合うときは平らな穏やかな心で。あとは糸と仲良くなりなさいと。この糸の気持ちになって…大変な仕事です」

「平らな心」。それこそが師である父から伝えられた極意です。

ごまかしが利かない緻密で精巧な織物だからこそ、感情の波がないことが求められます。

一方で、柔らかい生糸のように時代の波に合わせる柔軟さも併せ持ち、袴だけでなく財布やネクタイなど手軽に利用できる商品を開発し、その可能性を広げています。

先代である父から全てを受け継いだ今年。伝統の重みを背負いながら胸に抱くのは、やはり受け継いだ極意です。

仙台平5代目 甲田悟子さん
「日本の大切な技術として守っていかないと、ということを肝に銘じている。もう頑張って、とにかくその先々代の意思を継いでやっていきたいという思いですね。仕事は気負うことなく、平らな心でやっていくっていう心境で。今までと変わらず進んでいきたいと思っています」

仙台放送
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