死刑の手法である絞首刑が憲法で禁じられた残虐な刑罰にあたるのかどうか。この絞首刑をめぐって違法性を問う裁判の判決が16日、大阪地裁で言い渡されます。
関西テレビは独自に死刑執行に立ち会った元刑務官を取材。
神戸で弁護士をしている野口善國さんは、およそ50年前に4年間東京拘置所で刑務官として働き、そのとき死刑執行に立ち会った人物です。
【元刑務官・野口善國弁護士】「落とし穴みたいな、そこにドーンと落ちていくんですけど。心臓がボコボコってこう動いてるのか見えるわけです。忘れられない記憶ですね」
■絞首刑は「残虐」か 国側は「残虐ではない」と主張
2022年、大阪拘置所に拘置されている死刑囚3人が、国に対して絞首刑は残虐で違法だとして執行差し止めなどを求めて提訴していました。
【原告代理人会見】「首が離断してしまう、切れてしまう可能性であるとか、あるいは瞬時に意識を失うのではなく、数秒から数十秒にわたって意識が続き、その間著しい苦痛を感じるリスクが残存している」
こう主張し、公務員による拷問及び残虐な刑罰を禁止する憲法36条だけでなく、国際条約などに違反すると主張する弁護団。
一方、国側はこれまでの審理で刑の執行は1873年に明治政府が斬首刑などから絞首刑に変える「太政官布告(だじょうかんふこく)」が根拠になっていて、基本構造は当時から変わっていないと主張。
最高裁が1948年に「多数の文化国家と同様に刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべき」として死刑制度を合憲と判断したこと。さらに1955年に絞首刑を合憲と判断したことなどから「残虐ではない」と主張しています。
■「はっきり言えば“殺してる”気持ちがすごくある」死刑執行の瞬間に立ち会った元刑務官
野口弁護士は刑務官だったおよそ50年前死刑囚を連行するように命じられ、死刑執行の瞬間に立ち会いました。
【元刑務官・野口善國弁護士】「別室のところに3人看守が立っているんですけど、一斉に課長の合図でレバーを引くんですけど、落とし穴みたいになっている。そこにドーンと落ちていくんですけど。当然激しく揺れますよね。だから思わず警備隊員と僕が3人くらいで綱をもっていた」
さらに、野口弁護士は当時の様子を詳細に語ります。
【元刑務官・野口善國弁護士】「上からこう見てると、ここの胸のところの心臓がボコボコってこう動いてるのが見えるわけです。何かやっぱり人の命を奪ってるというのか、はっきり言えば殺してるっていうんですかね。そういう気持ちがやっぱりすごくある」
■2010年に初めてメディアに公開された「刑場」
政府は2010年に当時の千葉法務大臣が死刑執行に立ち会ったことを明かし、死刑が執行される東京拘置所の「刑場(けいじょう)」の公開を指示。
【千葉法相(2010年当時)】「死刑制度についての国民的議論、一つの材料になるのではと」
裁判員裁判の実施にあたり国民的議論を喚起するために初めてメディアに公開されて以降、大阪など他の刑場は公開されていません。
■世界では死刑や絞首刑が世界で廃止される流れに
世界の死刑制度に詳しい法律家は、死刑や絞首刑が世界で廃止される流れにあると指摘しています。
【甲南大学法学部・笹倉香奈教授】「現在では全世界のうち、7割以上の国では死刑制度を廃止しているということになっています。でも、ヨーロッパなどでは全面的に廃止しています」
死刑を行っているアメリカの州でも絞首刑から別の方法に変わっているといいます。
【甲南大学法学部・笹倉香奈教授】「最高裁がこれまでに死刑は合憲であると、あるいは絞首刑というのは残虐な刑罰に当たらないというふうに判断したのは戦後初期の頃。
その後、世界的に死刑というのが廃止されていくというような状況の中で、いまだに80年前の判断が生きてるというのは、かなり異常な状況ではあるかなと思いますね」
■「死刑はどんなものか知らされないで、合憲かどうか判断するのはどうなんだろう」元刑務官の野口弁護士
(Q:絞首刑が今残っていることについてどう思われますか?)
【元刑務官・野口善國弁護士】「それは個人的な意見なのでね、ちょっと刑務官をしてきた人間としてはちょっと言いにくいというか、難しいですねそれを答えるのは」
【元刑務官・野口善國弁護士】「死刑ってのはどんなもので、死刑囚ってのは毎日どんなふうに暮らしてるのか。そういうことが国民に知らされないで、国民が死刑が合憲かどうかって判断するっていうのはどうなんだろうっていうふうに思って」
誰もが裁判員として死刑を決める立場になる可能性がある中、私たちは死刑制度と向き合う必要があります。
■「懲役刑から拘禁刑に。死刑のあり方再考の余地があるのでは」菊地弁護士
現在、死刑制度があるのは先進国を中心としたOECD加盟38カ国のうち、日本、韓国、アメリカの3カ国です。日本では去年1人に死刑が執行された一方で、韓国では1998年から死刑の執行はありません。
アメリカでの死刑は、100年以上前は絞首刑が主流で、その後電気椅子に変わり、現在では薬物注射が主流で、絞首刑は過去のものだとされています。
菊地幸夫弁護士は、「死刑のあり方、執行の仕方も再考の余地があるのでは」と述べました。
【菊地幸夫弁護士】「このスタジオの天井ぐらいから首に縄をつけた人間をその自重を使ってドーンと落とし、絶命させるんですけど、アメリカなどでは薬物注射が主流。(絞首刑と)比較したら天井から落とす絞首刑が残虐、これは当たり前のことなんですよね。
最近、懲役刑から拘禁刑は変わりました。悪いことをしたから“罰”という考え方から更生させるために“罰”を変えようという思想の表れですね。その延長で考えると、死刑のあり方、執行の仕方も再考の余地があるのでは」
(関西テレビ「newsランナー」 2026年1月15日放送)