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プレスリリース配信元:アスタミューゼ株式会社

アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、メタンハイドレートに関する技術領域において、弊社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめました。




メタンハイドレート技術とは
メタンハイドレートとは、深海の海底下や永久凍土など、低温・高圧という特殊な環境で、メタンガスと水が結晶化してできた物質です。見た目は氷に似ていますが、火を近づけると燃えます。そのため「燃える氷」とも呼ばれます。

メタンハイドレートには体積比で約170倍のメタンガスがふくまれており、日本周辺の海域だけの推定埋蔵量でも、国内の年間天然ガス消費量の約100年分に相当するとされています。エネルギー調達を輸入に依存する日本にとって、沿岸域に存在するメタンハイドレートは、国産エネルギー資源として期待されています。

日本では、国の主導による研究開発が進められており、メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21、MH21-S)を中心に、2013年および2017年には南海トラフで世界初の海洋産出試験がおこなわれました。これにより、実際にメタンガスをとりだせることが確認されています(注1)。

注1:https://www.mh21japan.gr.jp/

一方、掘削や生産の過程でメタンガスが漏出するリスクがあります。メタンは強力な温室効果ガスです。安全性評価や漏出防止技術の確立が必要です。

このような背景から、メタンハイドレート開発では幅広い技術開発が進められています。
- 探査・評価技術:地震探査、電磁探査、掘削調査、貯留層評価など
- 掘削・生産技術:減圧法、熱刺激法、化学的促進法、坑井設計など
- 物性評価技術:結晶構造解析、熱物性測定、透水性評価など
- シミュレーション技術:多相流動解析、分解挙動予測、生産最適化など
- 環境評価技術:地質災害リスク評価、メタン放出モニタリングなど
- CO2地中貯留統合技術:CO2-CH₄置換法、長期安定性評価など
- 統合オペレーション:リアルタイム制御、AI制御、経済性評価など

本レポートでは、アスタミューゼ独自のデータベースを活用し、特許や論文、グラント(研究プロジェクト)における「メタンハイドレート」に関する技術動向を分析しました。
メタンハイドレート技術に関連する特許の動向
アスタミューゼの特許データベースから、2015年以降に公開されたメタンハイドレート関連の特許2,502件を抽出し、要約にふくまれるキーワードの推移を分析しました。これらを対象に、近年進展が見られる技術要素を特定する「未来推定」分析を実施しました。文献内のキーワード変遷を把握することで、すでにブームがすぎた技術や、今後注目をあつめると予測される技術を定量的に評価できます。

図1は、キーワードの年次推移です。成長率(growth)は、2015年以降の出現回数と2020年以降の出現回数の比であり、値が1に近いほど直近で注目されていることを意味します。

図1:メタンハイドレートに関連する特許の要旨にふくまれるキーワードの年次推移(2015年以降)

分析の結果、「depressurization(減圧法)」、「self-entering(自動制御)」、「three-horizontal(3本水平坑井)」、「gas-exploitation(ガス採掘)」といった、掘削・生産関連のキーワードが増加していることがわかります。深海のメタンハイドレートの採取は、井戸を掘って圧力を下げる「減圧法」が基本です。このとき、自動制御システムによりガスの産出量や地層の安定性を監視し、効率的で安全な操業を実現しています。また、複数の水平坑井を配置することで、広い範囲からガスを効率よく回収する設計が重要です。

さらに、「pore-scale(孔隙スケール)」、「pore-filling(孔隙充填型)」、「porosity(孔隙率)」、「saturations(飽和度)」、「archie(電気物性評価)」、「unconsolidated(未固結)」など、微細構造の理解に関するキーワードも増えています。メタンハイドレートは分解が進むと、地層の強度や透水性が急激に変化するという特徴があります。そのため、こうした微細スケールでの挙動を正確に理解しておかないと、生産量の予測精度が低下するだけでなく、盤沈下や斜面崩壊などのリスク管理が困難になります。

また、「avo(振幅-オフセット解析)」、「seismic(地震探査)」といった、地球物理探査に関するキーワードも増えています。AVO解析は、地震波の入射角度と反射強度の関係を解析し、地層内の含有物や構造を推定する技術です。これにより、ハイドレート層の存在や分布を非破壊的に推定できます。特に、BSR(海底疑似反射面)と呼ばれる地震波の反射面は、ハイドレート層とその下にあるガス層の境界を示す特徴的な信号であり、地震探査技術の進展によってハイドレート分布の高精度マッピングが可能になっています。

