Yahoo!の社員食堂でキスフライ

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フジテレビからBuzzFeedに転職した福原伸治君から「昼飯食いませんか。Yahoo!の社員食堂うまいすよ」とメールが来たので行ってみた。バズはヤフーの資本が一部入っているのでオフィスがヤフー本社内にある。

その日のランチのキスフライ定食は確かに美味しくしかも安い。550円位だった。広くきれいな食堂で、たぶんAppleとかFacebookってこんな感じなんだろうな。行ったことないけど。

何より驚いたのは食べてる人達が全員若いのだ。白髪頭は僕と福原君くらい。だが思ったよりみんな地味。Appleにいそうな米西海岸系のかっこいいTシャツにジーンズみたいな人は一人もいない。

まだP巻きが存在するフジテレビ

フジテレビ社員食堂
フジテレビ社員食堂

そういえばフジの社食は、メガネを頭に乗せたオバサンとか、P巻き(プロデューサーがセーターを肩で巻く)のオヤジとか業界系のバブル人種がいて、見ていて飽きないが、こちらはまじめそうな若者ばかりだ。

しかしこの年齢差にはやはり愕然とした。テレビ局は爺さん婆さんばかりで若者しかいないヤフーにはもうかなわないのだろうか。

↑これがいわゆる“P巻き”(右)
↑これがいわゆる“P巻き”(右)

いやそうでもないだろう。
たとえば先日僕がフジテレビのプライムオンラインに投稿した「平成政治家ランキング。首位は天才小泉と実績安倍を抑えてあの人だった」というコラムは、ヤフー経由で250万人の人が読んでくれた。

記者が書いた記事をフジテレビは地上波テレビでなくネットで流し、それをヤフーがさらに流して250万人が読む。互いに利用し合うウインウインの関係だ。

ネットが「敵」だった昔

今から15年ほど前、小泉政権で総務相だった竹中平蔵氏が「放送とネットとの融合」などと言い出し、僕達は「そんなバカな」と猛反発した。ネットは敵だったのだ。結局テレビとネットは融合はしなかった。しかし15年たってみるともう互いに離れられない関係になっている。

記事を書く、コメントを考える立場で言うなら発表の場がテレビだけでなくネットにも広がったのはありがたいし、楽しい。ただネットはとっても直裁的だ。

自分の価値が可視化される不気味

テレビで僕がコメントしてもプロデューサーに「毎分視聴率はいくら」などとはいちいち言われないが、ネットのコラムは何歳くらいの人が何人、どのくらいの時間をかけて見たか、瞬時にわかってしまう。記事が稼いだ売上額までわかる。これは便利なのかそれとも怖いことなのか。自分の価値が可視化されるというのは少々気味が悪いが、まあそんな時代になったのだろう。

還暦の僕が新時代への適応にドキドキしているのに比べ、ウチの5歳の娘にとっては産まれた時からある現実だ。娘は毎朝グーグルホームに「ねえグーグー。今日の天気は」と聞き、保育園に来ていく服を決めているし、図書館ではパソコンで検索し、好きな「怪盗ゾロリ」シリーズを他の図書館から取り寄せている。これが今の5歳の少女のIT生活だ。5Gが普及したら彼女のライフスタイルはいったいどうなるのだろう。

5Gの時代へ

5Gは通信速度が速くなり、スマホで動画が普通に送れるようになる。実はこれで僕たちの生活は革命的に変わる。たとえばいちいち人に会いに行ったり、モノを受け取る必要がなくなる。スマホで「ウイっす」と言ってればよい。学校とか塾とかなくなるかもしれないし、遠隔医療ができるので病院もいらない。建物とか印刷物とかDVDとか、そういうモノがどんどんなくなってしまう世界。

なんだか自分の価値が可視化される以上に怖くなってきた。これ以上想像するのはやめといた方がいいかもしれない。でもそういう僕には想像不可能な世界を娘はたぶん普通に生きていくのだろう。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。