鍋が美味しくなるシーズンとなってきたが、和食に欠かせない昆布の価格が高騰している。富山市の一世帯あたりの年間昆布支出金額は全国1位と、富山県民は昆布好きで知られているが、その昆布不足が正月料理にも影響を与えそうだ。

「例年の20~25%しか入ってこない」昆布専門店の棚が空っぽに

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昆布を専門に扱っている高岡市の「室屋」では、例年なら12月中には全ての昆布が入荷している状態だが、今年は状況が異なる。

「いつもだと12月中には全部コンブが入っているが、まだ全く入っていないような状況」と室谷和典社長は語る。

300種類の昆布を販売している室屋だが、例年商品で満杯になる倉庫だが、その一角にある棚はガラ空きとなっていて、入荷が滞っている。

「今年は(例年の)20%~25%ほどくらいしかコンブが入ってこないと思う」と室谷社長は見通しを語る。

特に、料亭などで使われる「昆布の王様」と称される羅臼昆布は、例年11月中に200本ほど入荷するところ、今年はまだ50本ほどしか入っておらず、注文をさばき切れない状況に困惑の表情を見せる。

「金額自体が軒並み上がってきている。商品にも転化せざるを得ない状況が続く」と室谷社長は価格への影響を指摘する。

記録的不漁と和食ブームが昆布高騰の要因に

品薄となっている昆布の背景には、和食ブームで業者間の商品の取り合いが激化していることと、生産地での記録的な不漁がある。

昆布の生産の9割を占める北海道の漁連によると、現在市場に出回っている昆布のほとんどは去年の夏に収穫されたものだ。去年の昆布生産量は8213トンと統計史上最低を記録し、これが価格高騰の要因となっている。

今年の昆布生産量は1万1012トンと回復が見込まれているものの、それが加工されて本格的に市場に出回るのは来年の見込みで、当面は昆布の品薄状態が続くと予想されている。

室屋では去年に比べ昆布の仕入れ値が最大で42%高くなっており、肉厚で質の良い昆布も年々減少傾向にあるという。

食品メーカーも価格転嫁を余儀なくされる

昆布価格高騰の影響を直接受けているのが、大量の昆布を仕入れている食品加工会社だ。

富山市の創業140年の老舗食品メーカー「かね七」は、昆布価格の高騰により、昆布を使用した商品の値上げを余儀なくされている。

「こんぶだしは大体30%アップ。昆布巻は50%程度」と、かね七営業部の大井裕司部長は説明する。

かね七では昆布の仕入れ先を今年は2社から7社に拡大し、昆布の確保に努めている。しかし、生産量が回復しない限り、昆布の価格高騰は収まらないとし、以前より余裕を持った仕入れを行うよう対応を変更している。

値上げでも衰えない富山県民の「昆布愛」

値上げにもかかわらず、昆布を使った商品の需要は堅調だという。

「こんぶだしも昆布巻も人気の商品。価格は上げたが売り上げや出荷量はほぼ昨年並み」と大井部長は語る。

値上げが続く中でも、昆布を使った商品は富山県民のソウルフード、地場産品として需要が衰えていないようだ。しかし、正月の食卓に欠かせない昆布の価格上昇による家計への影響は今後も続きそうだ。

富山県民の食文化を支える昆布の供給不足。海水温の上昇や生産者不足によって年によって増減はあるものの、依然厳しい状況であるそう。各業者は工夫を凝らして昆布の確保と価格高騰への対応を模索している。

(富山テレビ放送)

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