北海道で暮らす働くママの1日を追いかける観察ドキュメント「ママドキュ」。

 子育ても仕事も頑張りながら働くママさんたちのリアルな1日をのぞくと、限られた時間で家事・育児をこなす究極の時短ワザの連続でした。

 今回は、養育里親として2人の子どもを育てるママの1日に密着しました。


 札幌市内に住む いくみさん(48)。児童発達支援施設で働きながら、ハンドメイド作家としても活動しています。

 一見ごく普通の仲良し家族。でも、いくみさんと子どもたちに血のつながりはありません。

 養育里親という制度で実の親の元で暮らせない子どもを預かり、育てているんです。

 朝7時45分。朝食の準備から密着スタート。

 あさひくん(仮名 4歳)とひめちゃん(仮名 2歳)。まるできょうだいみたいな2人は、いくみさんの家に来て1年以上になります。


 この日の朝ごはんはトーストと卵焼き、ブロッコリーにトマト。

 卵は、知り合いの牧場からこだわりの卵を規格外サイズで安く購入しています。

 「おいしいの?早く食べたいな」と言いながら、自分たちで食卓まで運びます。


 午前8時10分に朝食。

 「こういう子たちは、いろんな経験を本当にしていない。外食したことがない。クリスマスパーティーしたことがない。下の子は生まれてまっすぐ施設に入っている。“玄関”の存在を知らなくて(家に)入ってこられなかった。ありとあらゆることを教える感じ」と、いくみさん。


 里子に怒ることもあるか聞いてみると…。

 「”うちに来たらうちのルール”が(里親を)やり始めた当初からあった」という夫・ようすけさん(47)。

 「人を傷つけてはいけない、乱暴にしてはいけない。基本的なことだけはみんなと同じように覚えてほしい」といくみさんは話します。


 下の子の髪をセットしてあげながら、「本当に楽しくてね。毎日毎日。別にまだこんな髪型にしてと頼んだりしないんですけど、今日はこうしようかなと。リボンもつけて」と話すいくみさんは、とってもうれしそう。

 子どもたちそれぞれが身支度を整えたら、午前8時50分、幼稚園の見送りへ。

 もともと保育士として働いていた、いくみさん。実の息子が高校生になり、子育てが落ち着いた3年前に養育里親を始めました。

 「虐待のニュースが心にひっかかっていて『なんでこんなことする人がいるんだろう
』と思い、(里親に関する)CMや新聞広告を立て続けに見て『養育里親だったら社会に貢献できるし、保育士資格も活かせる』と思ったのがきっかけ」と話します。

 養育里親は里子の生活にかかるお金が国と自治体から支給されていて、里親の負担がなくても育てられるような仕組みになっているのだそう。

 洋服類は支給されたお金の中でやりくりしています。

 自宅でギター教室を営みながら音楽イベントのスタッフとしても働いている夫・ようすけさんは、いくみさんの思いに寄り添ってきました。
 
 「子どものね、虐待の話にも漠然と関心があったので、(児童相談所)に話を聞きに行ったのがきっかけ」と話してくれました。

 午前10時、仕事開始。

 実際に里親になると、虐待などで実の親の元で暮らせない子どもが多いことに驚いたと言います。

 「(3年間で預かった里子は)兄弟も含めたら11人ぐらい。そういう境遇の子たちが多いみたいで、(里親の)研修が終わって、登録が決まりましたっていう電話の時に『さっそく明日からきょうだいのお子さんお願いできますか?』って言われて、(子どもたちが)待ってる状態なんだとびっくりした」と話します。

 「遅刻です…」と言いながらお昼過ぎに起きてきたのは、専門学校に通う長男のゆいきさん。

 両親が自分をのびのびと育ててくれたように、里親の活動には口を出さず応援してくれているんだそう。

 息子が無事に起きたのを見届けて、勤め先へと出発です。

 マンションの一角を利用した児童発達支援施設。放課後の子どもたちが勉強や思い思いの遊びをしに訪れます。

 保育士時代から15年以上、たくさんの子どもの成長を見守ってきた経験が、今に生きています。

 仕事を終えて午後5時、子どもたち2人と一緒に買い物へ。

 ミカンや鶏肉を買って、お正月飾りを眺めながら何気ない会話をして…スーパーを後にします。

 帰りの車で寝てしまい、ご機嫌斜めなあさひくん。

 玄関で泣いていましたが、アンパンマンをみて復活。

 その後は元気に走り回っていました。

 夕飯を作るのはパパ・ようすけさん。料理はかなりこだわりが強めなようで…。

 鶏の唐揚げは酒、砂糖、醤油、ニンニク、ショウガ、オイスターソースで味付け。

 砂糖を入れることで、胸肉などパサつきやすい肉もジューシーに仕上がるのだそう。

 ようすけパパ流、鶏の唐揚げは、下味をつけた鶏肉に先に小麦粉をまぶし、揚げる前に片栗粉をまぶします。

 大事に手入れしているというお気に入りの中華鍋は、中華の鉄人、陳建一の北京鍋。

 お肉は二度揚げしてカリッとジューシーに仕上げます。

 「ああ、お腹すいた」と言いながら、いくみママはひめちゃんとシール遊び。子どもたちと共に過ごすかけがえのない時間です。

 血のつながりを超えてかわいがった子どもたちも、いずれ別れが来るのが里親の宿命。夫婦は半年間過ごした里子との別れを経験しています。

 「帰る時にお手紙を書いてくれて。『ずっとここにいたいけど、いられないんだね』っていうのが切なくて。『行きたくない』って私の腰にしがみついて、最後は閉まる(扉の)窓ガラス越しにタッチして…。これが里親の辛さではあるなとは思いましたね」といくみさんは話します。

 それでも、立ち止まるわけにはいきません。

 「別れがあったとしても、また次に迎え入れるべき子が次々と来る。その子たちのことを考えたら、悲しんでばかりはいられない」といくみママ。

 「あなたが幸せになるために、ここで生活をします。もっと幸せになる道が、両親とのもとでできるのであれば、その時には幸せになってよって…」と話しながらいろいろな場面を思い出し涙を流す、いくみさん。

 子どもたちの幸せを第一に考え、きょうも「最高!」と笑顔で食卓を囲みます。

北海道文化放送
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