年の瀬が近づく師走。南砺市井波の彫刻師、山崎新介さんは早くも来年の春に向けた準備に余念がない。山崎さんの工房で獅子舞で使われる天狗のお面が生み出されていく様子を取材した。

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表情を意識した彫りの技

「正しく見える角度というか、実際の面を見ることになる角度。下から見てたら分からないところもあるので、面を被って踊っているところを想像して」と語る山崎さん。彫刻刀を手に、木材と対話するようにして天狗の表情を刻んでいく。

数十本もの彫刻刀を巧みに使い分け、木に命を吹き込んでいく。山崎さんは実際に自分で面をかぶって確認しながら作業を進める。「まだもっと削るけど俺のでかい顔でかぶれるんだったら誰でもかぶれるだろうなーと思って調整しています」と笑顔を見せた。

勇ましさだけではない多彩な表情

「よく『いさどい』というか勇ましい感じの顔を所望されることがあるんですが、勇ましいばかりでも偏るし、ギョロっと目をむいて怖そうな顔ばかりというのも違う気がして」と山崎さん。単に迫力があるだけではない、奥行きのある天狗の表情を追求している。

「荒ぶる獅子を蟄伏してとか、色んな表情があると思うのでいろんな表情が見えるような面にできたらいいな」という思いを込めて、一つ一つの面に多様な表情を宿らせようとしている。

素材へのこだわり

材料には、軽くて丈夫な桐木を使用。特に山崎さんのこだわりは、天狗の面には鼻の部分も一体化して彫れる「枝が残った木」を選ぶことだ。

「とも木という一つの木から彫りだすのが強さとかだけではなくてなんとなく大事かなと思っちゃったり。いや後から付けたっていいんだけど、やっぱり一つのものから彫りだしたいなと思いますね」と語る。ただし、「木がなくて困ってますけど」と素材確保の苦労も垣間見えた。

春の獅子舞を想いながら

桜が咲くころ、優雅に、そして勇ましく舞う天狗の姿を想いながら、山崎さんは一刀一刀彫り進めていく。

「(獅子の面の)目が生きるようにっていうのは思って彫っている。見栄を切る時にパチッと表情が決まるようにっていうのは思ってますけど」と語る山崎さん。そして「踊りてもそういう風に見せて踊ってくれているからそれにこたえられるようなかたちにしとかないとね」と続け、舞う人と観る人、そして作り手である自分との間に生まれる共感の輪を大切にしている様子がうかがえた。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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