巨額不正融資に反社会的勢力への資金提供…2025年、福島の経済界に激震を与えたいわき信用組合の問題。「類例をみないほど悪質な事案」といわれる異例の事態に、いわき信用組合は12月には元会長ら旧経営陣20人に対し、32億円あまりの損害賠償を求めて提訴した。“地域の最後の砦”となる金融機関は信頼を取り戻せるのか。

元職員が語る巨額不正融資

2025年5月、第三者委員会の調査によって明らかになったのは、疲弊した大口融資先に限度額を超える融資を行い、元職員による横領被害を補填するためにペーパーカンパニーや預金者の名義を無断で使った巨額の不正融資だった。

いわき信用組合の不正融資
いわき信用組合の不正融資
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福島テレビの取材に応じた元職員は「本部からの依頼があっての融資だから、何も言わずにやってくれといったような内容だったと思います。全く名前も知らない聞いた事のない方の融資でした」と証言。「当時、何か声を上げていれば、もしかしたら状況は変わったかもしれませんが、何か物申す勇気もなかった」と、疑念を感じながらも声を上げられなかったと振り返る。

約30年続いた「反社」との関係

さらに衝撃的だったのは10月に特別調査委員会が明らかにした「反社会的勢力への資金提供」だ。1990年代、右翼団体とのトラブルを「解決金」を支払って収めたことをきっかけに、約30年にわたり約10億円もの資金が「反社」へと流れていたことが発覚した。

反社会的勢力への提供
反社会的勢力への提供

預金者からは「びっくりしましたね。地元でこんなことが起きるとは信じられませんでした」「預金口座が使えなくなったらどうしようと、ドキドキしていました」との不安の声が上がっている。

埼玉大学の長田健教授
埼玉大学の長田健教授

金融機関の歴史に詳しい埼玉大学の長田健教授は「今回、不正が長い間隠蔽されていた。さらには発覚した後も証拠を隠滅しようとしていた。ここが最大の問題」と指摘。「信用組合という小さな組織体であるがゆえに隠し続けること、改革せずにここまで来ることができたのだろう」と分析する。

信用と信頼を取り戻せるか

不正の中心にいたとされる江尻次郎元会長は、記者の問いかけに対し「お話できませんので」「言えません」「お話しするつもりはありません」と繰り返すのみだった。

江尻次郎元会長
江尻次郎元会長

一方、組合員から選ばれる「総代」の一人は、地域としては「いわき信用組合」の再生を期待するしかないと話す。「私も創業から大変お世話になって、かなり『地域密着型』というか、私たち寄りに相談乗っていただく銀行っていう認識。資金繰りの面とか、他銀行にお願いするのが難しい感じ。健全に経営をされて、新たな地域密着型としての立ち位置を築いて欲しい」と本音を語った。

「正しい金融機関の形」を目指して

いわき信用組合の金成茂理事長は提訴の会見で「当組合の元役員らが多くの不祥事件を引き起こし、組合員・お客様、地域の皆様に多大なるご迷惑・ご心配をおかけしていることを、改めて深くお詫び申し上げます」と述べた。

コンプライアンス研修に取り組む
コンプライアンス研修に取り組む

また組織再生に向けた自身の反省も踏まえて「私も職員時代、本来きちっとものを言うべき事柄があったけど、それを言わなかった。異常なまでの上意下達の企業文化と、それに基づくパワーハラスメントの常態化を招いていた」と語る。
今後は「職員の意見を吸い上げて解決していく。皆で意見を出し合って解決していけば、風通しの良い組織という形を作っていける」と決意を示した。

いわき信用組合の金成茂理事長
いわき信用組合の金成茂理事長

「この1年は、当組員とっては、新しく生まれ変わる機会になった。本来あるべき金融機関の姿になるべきタイミングだった」と金成理事長。
数々の不祥事を「類例をみないほど悪質な事案」と厳しく指摘された同信用組合が、再発防止策を進めつつ、地域からの信用と信頼を取り戻せるか・・・正念場を迎えている。
(福島テレビ)

福島テレビ
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