「神の国」とうたうカルト集団を作り、2人の男性をそそのかし、自殺させた罪などに問われている占い師の女が、17日、法廷に立ちました。
河内長野市の占い師、浜田淑恵被告(63)は、信者だった寺本浩平さん(当時66)と、米田一郎さん(当時51)をそそのかして自殺させ、別の信者からは8000万円以上の金を脅し取った罪に問われています。
自身を神とうたい、カルト集団「神の国」を作った被告は、初公判で何を語ったのか?
「newsランナー」は、浜田被告の共犯の罪に問われた他の信者、全ての裁判を取材しました。
法廷で証言した、カルト研究の専門家は「(浜田被告は)かなり計算して、それっぽく演じた人の感じがしますね」と独自取材に答えました。
現代社会で増殖するカルト問題に迫ります。
■無罪を主張する「創造主」「父」名乗る占い師の女
信者2人をそそのかし自殺させた罪などに問われている占い師の女。
【浜田被告】「システムプログラムが私の中に入って、脳をジャックしてシステムを使ってやったことです」
こう述べ、弁護側は無罪を主張しました。
【記者リポート】「正午過ぎです、霊媒師の女の身柄を乗せた車が警察署に入りました」
ことし1月、大阪府警がメスを入れたのは、河内長野市の占い師で「創造主」や「父」などと名乗る、浜田淑恵被告(63)。
浜田被告は5年前、信者だった寺本浩平さん(当時66)と米田一郎さん(当時51)をそそのかして自殺させ、別の信者からは8000万円以上の金を脅し取った罪などに問われています。
信者の供述によると、浜田被告は「神の国のメンバー」と呼ぶ複数の信者や息子、若い恋人と集団生活を送っていました。
そして信者に知人・親族と縁を切らせ、「神のため」として借金をさせて金を集め、恋人とぜいたくな暮らしをしていたといいます。
■「一緒に自殺をするよう」信者に指示 信者の男性2人は死亡
浜田被告と暮らし、自殺を手助けした罪で執行猶予付きの有罪判決が確定した信者の滝谷奈織元被告(59)によると、5年前、浜田被告の恋人の精神状態が悪化し失踪。
すると浜田被告は…。
【浜田被告】「死んで魂となり、システムを破壊しなければならない」
浜田被告は「恋人を元に戻すために自分は死ぬ」ので、信者の滝谷元被告と寺本さん、米田さんに「一緒に自殺をするよう」に話したといいます。
4人は死に場所を探し、車であてもなく走ると…途中、恐怖を和らげるために鎮痛剤を飲み、そしてたどり着いたのが和歌山の海岸でした。
濱田被告は3人に「お互いの手をマイクコードで結んで、海に入るよう」に指示しましたが、自分の手だけは結びませんでした。
手を結んだ3人と浜田被告は、一緒に海に入って行ったということです。
海に沈んで意識を失った滝谷元被告が目を覚ますと、浜田被告は生きていて、「海中で死んでいた男性2人を引き上げ、その場を立ち去ること」を指示しました。
■2人の死をあざ笑う被告 被害者遺族は「真実を語って」
この後に、信者の前で2人の死をあざ笑う浜田被告の音声が残されていました。
【浜田被告】「ああ、もう本当に私はね、今までも、色んなことやってきたけどね、この世で殺人をすると…いやいや、やってない。やってない、やってない、やってない。人殺しやってません」
初公判を前に、関西テレビの取材に対し、亡くなった寺本さんの遺族が胸の内を語りました。
【亡くなった寺本さんの長男】「(父は)コードでつながれて、薬を飲まされて、殺されてるんですよ。真実を語ってもらいたい。何でお父さんが死ななきゃいけなかったのか」
■弁護側は「心神喪失」で無罪を主張 遺族は「殺人」と憤り
17日の初公判で浜田被告は…。
【浜田被告】「私の口と体を介して、宇宙システムというプログラムが創造主を名乗り行ったことです」
弁護側は、「心神喪失だ」として無罪を主張しました。
【亡くなった寺本さんの長男】「怒りの感情、悲しみの感情、そういった感情が渦巻いてもやもやする。この事件は殺人だと僕は考えています」
■カルト研究の専門家は「(被告は)それっぽく演じた人」
信者の寺崎佐和子被告(47)の裁判で証言をした、カルト研究の専門家は「浜田被告が演じていた可能性が高い」と指摘します。
【立正大学 西田公昭教授】「彼女(浜田被告)の場合は、かなり計算して、それっぽく演じた人の感じがしますね。それほどうまくはない。天才的な発想の持ち主ではなかったんじゃないかなと思うんです。でも、ある程度はできたというところから推測すると、(他のカルトのやり方を見て)先人に学んだ人なのかなと」
■不正に「家」「遺族年金」を奪い取る
また、信者の寺崎被告は法廷で、「浜田被告の指示を受けて、2人の死を利用して金集めをしたこと」を供述しています。
「神の国のメンバー」が暮らしていた家は、寺本さんが8000万円以上のローンを組んで建てました。
寺崎被告は「寺本さんの死亡時には浜田被告の息子に譲る」とする契約書を偽造。
不正に名義を変えて、家を奪い取りました。
【亡くなった寺本さんの元妻】「寺崎(被告)が、浩平の骨の一部をくれと。着衣とともに。滝谷奈織(元被告)、彼女が浩平の内縁の妻ということで、社会保険庁に遺族年金請求するための材料として使われた」
信者の滝谷元被告は法廷で、「内縁の妻を装い、寺本さんの遺族年金を受け取り、浜田被告に全額渡していた」ことを供述しています。
寺本さんの長男の元には、散骨で残されたわずかな遺骨と、寺本さんが死亡した時に身に着けていたハンカチしかありません。
【亡くなった寺本さんの長男】「(父は)1つのことに、とても集中する人でした。僕が何か悪いこととか、叱られるようなことすると、ものすごく怒ったり。でも普段は優しくて、とても頼りがいのある人でした」
■「神の国」に奪われた家には今も信者は住む
主要人物たちの逮捕で、「神の国」は崩壊したのでしょうか…。
取材班が15日、浜田被告らが暮らしていた家を訪れると。
【記者リポート】「『神の国』と呼ばれ、信者の方たちが集まっていたとされるこの家には、今も『浜田』の表札が出ています」
インターフォンを鳴らしてみると…。
【記者】「関西テレビの者です」
【信者とみられる女性】「お答えできません」
【記者】「この家は不正な登記で、住まれていると思うんですけど…」
【信者とみられる女性】「出て行ってください。出て行ってください」
遺族の代理人によると、今も信者と浜田被告の息子が住んでいて、民事訴訟を起こし取り返そうとしています。
■「カルトに近づくリスクが高い」と専門家
専門家は「現代社会ではカルトに近づいてしまうリスクが高まっている」と話します。
【立正大学 西田公昭教授】「今の生活に、何らかのつまづき、ちょっとしたつまずきがあるなとか感じている人は、そこにつけ込まれる可能性が高い。特に最近は気をつけなきゃいけないのはSNS。SNSを入口にすると、何かこの世の中の問題を指摘されると納得してしまい、現実感を持ってしまいがち」
信教の自由もあり、カルトの規制が進まない中で、私たちはどうすればだまされないのでしょうか。
【立正大学 西田公昭教授】「背後には組織や、何かがあるかもしれないっていう、この想像力で、慎重に対応することですね。深みにはまる前に、色んな方々の評価を確認するっていうことが大事」
私たちの身近にカルトの罠があることを忘れてはいけません。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月17日放送)