(リポート:三倉茉裕子アナウンサー、12月19日)

岩手県大槌町では、伝統的な「師走の風景」があります。
潮風がきりっと冷たくなるこの時期に、よりおいしくなる食べ物――新巻鮭です。

新巻鮭は、サケの内臓を取り除き塩漬けにした後、熟成・乾燥させた伝統的な保存食です。
ここ大槌町が発祥の地とされ、約400年以上前に始まったといいます。

町内の越田鮮魚店では、11月から仕込みが始まり、現在は冷たい潮風に1週間ほどさらして乾燥中。
潮風に揺れる「新巻鮭のカーテン」は、まさに冬の風物詩です。

越田鮮魚店はこの新巻鮭を手作業で作っていて、12月19日、店内では箱詰めや切り身作りが行われています。

社長の越田俊喜さんによると、「ことしは脂ものって大変美味しくできている」ということです。

しかし県内では深刻なサケの不漁が続いています。
県内の秋サケの水揚げは、最盛期の7万トン以上から、2025年は11月30日時点で約27トンと激減。
海水温の上昇や震災による孵化場の被災が影響しているとみられます。

越田鮮魚店では北海道からサケを仕入れていますが、価格は以前より4~5割上がり1匹7000円ほどだということです。
それでも手作りの味を求めて約1000本の注文が入り、年内いっぱい作業が続きます。

他地域からサケを取り寄せてまでも新巻鮭を作り続けている理由について、「大槌町は新巻鮭の発祥の地とされ約400年続いている。私たちの代でこの製法を途切れさせることの無いように頑張っていきたい」と話す越田さん。

潮風に揺れる鮭の列は、地域の誇りと大事に伝統をつなぐ強い思いが込められています。

また、越田さんによると、家庭でおいしく食べるコツは「焼きすぎに注意して、ふっくら仕上げる」のがポイントだといいます。

不漁という厳しい状況の中でも、発祥の地として伝統を守り続ける大槌町の新巻鮭。
潮風にゆれる新巻鮭の光景は、まさに“師走の風景”そのものです。

岩手めんこいテレビ
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