「自ら選んでグーグルを使用」と主張

アメリカ司法省に提訴されたことを受け、IT大手・グーグルが反論した。

司法省は提訴の理由について、「グーグルがモバイル端末やパソコンで検索エンジンの初期設定になるよう契約を結ぶなど、ほかの検索エンジンとの競争を妨害している」としている。

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これに対し、グーグル側は声明で「提訴には重大な欠陥がある」と反論した。

声明では、「利用者は強制されたからではなく、自ら選んでグーグルを使っている」上、「利用者は検索エンジンだけで情報などを探しているのではなく、今やSNSやショッピングサイトなど手段は数多くある」と主張している。

アメリカ司法省は2019年から巨大IT企業を対象に調査を進めていて、「調査はこれで終わりではない」として、ほかの企業への法的手段の可能性も示唆している。

消費者への影響にも言及

ここで、グーグルの反論のポイントを整理する。

人々はグーグルを「選んで」使っている:ほかのソフトがいいのであれば変更するのは簡単だとしている

情報や商品を探す手段は数多くある:今ではツイッターやインスタグラム、アマゾンもある

・この訴訟によって、質の低い検索サービスを人為的に押し上げ、電話料金を値上げするということになれば、結果的に消費者が利用したいサービスが手に入れづらくなる

このニュースについて、エコノミストで企業ファイナンスを研究している崔真淑さんに話を聞いた。

規制が消費者の利益になるかは不明

三田友梨佳キャスター:
グーグルとアメリカ司法省の対立、崔さんはどうご覧になっていますか?

エコノミスト・崔真淑さん:
アメリカの司法省は、グーグルのビジネスモデルそのものにメスを入れてきたという印象があります。仮に、グーグルに何かしら制裁があるとすれば、ほかのGAFA、いわゆるアップル、アマゾン、フェイスブックといったITプラットフォーマーに対しても制裁があるかもしれません。

もし、そうなったら何が起こるのか。わたしたちが安価に使えている音楽ストリーミングサービスであるとか、メールサービスの値段が高騰したり、有料になる可能性もあると思います。

実際、経済学の専攻研究を見てみると、この巨大ITプラットフォーマーに対して規制をかけることは、本当に消費者の利益になるかどうかというのは、非常に議論が分かれているんです。

三田友梨佳キャスター:
市場が強い企業に支配されると、価格競争が働かなくなって、消費者は不利益を受けるともされていますが、なぜIT業界の場合はそうとは言い切れないのでしょうか?

エコノミスト・崔真淑さん:
IT関連サービスはユーザーが増え、個人情報やビッグデータがたくさん集まるほど、利便性や汎用性、商品・広告価値が高まります。

また、IT業界の場合はとにかく低価格、そして高品質によってお客さんを囲い込み、ITプラットフォーマーは収益を得ているわけなんですね。なので勝者が総取りしやすい、つまり1位と2位の差が出やすい業界なんです。

だからこそ、グーグルは自分たちの会社に対して制裁を加えるということは、消費者の利益に本当につながるかどうかはわからないよ、というふうに言っているんです。

こうした今回のケースを考えても、アメリカの反トラスト法であるとか、日本の独占禁止法は、このITプラットフォーマーや新業態に対してどう対応していくべきなのか、課題をあらためて浮き彫りにさせたのかなと思っています。

三田友梨佳キャスター:
利用する側としては、規制による検索機能のサービス低下が起こらないことを願いますし、ほかにより優れた検索エンジンの台頭がないかぎり、寡占の解消にはつながらないようにも感じます。

(「Live News α」10月21日放送分)