医療費が高額になった場合、患者の自己負担額を一定に抑える「高額療養費制度」をめぐり、自己負担額に「年間上限」を設けることを盛り込んだ見直し案が了承されました。

現在の高額療養費制度では、年収370万円以下から1160万円以上までを5つの所得区分に分けて、月々の医療費の自己負担額の上限が決められています。

これに対して厚労省の専門委員会が取りまとめた案では、患者の支払い能力に応じて負担を求める観点から、さらに細分化して、13の区分に分けて上限額を決めるとされています。

一方で、長期療養の患者に配慮し、自己負担に「年間上限を設けることも考えられる」とする方針も盛り込まれました。

また、70歳以上が外来受診した際の負担軽減の特例については、負担上限の引き上げが検討されています。

具体的な額は2026年度の予算編成の過程で決まる見通しです。

現役世代の負担軽減が議論になる中で、70歳以上の外来受診時に負担軽減となる「外来特例」。

本来「廃止に向けて議論を進めるべき」や「現役世代が重い負担の一方で、高齢者のほうが比較的軽い負担で治療を受けられている現状は公平性の観点から問題ではないか」という厳しい意見も出ているのが現状です。

では、見直されるとどのくらい負担が増えていくのか見ていきます。

まず「外来特例」というのは、高額療養費制度のうちの1つです。
そもそも高額療養費制度というのは、同じ月に高額な医療費の自己負担が必要となった際に、年収に応じて限度額を超えた分について払い戻しを受けられるという、医療費の自己負担を抑える制度です。

そのうちの1つがこの「外来特例」ですが、外来特例は所得が高くない70歳以上の外来受診にかかる負担額に上限額を設けましょう、というもので、つまり負担軽減の仕組みです。

この所得に応じて上限額が現在、決まっているんですが、例えば1万8000円や8000円など、これは年収によって違います。

今回の取りまとめではこの上限額の見直しを行うとしていて、具体的な額はまだ決定していませんが、2024年に廃案になった案で見ていくと、1万8000円だった人は年収に応じて2万8000円や2万円に引き上げられる、そして8000円だった人は1万3000円に引き上げられたり8000円に据え置かれたりする、こういった案が出ていたわけなんですね。

病気で病院に通っている高齢者の方にとっては本当につらい話ですが、具体的にどれくらいの負担が増えるのでしょうか。

モデルとして、年収約330万円で2割負担の70代の会社員の男性の例で見ていきます。

現在は、外来特例の上限額が1万8000円だった場合、1年間でかかった総医療費が約76万円だとすると、2割負担額は約15万2000円ですが、これが外来特例によって黄色の部分の負担が免除されて、12万4000円の自己負担になったわけです。

これが、もし上限が2万8000円に引き上げられた場合、外来特例が適用される黄色の部分がほとんどなくなり、単純計算で自己負担が約15万1000円ということで、もしこの金額で見直されると、年間約2万7000円、自己負担額が増えることになるわけです。

青井実キャスター:
こう見ると、現役世代の負担軽減をしていこうということですが、一方で年を取っていくに伴って頻繁に受診せざるを得ない人もたくさんいらっしゃると。多くの人の疾患を抱える高齢者の特性を考えれば、本来は引き上げるべきではないという慎重な意見も聞かれているわけですが、どう見ますか?

SPキャスター 岩田明子氏:
私も高齢の親を抱えていますから、病院通いが多いので大変なのは分かるんですけども、医療保険制度の持続性と世代間の公平性の観点からするとやむを得ない、取らざるを得ない選択肢なのかなとは思います。

青井実キャスター:
ただ、本当に困っている方にはもちろん届くべきですし、この話はどうしても現役世代だと先の話に聞こえるかもしれませんが、親なども含めて考えていくことも大切ですよね。

SPキャスター 岩田明子氏:
予防医療なども考える必要がありますね。

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