続いて、特許出願数の国別の動向です。図2は、2015年以降におけるメタンハイドレート関連特許の国ごとの出願件数推移です。特許データは出願から公開までタイムラグがあるため、直近の集計値については参考値としてあつかう必要があります。

図2:メタンハイドレートに関連する国別特許出願件数の年次推移(2015年以降)

国別では中国が最も多く、これに米国、WIPO(国際出願)、日本、韓国が続きます。中国は、中国石油大学、広州海洋地質調査局、国有企業CNOOCなどが中心となり、掘削技術から環境モニタリング技術まで、安定的なガス生産を見すえた幅広い分野で特許を出願しています。

一方、日本の出願件数は2018年以降減少傾向にあります。これは、2019年にMH21プロジェクトが終了し、次の段階である「MH21-S」へ移行したことで、研究の重点が新規発明の創出よりも、実証データ蓄積と商業化に向けた基盤構築を優先する方針へ転換したことを反映していると考えられます(注2)。

注2:https://www.mh21japan.gr.jp/mh21s_goal.html

近年の特許事例を紹介します。
- WO2025025963A1 “Field basic parameter characterization and test device for natural gas hydrate”
- - 出願人:Guangzhou Institute of Energy Conversion of CAS
- - 国:中華人民共和国
- - 公開年:2025年
- - 概要:天然ガスハイドレート現場における基礎物性パラメータの特性評価および試験をおこなうための統合装置を開発。現場で採取したハイドレートサンプルを圧力維持状態のまま移送し、非擾乱状態で浸透率試験および抵抗率測定を実施することを可能とする。これにより、天然環境下におけるハイドレートの物性を高精度に評価できる。
- US202218712037A “Hydrate operations system”
- - 出願人:Schlumberger Technology Corporation
- - 国:アメリカ合衆国
- - 公開年:2025年
- - 概要:CO2を貯留層に注入するさいのハイドレート形成挙動を予測する機械学習モデルを開発。貯留層シミュレーションの実行中に貯留層条件にもとづいてハイドレート情報を出力し、貯留層内に隔離されるCO2量をシミュレーションで生成する。

メタンハイドレート技術に関連する論文の動向
企業や研究機関が発表する論文は、研究開発段階にある技術を反映しており、特許とくらべると社会実装までに時間を要する、中長期的な技術動向をしめします。

今回の分析では、特許分析と同様に、「メタンハイドレート」およびその関連技術に関する特徴的なキーワードをふくむ論文3,125件を抽出しました。

図3は、2015年以降に発表された論文の要旨にふくまれる特徴的なキーワードの年次推移です。

図3:メタンハイドレートに関連する論文の要旨にふくまれるキーワードの年次推移(2015年以降)

分析の結果、「pore-hydrate(孔隙内水和物)」、「grain-cementing(粒子固結型)」、「hydrate-bound(水和物結合メタン)」、「hydrate-containing(水和物含有堆積物)」、「hydrate-water(水和物-水相互作用)」、「pore-habit(孔隙内分布形態)」、「self-preservation(自己保存効果)」など、メタンハイドレートの微視的構造や物性に関するキーワードが多く見られます。こうしたミクロスケールでの構造理解が進むことで、メタンハイドレートの掘削時における海底堆積物の崩壊挙動やガス生産量を、より正確に予測できるようになり、効率的で安全な採掘技術の開発につながることが期待されています。

特許分析と同様に、論文においても「parallel-horizontal-well(平行水平坑井)」、「wellbore(坑井安定性)」、「hot-water-injection(温水注入法)」、「mining(海底採掘)」、「gas-exploitation(資源開発)」、「gas-leakage(ガス漏出)」などの掘削・生産関連のキーワードが確認されました。現在、メタンハイドレートを分解してガスを回収する手法のなかで、もっとも実績があるのは「減圧法」です。しかし、減圧によるハイドレートの分解は吸熱反応をともなうため、周囲の地層温度が低下し、ガスの生産効率が下がるという課題があります。このため近年では、減圧法単体ではなく温水を注入して地層温度を維持する「温水注入法」などの複合技術が研究されており、生産性の向上がはかられています。また、「gas-leakage(ガス漏出)」というキーワードの増加からもわかるように、掘削中のメタン漏出リスクを低減するための高精度掘削制御技術や安全管理技術の高度化も進んでいます。

