火の扱いに注意が必要なこの時期、モバイルバッテリーの発火事故が相次いでいる。
階段から落としたモバイルバッテリーを、そのまま充電すると…突如、大きな炎が。
逃げ場のない公共交通機関で起きると、重大な事故につながる危険も。
被害を広げないために今、注目されているのが、全日空が導入した“世界初”の「火が消える」袋。
そして、モバイルバッテリーは気温が低い冬場でも、発火の恐れがあるという。
モバイルバッテリーの発火にどう備え、防げばいいのか。「newsランナー」が徹底取材した。
■大阪メトロでモバイルバッテリーが発火した想定の避難訓練
先週、土曜日の未明、大阪メトロ梅田駅に集まった、大勢の人。
そこで、実際の車両を使って行われたのが…。
記者リポート:手荷物に入ったモバイルバッテリーが発火した想定で、訓練が行われています。
乗客のモバイルバッテリーが発火した想定で、煙が充満した車内から、けが人や乗客を安全に避難させる訓練が行われた。

■後を絶たない公共交通機関でのモバイルバッテリーの発火
“破損したまま使う”など、誤った取り扱いで、モバイルバッテリーから発火する事故が、後を絶たない。
その要因となっているのが、素材として多く使われるリチウムイオン電池だ。
高温や衝撃に弱く、関連する火災も10年連続で増えている。
中でも被害が拡大する恐れがあるのが、逃げ場のない公共交通機関での事故。
ことし7月には、東京の山手線の車内で、乗客のモバイルバッテリーが燃え、5人が軽いけがをしたほか、関西でも去年、南海電鉄の車内で起きた、同様の事故で3人がけがをした。
ただ、リサーチ会社の「クロス・マーケティング」がことし実施した調査によると、35%あまりの人が、「モバイルバッテリーを外出時に持ち歩く」と回答していて、日常生活には欠かせない存在となっているのも実情だ。
Osaka Metro渡邉訓行危機管理課長:モバイルバッテリーをお持ちの方が、結構いてると思いますし、携帯電話自体もリチウムイオン電池が入っているので、持ち込み禁止というわけにはいかないので、そういう事象(発火など)が起きたら、すぐにその場からみんな避難していただくことを、先決にしていただきたい。

■消火効果ある特殊なフィルムと耐熱性の高い袋で“世界初”の「消火袋」
当たり前に持ち歩くからこそ、どんな対策ができるのか。今、注目されているのが…「消火袋」だ。
航空大手の全日空が、運航する全ての機体に搭載している、「Fire Resistant Bag(ファイヤー・レジスタント・バッグ)」。
発火したモバイルバッテリーをこの袋に入れると、火が出ても消すことができるという、“世界初”の袋なのだ。
ANAオペレーションサポートセンター 平賀一代リーダー:軽くてペラペラな感じなんですけど、こちらを中にセットしてます。これが火を消してくれる役割。
大手印刷会社が開発した消火効果のある特殊なフィルムと、大阪の中小企業が開発した耐熱性の高い袋を組み合わせたこの「消火袋」。
開発のきっかけは、上空という逃げ場のない場所で日々働く、客室乗務員たちの声だったということだ。
ANAオペレーションサポートセンター 平賀一代リーダー:今まで、熱くなったり、膨張してきたら、いつ発火するかわからないという状態を、自分の近くで持っておかないといけないこともも非常に不安でした。安全に保管できるようなものがあったらいいねという声があった。
この“消火袋”の販売先は、企業に限られているが、実は一般の個人向けにも、同じような効果がある商品が販売されているのだ。

■燃え広がりを食い止める“耐火ポーチ”も 「問い合わせ増えている」
取材班が訪れたのは、大阪市内の家電量販店。
ビックカメラなんば店 石川麻衣子さん:こちらが『耐火ポーチ』になります。
このポーチは火を消すことはできないものの、燃え広がりを食い止める効果がある素材で作られている。
母へのお土産を探している、ブラジルからの観光客は。
ブラジルからの観光客:スマホの充電器が火事になったり、スマホが爆発したりするのをニュースで見た。
そこで「耐火ポーチ」の存在を伝えると…。
ブラジルからの観光客:すごい!見たことない。
ビックカメラなんば店 石川麻衣子さん:当店では場所的に、外国人のお客さまも非常に多くて、外国人のお客さまは飛行機を利用したりしますので、その中でモバイルバッテリーの発火が一番リスクとして避けたいところ。問い合わせが確実に増えていることは実感しております。

■就寝中にモバイルバッテリーが突然発火 冬も注意を
モバイルバッテリーを安全に使うにはどうしたらいいのか。
実は、寒い冬を迎えても、発火事案が相次いでいる。
モバイルバッテリーが発火した人:目を覚ましたら空気が熱い。横を見たら火柱が20センチぐらい立っていました。
こちらの男性は、12月1日、自宅で寝ているときに、充電していたモバイルバッテリーが突然発火。右手にやけどを負った。
モバイルバッテリーが発火した人:一瞬だけ鎮火した。鎮火したあと、また『ボン!』という破裂音とともに再発火しまして、洗面器に水を入れて持ってきて、いったん鎮火しました。
さらに12月9日には、京都市内のホテルで宿泊客のモバイルバッテリーが発火し、一時、およそ100人が外に避難した。

■暖房の前で発火リスク高まる 結露にも注意
寒い冬にも関わらず、なぜ発火してしまうのか。
NITE=製品評価技術基盤機構の担当者に聞いてみた。
NITE製品安全広報課 宮川七重課長:冬場でも実は暑いところがあります。例えば、ストーブの前だったり、ファンヒーターの風ですね。熱い風が出てくるところ。そういったとこに置いて使っていたり、充電したりとか、そういったことをしますと、最終的には発火のリスクが高まる。
バッテリーをズボンのポケットにいれたままこたつに入り、低温やけどを負ってしまう事故もあるという。
さらに…
NITE製品安全広報課 宮川七重課長:冬場で気を付けていただきたいことが、結露という現象がございます。寒い外から帰ってきて、暖かい部屋の中に入った時、内部の部品のところが結露してしまうと、余分なところに電気の回路ができてしまって、それが事故につながるようなことが考えられる。
温度変化が急激にならないよう、バッテリーをいったん玄関などに置き、温かい部屋にゆっくりと移すのがいいそうだ。
生活から切り離せないモバイルバッテリー。
デリケートなものだからこそ、常に注意しながら使う必要がある。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月15日放送)

