被災地同士の絆です。能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市に11月24日、住民が集うマルシェがオープン。台風19号災害で被災した長野市長沼地区の住民たちも駆け付け、獅子舞を披露しました。経験したから分かる被災者の思い。エールを送りました。

マルシェの関係者:
「3、2、1オープン!いらっしゃいませ!」

石川県輪島市門前町の「とうげマルシェ」。住民有志が復興に向け、11月24日にオープンしました。コメや野菜、総菜などが並ぶミニスーパーにカフェも併設。住民の集いの場として期待されています。

住民:
「欲しいものあったら、歩いてさっと買えていいじゃないですか。待ってました」
「これからだんだんと家も建つし、これからですね」

オープニングで会場を沸かせたのは獅子舞。披露したのは長野市長沼地区の六地蔵町獅子舞保存会です。2019年の台風19号災害で被災した住民たちが駆け付けたのです。

六地蔵町獅子舞保存会・岩崎正幸さん:
「皆さんの表情も前向きになってくれてるかな、って思いながら舞っていたというか。前を向きたいってみんな思ってるから、きっとここに来たんだろうなって」

経験があるからこそ分かる被災者の思い―。

長沼地区の住民は獅子舞でエールを送りました。

2024年の元日に能登地方を襲った地震。輪島市は約8700棟の住宅が半壊以上となるなど甚大な被害を受けました。今も多くの住民が仮設住宅などで暮らしています。

星野百代さん:
「メリークリスマス!」

2024年12月、輪島市門前町の仮設住宅の集会所で開かれたクリスマス会。焼きそばや唐揚げ、デザートなどの料理を提供したのは、長野市長沼地区で飲食店を営む星野良和さん、百代さん夫妻です。

長沼地区で飲食店経営・星野良和さん(2024年12月):
「一度受けた恩というのは永遠に続くものだと思っていますので、困っている人を助けたい、助けられたら助けたいという思いが強い」

星野さん夫妻は何度も能登の被災地に炊き出しに訪れています。2019年の台風19号災害で長沼地区に全国から多くのボランティアが訪れたことへの「恩返し」の思いからです。

輪島の住民とも交流を深めてきました。

その一人、門前町道下地区の柴田寿美香さん。自宅が全壊し、仮設住宅に家族3人で暮らしています。

輪島市門前町で被災・柴田寿美香さん(当時):
「先はやっぱり、不安しかないです」

復旧・復興の見通しが立たず不安が募る中、心の支えになっていたのが星野さんらボランティアとの交流です。

柴田さん:
「ボランティアで来てくださる人に会うのが楽しみなんです。待ってる時間が楽しくて、本当に気持ちも明るくなる」

2025年7月、長野市で開かれた夏祭りに柴田さんの姿が。交流をきっかけに訪れ、能登支援のブースで海産物などを販売しました。

柴田寿美香さん:
「解体が進んだだけで復旧・復興はまだまだ進んでいないというのを皆さんに知ってほしい」

柴田さんは長沼地区の星野さんの店も訪れ、地域住民とも交流してきました。復興について語り合う中、輪島に憩いの場となるマルシェを立ち上げる計画を伝えました。

それを聞いた長沼地区の岩崎さんは―。

長沼地区の住民・岩崎弘幸さん:
「柴田さんたちも自分で被災しているし避難所にいるにもかかわらず、自分の地区を盛り上げようっていう行動をしていることにすごく感動しまして」

その時、岩崎さんは柴田さんとある「約束」を交わしました。

その後、柴田さんら門前町道下地区の住民有志は、クラウドファンディングなどで支援を募りながらマルシェ設立に向け準備を進め11月24日、ついにオープンにこぎつけました。

交流を続けてきた星野さんもキッチンカーで出店。

長沼地区で飲食店経営・星野良和さん:
「きっかけは災害なんですけど、災害の中で生まれたご縁を大切にして、今後も支援の輪を広げていけたらいいなと思っています」

オープンにこぎつけた柴田さんは―。

柴田さん:
「ずっと泣いてばかりだったんですけど、きょうは皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。この場所がみんなの笑顔のあふれる楽しい空間になってもらえればうれしいです」

そして、長沼での「約束」が果たされる時がやってきました。

六地蔵町獅子舞保存会・岩崎弘幸さん:
「酔った勢いで、オープニングの時に獅子舞に行くよって言っちゃったら、本当に来てます」

2025年7月に交わした約束は「マルシェのオープンには獅子舞で盛り上げる」。

六地蔵町獅子舞保存会・岩崎弘幸さん:
「お祭りや獅子舞って、住民の人たちの心のよりどころになるんじゃないかなっていうのもあって、僕らやってる獅子舞も何年かぶりに獅子舞をやった時の住民のうれそうな顔っていうのが、忘れられなくて」

2019年の台風19号災害では保存会メンバー全員が被災。本格的に活動を再開できたのは、3年後の祭りでした。自分たちが一歩一歩前に進んできたように、能登の被災者にも前を向いてもらいたい。

六地蔵町獅子舞保存会・関博之さん:
「(自分たちが)いただいた恩を返すっていう思いでお伺いしました。ここ拠点に、どんどん皆さんの集う場が盛り上がっていただければと応援しています」

復興までの長い道のり、そして苦しさ―。

自分たちも経験してきたからこそ伝えたい思いがありました。

六地蔵町獅子舞保存会・岩崎弘幸さん:
「コミュニティーが復活するというのは、そこにいる住民の人たちが頑張るしかない。大変だと思うんです、すごく厳しいと思います。けど、そこを諦めずにとはなかなか言えないけど、頑張ってもらいたい」

エールを受けた柴田さんは―。

とうげマルシェ代表・柴田寿美香さん:
「とてもすてきでした。同じ災害を経験した長野県と石川県なんですけど、そのつながりでここに来ていただいて、私たちのために舞ってくれたのがうれしいです。ありがとうございました。お互い頑張っていきます」

互いに地域の復興を願う被災者同士の絆。これからも交流を続けていきます。

長野放送
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