今年は全国的にインフルエンザの感染が拡大しており、富山県内でも依然として警報レベルを超える状況が続いている。そうした中、「痛くない」検査法やワクチンが注目を集めている。特に子どもたちに向けた新しい対策として、鼻から吹きかけるタイプのワクチンやAIを活用した検査方法が県内の医療機関で導入されている。

変異株「サブクレードK」による感染拡大が続く

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富山県によると、12月7日までの1週間に確認されたインフルエンザの患者数は2週連続で減少したものの、依然として警報レベルを超えている状況だ。今年特に流行しているのは「サブクレードK」と呼ばれるインフルエンザA型の変異株である。

県衛生研究所の大石和徳所長は、「ウイルス抗原が変わってその抵抗力がない人がほとんど。感染力が高まっている」と説明する。一方で、症状については「個人でそれぞれ」としながらも、「抗インフルエンザ薬は(種類が)いろいろあるが、効果があることはわかっている。これまでのインフルエンザAと大きく変わるものではない」と話す。

大石所長は、変異株であっても従来の薬が効くとしたうえで、特に高齢者に対してワクチン接種の検討を呼びかける。

「高齢者で心配なのは肺炎の合併。細菌性肺炎を起こしやすくなるので注意。そこを緩和するのがワクチン。できるだけ接種を検討してほしい」

注目の「痛くないワクチン」——鼻から吹きかける「フルミスト」

最近注目されているのが、注射針を使わないタイプのワクチン接種だ。富山市のふじのき内科クリニックでは、鼻の中にスプレーを吹きかける「フルミスト」と呼ばれるワクチンの接種を行っている。このワクチンは去年から医療機関での接種が可能になった。

クリニックで接種した高校生は、「水がちょっと鼻にかかる感覚で痛くなかった。とてもラクで早くてよかった」と話す。

この「痛くないワクチン」は2歳から18歳までが対象で、価格は8,000円と従来のワクチンより割高だが、年1回の接種で済むという利点もある。県内ではすでに予定数量に達し、予約を終了したクリニックが多いという。

ふじのき内科クリニックの三輪敏郎院長は、「効果は注射よりも長い。半年から1年という報告を受けている。感染したとしても症状が軽くなることもあるので受けることをおすすめする」と効果を説明する。

AIによる「痛くない検査」も登場

痛みを伴わない対策は、ワクチンだけではない。射水市の富川クリニックでは、AIを活用した「痛くない検査」を導入した。

「咽頭部の写真を撮ることで咽頭の初見と合わせて、症状、(感染者)との接触について入力したものを用いて、AIが陽性・陰性を判定する機械」と富川武樹院長は説明する。

この検査器は先端にカメラがついた機械で、のどの奥を撮影し、50万枚以上の画像データを基にAIが解析。問診の内容と合わせて、陽性か陰性かを判定する。精度は約70%とされている。

検査を受けた人は「口を開けている時間が苦しいかもしれないが、そのほかは全く痛くもかゆくもなかった」と感想を述べた。

検査時間は数秒から十数秒ほどで、従来の鼻ぬぐい検査と大きく異なる点は、発熱直後でもインフルエンザ感染の有無を判断できることだという。

富川院長は「鼻ぬぐいの抗原検査だと、12~24時間経過しないと陽性判定が出ない、(AI検査器であれば)熱が出てから3時間ほどで陽性判定が出る」と、早期検査の可能性を強調する。

この検査は6歳以上が対象で、費用は従来の検査とほぼ同額。富川院長は「鼻が痛くて嫌がることの多いお子さんにとって、非常に痛みが少なく低侵襲ということで比較的ラクな検査」と話している。

引き続き予防対策の徹底を

富山県内ではインフルエンザの感染が警報レベルを超える状況が続いており、「うつらない、うつさない対策の徹底」が求められている。今回紹介した鼻スプレー式ワクチンやAI検査は、特に子どもたちにとって「痛くない」という点で有効な選択肢となりそうだ。

ワクチン接種の検討や、早期検査・早期治療など、それぞれの状況に合わせた対策を講じることが重要である。

(富山テレビ放送)

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