「知っておきたい!気象防災のキホン」、気象予報士と防災士の資格を持つ伊藤瞳アナウンサーが、防災士の視点から「救命処置」についてお伝えします。
突然倒れた人の命を救う上で最も重要なのは実は、近くに居合わせた一般の市民です。
心肺停止状態の人を発見した一般市民が救急隊が到着するまでに行う応急手当では、2つの処置が重要とされます。
全身の臓器、特に脳へ血液を送る「胸骨圧迫」。
けいれんした心臓に電気ショックを与え、心臓の動きを正常に戻すための「AED」。
救急車が到着するまでにこうした救命処置があるかないかが生死に大きく関わるといわれています。
日本AED財団常務理事で救急と循環器の専門医は、その重要性をこう説明します。
東京慈恵会医科大学 武田聡教授
「救急隊がくるのは全国平均で10分。救命率は1分経つごとに7~10パーセントずつ下がると言われる。もし10分間何もせずに待ってしまうと、ほとんど救命率0になる」
突然心停止した人の1カ月後の生存率です。
119番通報以外に応急の救命処置をされなかった場合、1カ月後の生存率はおよそ7%ですが、胸骨圧迫をされた人は倍近くのおよそ15%、AEDを使われた人の生存率は50%を超えています。
一方で、実際に処置が行われたのは胸骨圧迫がおよそ6割、AEDの使用はわずか5%でした。
武田教授は心停止の際の身体症状にも注意してほしいと指摘します。
東京慈恵会医科大学 武田聡教授
「(心停止のときは)反応がない、呼吸がない、もしくは呼吸があるか分からない。「死戦期呼吸」と言いますが、紛らわしいようなしゃくりあげるような変な動きをしている場合もある」
「死戦期呼吸」とは、途切れ途切れながら呼吸をしているようにも見えますが、肺には空気がほとんど送られていない状態。呼吸や心臓の動きがあると見誤ってしまうことが救命処置の遅れにつながります。
武田教授は結果的に心停止ではなかったとしても、胸骨圧迫やAEDの使用が倒れた人にとってマイナスになることはないと話します。
東京慈恵会医科大 武田聡教授
「迷ったら行動していただくのが非常に重要」
救命処置が行われず救われなかった命があります。
桐田明日香さん。当時小学6年生でした。
2011年、埼玉県の小学校で駅伝の課外活動中に突然倒れ、翌日、亡くなりました。
明日香さんは、倒れた直後けいれんや死戦期呼吸がありましたが、教師はこれを心臓が動いている証拠と判断してしまい、救命処置が行われませんでした。
明日香さんの母・寿子さんは、救命処置が行われるべきだったと振り返ります。
桐田寿子さん
「倒れた明日香にAEDを使う行動が必要だったと私は思っている」
寿子さんは二度とこのようなことが起きないようにと、事故の翌年の2012年、さいたま市教育委員会と共に学校での救命マニュアル「ASUKAモデル」を作成しました。
そこには赤字でこう書かれています。
「死戦期呼吸やけいれんの判断ができない場合や自信がもてない場合は、胸骨圧迫とAEDの使用を開始します」
「分からないときは空振りを恐れずに行動してほしい」という寿子さんの願いが込もっています。
桐田寿子さん
「大好きという言葉が最後だった。倒れた明日香が私にとって何よりも大切な人だったように、目の前で倒れた人は誰かにとって大切な人です。命のバトンをみんなで協力して救急隊に繋いでほしいと明日香と一緒に心から願っています」
仙台市消防局は救命処置の普及活動を行っています。
仙台市消防局宮城野消防署 消防指令長 千田真一さん
「偶然居合わせた人の勇気ある一歩が大きく影響する」
生徒たちは救命処置の大切さを学んだ後、訓練用の人形で処置を体験しました。
体験した生徒
「一回一回強く押すのですごく力が必要です」
「いざやったら緊張してできないので、今体験できて良かった」
そして代表のグループが一連の流れを実践。校内にあるAEDを取りに行きますが、どこにあるのか分かりません。
実際には1分ほどで見つかりましたが、1秒を争う場面で時間のロスは深刻です。
体験した生徒
「最初からどこにあるか知っていればもっと早く対応できた」
仙台市消防局宮城野消防署 消防指令長 千田真一さん
「AEDって景色になって気にしてなかったけれど、万一に備えて自分の学校のAEDはどこにあるか事前に知っておくのが大切」
生徒たちが得たものは大きかったようです。
体験した生徒
「自分はできる自信が身についたので、自ら率先して助けたい」
「そういう場面に遭遇したら、自分も人を救ってみたい」
仙台市消防局には救命処置をガイドするシステムもあります。
「LiveView119」といい、消防指令センターとスマートフォンのビデオ通話でつなぎ現場の状況を見せて指示を受けながら応急処置ができます。
仙台市消防局 消防指令・救急救命士 金須創さん
「リズムはこのままで大丈夫です。もっと強く押してください」
方法が分からない場合には手本の映像も示されます。
県内でこうしたシステムは5つの消防が導入しています。
仙台市ではこれまでおよそ200件の利用があり、救命につながったケースもあったということです。
仙台市消防局 消防指令・救急救命士 金須創さん
「迷ったらすぐ行動が救命には一番大事なこと。LiveView119を使うと、まず取り掛かっていただいた「勇気」を後押しすることができると思う」
迷ったらすぐ行動。そのシンプルな勇気が命をつなぎとめます。
今回のポイントは、「迷ったらすぐ行動」。
仮に心停止ではなくても、胸骨圧迫やAEDによる救命処置を行っても問題ありません。「迷ったらすぐ行動」しましょう。
とは言ってもいざ倒れている人を前にしたら躊躇してしまいますよね。
そのようなときはまず119番通報をして「ライブビュー119」というシステムを使えば、スマホで指示を受けられ、自信を持って救命処置ができると思います。迷った時に思い出すと行動につながるツールです。