さらに、「sub-permafrost(永久凍土下)」、「cryolithozone(凍結圏地層)」、「bghsz(底部ガスハイドレート安定帯)」といったキーワードの増加も見られます。これらは、北極圏や高緯度地域における陸域メタンハイドレート資源の研究が活発化していることをしめしています。永久凍土下に存在するハイドレートは、海洋よりも温度・圧力の制御が容易で、比較的低コストで実験できる利点があります。そのため、長期的なガス産出試験を実施しやすく、将来的な商業化を見すえた「実証実験場」として注目されています。実際に、日本の独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がアラスカ永久凍土地域での長期産出試験を実施し、10か月以上にわたるガス生産に成功したことを報告しています(注3)。

注3:https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00092.html

このような成果は、陸域メタンハイドレート資源開発の現実的可能性を示すものとして、国際的にも注目されています。

続いて、論文発表件数の国別動向が図4です。

図4:メタンハイドレートに関連する論文の国別発表件数の年次推移(2015年以降)

中国の論文発表数が2015年以降に急増し、2023年にはピークをむかえて全体の約半数を占めるまでになりました。米国と日本は安定して論文を発表し続けており、分野の基礎研究を継続的にささえています。

各国の研究動向には明確な特徴が見られます。
- 中国は、掘削技術や地層破砕技術にくわえ、中国特有の泥質・シルト質貯留層に対応するなど、商業化を意識した実用技術の開発に注力しています。
- 米国は、基礎科学と環境保全の両立を重視し、アラスカ沖やノルウェー沖での環境影響評価や、CO2-CH₄置換法を用いたメタン回収と二酸化炭素貯留の統合技術の研究を推進しています。
- 日本では、2013年および2017年に実施された海洋産出試験を踏まえ、シミュレーションと実測値の整合性(ヒストリーマッチング)や、止水技術の開発など、実証段階であきらかになった技術課題の解決にとりくんでいます。

このように、各国はそれぞれ異なる研究アプローチながら、メタンハイドレート開発の実用化と環境適合性の両立を目ざしています。

以下は近年の論文事例です。
- Hydrate Nucleation in Water Nanodroplets: Key Factors and Molecular Mechanisms
- - 雑誌名:Energy & Fuels
- - 出版年:2023年
- - DOI: https://doi.org/10.1021/acs.energyfuels.2c03724
- - 概要:分子動力学シミュレーションにより、海底堆積物の細孔内や石油パイプラインのエマルション環境を模擬したナノスケール水滴中でのガスハイドレート核生成メカニズムを解明。メタンハイドレートの自然生成過程の理解にくわえ、CO2-CH₄置換法におけるCO2ハイドレート形成速度の予測、パイプラインでのハイドレートプラグ抑制、CO2地下貯留プロセスの効率的設計などへの応用が期待される。
- Microstructural Study on Dissolution of Natural Methane Hydrate by Multicontrast and Multiscale X-ray Computed Tomography
- - 雑誌名:The Journal of Physical Chemistry C
- - 出版年:2023年
- - DOI:https://doi.org/10.1021/acs.jpcc.3c06655
- - 概要:マルチコントラスト・マルチスケールX線CTを用いて、天然メタンハイドレートの溶解過程におけるマイクロ構造の変化を可視化。海底ハイドレート開発時のガス生産挙動の予測精度向上および貯留層モデリングの高度化に貢献する。

(以降、メタンハイドレート技術に関するグラントの動向分析、および全体のまとめについては、弊社コーポレートサイトの該当ページでご確認ください)

著者:アスタミューゼ株式会社 金子 亮 博士(農学)
さらなる分析は……
アスタミューゼでは「メタンハイドレート」に関する技術に限らず、様々な先端技術/先進領域における分析を日々おこない、さまざまな企業や投資家にご提供しております。

本レポートでは分析結果の一部を公表しました。分析にもちいるデータソースとしては、最新の政府動向から先端的な研究動向を掴むための各国の研究開発グラントデータをはじめ、最新のビジネスモデルを把握するためのスタートアップ/ベンチャーデータ、そういった最新トレンドを裏付けるための特許/論文データなどがあります。

それら分析結果にもとづき、さまざまな時間軸とプレイヤーの視点から俯瞰的・複合的に組合せて深掘った分析をすることで、R&D戦略、M&A戦略、事業戦略を構築するために必要な、精度の高い中長期の将来予測や、それが自社にもたらす機会と脅威をバックキャストで把握する事が可能です。

また、各領域/テーマ単位で、技術単位や課題/価値単位の分析だけではなく、企業レベルでのプレイヤー分析、さらに具体的かつ現場で活用しやすいアウトプットとしてイノベータとしてのキーパーソン/Key Opinion Leader(KOL)をグローバルで分析・探索することも可能です。ご興味、関心を持っていただいたかたは、お問い合わせ下さい。
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