全国1位のイグサの生産を誇る八代地域。

8月の記録的大雨では、収穫したばかりのイグサや畳表を織る作業場が浸水するなど大きな被害に遭いました。

災害からから4カ月余り。イグサ農家の今を取材しました。

「おはようございます」

(今日はよか天気になったですね)「そうですね」

八代市昭和日進町です。

朝早くから今シーズンのイグサの植え付けの準備をするのは東家 聖治さん。

父親の代から60年以上続くイグサ農家です。

熊本県内を襲った8月の記録的大雨では、東家さんの自宅敷地内にある倉庫兼作業場が浸水。

7月に収穫したばかりのイグサや畳表を織る機械も水に漬かるなど大きな被害が出ました。

【イグサ農家 東家 聖治 さん】
「この付近まで来たと思います」
(Q、今まで浸水したことは?)
「ちょっとくらいはあると思うんですよね。今回の大雨は異常な(水の)量だったんでしょうね」

11月26日。

作業場には東家さんの姿がありました。

この日行っていたのは今シーズン植え付けるイグサの苗の手入れです。

8月の大雨ではこの苗も泥水に漬かりました。

東家さんは、被災した作業場などの後片付けをしながら〈イグサの苗に病気が出ないように〉と大切に育ててきました。

【東家 聖治さん】
「お金がかかるんですよね。肥料もいつもと違うのを散布したり、(イグサの)管理も大変だし、プレッシャーとストレスがすごい。苗が枯れたら次の年の収入が減るか、なくなるかで」

苗の状態に合わせた丁寧な管理の成果もあり、東家さんは「水害を受けながらも茎の太さや株張りもよく、まずまずの苗に仕上がった」と話します。

また、この日は埼玉県にある畳店の4代目、小山 泰治さんがイグサの生産現場の視察のため八代市を訪問。

泊まり込みで作業を手伝っていました。

【小山畳店 4代目 小山泰治さん】
「去年7月に刈り取りの作業(を手伝い)に来て、その直後だったので、ちょっと〈信じられない〉というか、〈東家さんが続ける限りはお手伝いさせてもらいたい〉と思っています」

【東家さん】
「イグサ農家が減っている中で(8月の災害を)畳屋さんも大変心配して、〈もっと国産を販売しよう〉と手助けいただいている畳屋さん、問屋さんも多くなっているみたいなんですよ。そこに応えるためにも〈反別(植える面積)を減らさず、去年同様に植えられれば〉と思って今、一生懸命、作っている」

翌日。

今シーズンのイグサの植え付け作業スタートです。

前日までに準備した苗を専用の植え付け機に積み込みます。

東家さんは植え付け機に乗り込んで田んぼに入り、イグサの苗を植え付けていきました。

八代地域は国産畳表の生産量で9割を超えるシェアを誇ります。

しかし、農家の高齢化や後継者不足などが課題となっています。

今回の大雨はさらに追い打ちをかけ、東家さんの出荷直前だった畳表も水に濡れる被害が出ました。

【東家さん】
「SNSで『イグサと製品が濡れた』と投稿したんですよ。それを見た全国の畳屋さんや問屋さんが『濡れていない部分が使えないか』ということで、問い合わせがあって」被災した畳を全国各地の取引先の畳店が買い取り、濡れた部分を切り取って楽器や家具の材料、ディスプレー用のミニ畳として商品化し、東家さんを支援しました。

【東家さん】
「(SNSで全国から)優しい言葉が寄せられたので、うれしかったです」

こうした支援に感謝しながら今シーズンもいつも通りのイグサ作りに取り組んでいます。

【東家さん】
「毎年やっていることが当たり前にできたということで幸せに感じています。災害も大なり小なり、つらいと思うが、前を向いていくしかないし、いままで通り、しなやかなきれいな畳表をお客さんには畳屋さんを通じて感動してもらいたい」

500年以上前から栽培されてきたという八代特産のイグサ。

その歴史をつなぐ今シーズンの収穫は来年夏ごろの予定です。

テレビ熊本
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