特集「シリーズ岐路に立つ書店」第8弾です。
創業100年を超える呉市の老舗書店が存続していくため店の中から本をなくしました。
一体どういうことなんでしょうか!


広島県呉市中心部の「れんがどおり」にある「町の本屋さん」中国堂書店。

■呉の人たちに愛されてきた町の本屋さん

【本を読む子ども】
「(Q:難しい本を読むね)いつもじいじが読んでいる本だから。この本は持っていないけど」

創業から100年以上、子どもから大人まで呉の人たちに愛されてきました。

【訪れた人は】
「気になった雑誌とか見たくて、直接手に取って本を見られるのは、すごく自分としてはありがたいというのがあるので」

■何度も困難から立ちあがってきた

商店街の一画に店を構えてきた「中国堂書店」かつて、燃え移った火事で存続の危機に立たされたこともありました。

【中国堂書店・湊義彦さん(71)】
「全焼よ、5軒全焼。膨張して本が取れなかった。燃えてはいなかったけど、水で全部やられた」

3代目の湊義彦さんは何度も困難から立ちあがり、去年11月、また新たな壁を乗り超えようとしていました。

■「書店なのに、本を置かない」選択

【中国堂書店・3代目 湊義彦さん】
「時代にマッチしないというか…営業形態を変えて販売をしようと思いきったわけなんです。店頭の商品だけを置かないということになります」

それは「書店なのに、本を置かない」選択…インターネットの台頭や人口減少、物価高を背景に30年ほど前から、「客を待つ」本の売り方は時代にそぐわなくなってきたと言います。

【中国堂書店・湊義彦さん】
「(売り上げの割合は)外商がざっくり言いますと8、店売が2くらいの感じかな。利幅も薄いですし、薄利多売じゃないですけど、そういうところで寂しいのは寂しいんですけど、どこかで区切りをつけないといけないと思ったので」

中国堂書店はこれから本を並べず営業し、配達と注文に特化する店に生まれ変わろうとしていました。
常連客にこのスタイルが浸透するかは実際にやってみないと分かりません。

【購入客は】
「週刊誌ももう置かないようになるよね」
【中国堂書店・湊義彦さんの妻 裕子さん(71)】
「そうですね」
【購入客は】
「本屋さんがなくなるのはすごく寂しい」

【中国堂書店・湊義彦さんの妻 裕子さん】
「『ご苦労様でした』と言われたら、店がなくなると思っているんじゃないかと(客に)もう1回説明を始めるんですよ」

■「店売り」の最終日 こみあげてくるものが…

2025年11月30日

「店売り」の最終日、シャッターをおろす湊さんには…やはり、こみあげてくるものがありました。

【中国堂書店・湊義彦さん】
「やり切ったという思いはあります。悔いはないですから、よかったです。ありがとう」

寂しさの余韻に浸る間もなく、その日の夜から、親子3人で本を取次業者に返品するための箱詰め作業に入りました。

【中国堂書店・4代目 湊允秀さん(39)】
「店での販売がなくなるのは残念ですし、申し訳ない気持ちもあるんですけど、明日からは違う形で自分たちが思い描く形で運営していけたらなというのがあるので」

週刊誌以外の多くはまた全国のどこかで商品になります。

【中国堂書店・湊義彦さん】
「きれいなままの商品で返したいですからね。重たい!お饅頭でも入っとんかの」

■潰れたんじゃと言うので…

先月上旬、中国堂書店の店内はガランとしていました。

【通行人】
「何にもなくなって…」
【中国堂書店・湊義彦さん】
「商品は置かないんですよ」

空っぽになった本棚を見て、つい「完全閉店」と勘違いするのも無理はありません。
「営業は続ける」と1人1人に説明します。

【中国堂書店・湊允秀さん】
「通りすがりの人が閉店、辞めたんじゃとか、潰れたんじゃと言うので、それがちょっと嫌だなと思ってやっぱり…一応やっているので、分かりやすくしようかなと思って」

店の入り口に「営業中」の張り紙をすることにしました。

【中国堂書店・湊允秀さん】
「これで分からんと言われたら難しいです」
【通行人】
「本屋さんなくなりましたよね」
【中国堂書店・湊允秀さん】
「営業形態を変えたんですよ。お店での在庫販売をやめまして」

なかなか思うように伝わりません。

返品する本の引き渡し作業

書店から本がなくなりました。やってみないと分からないことの連続ですが、後ろを振り返る余裕はありません。

■本を必要としてくれる人がいる限り…

【中国堂書店・湊允秀さん】
「(配達用などの)新しいのが、どんどん月曜から土曜まで入ってくるので」
【中国堂書店・湊義彦さん】
「嘆いていてもしょうがないもんな」
【中国堂書店・妻 裕子さん】
「嘆くのはね、その前に散々嘆いとるからね」

中国堂書店では定期購入をしてくれる人の配達先が呉市内を中心に毎週100軒以上あります。

自転車での配達

1人ではまわりきれないため、親子でほぼ毎日手分けをして配達に出かけます。

【中国堂書店・湊義彦さん】
「どうも!」
【配達先の美容室】
「いつもありがとうございます。(書店は)大切、ウチら美容院ですからね」

本は定価販売で配達は無料で行っています。
一冊ずつの手渡しで呉の人たちに喜んでもらえたと実感できる積み重ねが店を続けるパワーの源です。

【配達先の人は】
「毎朝、お世話になっていて…温かいし、なくてはならない存在です」
「絶対に必要です。こうやって来てもらえて安心もあるし、ありがたい、ばっかりです」

本を必要としてくれる人がいる限り書店の火を消すわけにはいきません。
経営の「集中と選択」を多くの人に分かってもらうには、まだ時間がかかりそうですが、いつか「決断してよかった」と言える日が来ると信じています。


【中国堂書店・湊允秀さん】
「真心を込めて届けていきたいですし、自分たちができる最大限のやり方というか、模索しながらにはなるんですけど、一生懸命頑張っていきたいと思います」

【中国堂書店・湊義彦さん】
「足腰が動くまで頑張りますので、よろしくお願いします」

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。