2022年に安倍晋三元総理を銃撃し殺害した罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判は事件から3年以上たった2025年10月に始まり、ついにきょう=1月21日に判決が言い渡される。
山上被告は起訴内容について「全て事実です。間違いありません」と認め、弁護側は銃刀法違反と武器等製造法違反の罪について成立を争っている。
そしてもう1つ争点となっているのが、「山上被告にどのような刑を科すべきか」ということだ。
弁護側は母親が高額な献金を繰り返すなどした旧統一教会への信仰が事件につながったとする「宗教被害」を訴え、山上被告本人はもちろんのこと、母親や妹が法廷で、その信仰とそれによる”苦境”を語った。
一方、検察側は「不遇な生い立ちがあったとしても被害者とは無関係」と主張し、無期懲役を求刑している。
裁判員たちはどのような判断を下すのだろうか。
ここでは語られた「苦境」についてみていく。
■母親が語った信仰「食事は3日分作って冷蔵庫に入れ」子供置いて韓国に
母親は長男(=山上被告の兄)が病気に苦しんでいた1991年7月、自宅に旧統一教会の女性信者が訪ねてきたことがきっかけで入信し、1年足らずの間に自殺した夫(山上被告の父)の保険金を元手に5000万円を献金したそうだ。
そして「献金することで教団側にちやほやされ、有頂天になった」(証人尋問の内容より)母親は、信仰にのめりこんでいった。
当時14歳の山上被告、1歳上の兄、まだ10歳だった妹を置いて、1人で教団行事に参加するため、韓国に渡ったこともあると話した。
<証人尋問より>
(Q.世話は誰が?)
【山上被告の母親】「父(山上被告の祖父)がしてくれていました」
(Q.前もって言ったのか?)
【山上被告の母親】「そう思います。食事は3日分作って冷蔵庫に入れて行きました」
そして母親は自身を「加害者」と表現したこともあった。
【山上被告の母親】「私が加害者だと思っています。献金を黙ってしていたし、子供たちを置いてほったらかしでやってきたのも事実。教会に尽くしたら(家が)よくなると思ったので。それを利用したのは教会だと思う」
■信仰に反発する祖父に家から追い出され 妹「徹也と児童養護施設にでも行けば」
同じく証人尋問に出廷した山上被告の妹は、母親と信仰を巡って対立していた祖父に「出ていけ」と家から追い出されたこともあったと証言した。
【山上被告の妹】「(祖父から)『出ていけ』と追い出され、家の隣の駐車場に立っていたことがあった。
部活帰りの徹也が帰ってきて家に入ろうとしたとき、おじいさんは『出ていけ』と徹也にも言い、徹也は出ていってしまった。
私と徹也の2人だけでも、あのとき児童養護施設にでも行けばよかったと後悔している」
■語られた“困窮”「金の無心でしがみつく母を50メートルぐらい引きずって…」
そして経済的な苦境は相当なものだったということを証言した。
【山上被告の妹】「破産前、クレジットカード会社から督促状が届いたり、電話がかかってきたり。 私の、銀行口座の残高が、ゼロになったりしていました。私のお年玉をためたものでした。
母が連絡するのは私が出て行ってから金の無心のみ。私の腕にしがみついて私が50メートルぐらい母を引きずって歩いて行って恥ずかしくてみじめでつらかったです。
私に関心ないくせに、その時だけは『払え』と鬼の形相。その時だけ母として偉そうに言うのに腹が立ちます。
その時私の母ではないと思った。母のふりをして私に言ってきている。(泣きながら)私はつきはなせなかった」
■母親の信仰とそれに反対していた兄の自殺きっかけに…
そしてこうした母親の信仰とそれに反対していた兄の自殺が、山上被告が旧統一教会への恨みを募らせ、幹部の襲撃を決意するきっかけにもなっていったという。
山上被告の兄は母親の信仰に反対していて、暴力を振るっていたこともあったという。
その兄が自殺した際、家を出ていた山上被告は「自分の責任」と受け止めたというが、母親はそうではなかったようだ。
兄の通夜では旧統一教会式の儀式が行われ、山上被告は「やめてくれ」と訴えたものの、そのまま続けられたうえ、その後に山上被告が母親と兄の死について話したところ、次のようなことが語られたという。
■母「献金したことで兄も天国で幸せに暮らすことに」兄の死で山上被告は…
<被告人質問より>
【山上被告】母と話して統一教会と兄のことを突っ込んで話した。兄が亡くなったあと、母は『統一教会に献金をしたことで兄も天国で幸せに暮らすことになった』と。
それについて、母が献金をしていたおかげで、『兄の死についてはこれでいいんだ』と思っていると感じた。
自分は兄が死んだことに悔やんで、責任を感じていた。母は信仰で乗り越えた。自分とは全く違う方向にいる」
この会話の後、山上被告は韓鶴子総裁やその家族など、旧統一教会の幹部の襲撃を考えるようになり、それがなかなか実現できない中で、安倍元総理を襲撃するという事件に発展したという。
こうした「苦境」も踏まえ、弁護側は「最も重くとも懲役20年までにとどめるべき」と主張している。
判決はきょう=21日午後、言い渡される。