12月、受験生たちは共通テストや一般選抜に向けて追い込みの真っ最中だ。大学進学率は上昇を続け、2024年度は62.3%で過去最高を記録した。その一方で、大学の存続を揺るがす「2026年問題」が迫っている。

2026年、進学者数が減少に転じる?

18歳人口が減少する中、これまでは進学率が上昇することで進学者数の増加を維持してきた。しかし少子化に歯止めがかからず、2026年度を境に「減少に転じる」と指摘されている。

大学ジャーナリスト・石渡嶺司さん
大学ジャーナリスト・石渡嶺司さん
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大学ジャーナリストの石渡嶺司さんはこう話す。
「2026年問題で、これまで安泰だった大学も安泰ではなくなります。いわば“大学の戦国時代”に入っていく。今後10年で4年制大学は少なくとも50校、多ければ100校減る可能性があります」

その兆候はすでに全国で表れつつある。京都華頂大学や華頂短期大学は2027年度から募集を停止すると発表した。さらに京都ノートルダム女子大学も2026年度以降の募集を止める。

広島県内でも大学再編は現実のものとなった。
広島女学院の海田智浩理事長は、現状と向き合ったうえで大学運営を手放す決断をした。
「学校法人広島女学院は中・高に特化した法人になります」

広島女学院が大学運営を手放す決断
広島女学院が大学運営を手放す決断

背景にあるのは、少子化による慢性的な定員割れや共学志向の高まり。大学を維持するのは難しいと判断し、2026年4月からは、京都や山口を中心に専門学校などを展開するYIC学院へ大学運営を引き渡す。名称は「YIC学院大学」に変わり、2027年度からは共学へ。広島に根づいた女子大学の大きな転換点だ。

広島修道大が「農学部」設置に挑む

一方で、生き残りをかけて存在意義を見出そうとする大学もある。

広島修道大学で開かれた産学官協議会
広島修道大学で開かれた産学官協議会

学生約6400人を抱える広島修道大学は、2027年4月の「農学部」設置を目指し、産学官が協議を重ねている。広島県農林水産局の向井雅史局長は「より即戦力として、広島の課題を解決できる人材が育成されるのでは」と期待を寄せる。

修道大学初の理系学部であり、農学部としても県内初。構想では「食農科学科」「生物科学科」「環境社会科学科」(すべて仮称)の3つの学科をつくり、環境問題をはじめ、食料や生物資源の安定供給など今の社会が直面する課題解決を目指す。

広島修道大学の新しい「農学部棟」イメージ
広島修道大学の新しい「農学部棟」イメージ

大澤真也副学長は、農学部の設置に地域との関わりを見据えている。
「広島市は政令指定都市でありながら、里山や里海が身近にある自然豊かな環境です。地域ニーズは高いと思います。大人は農業の大切さを理解していますが、若い世代にどう伝えるか。そこは丁寧に取り組まなければなりません」

全国初、女子大の理工学部誕生

すでに新たな学部を動かし始めた大学もある。
学生数約5400人の安田女子大学は2025年、女子大学として全国で初めて理工学部を設置。AIの発展による産業構造の変化を背景に、“理系女子”の育成に舵を切った。
企画部の脇田好章部長は「これから理系の人材がますます必要になる。日本は特に女子の理系が少ない。だからこそ育成したいと考えました」と話す。

初年度の2025年は「生物科学科」「情報科学科」「建築学科」の3つの学科で、いずれも定員を上回る学生が入学。生物科学科に進んだ愛媛出身の学生は、文系科目で受験できるメリットを強調する。
「高校で生物も化学も深く勉強できなかったんですが、興味はあって。安田女子大学の生物科学科なら基礎から学び直せると聞き、この大学を選びました」

建築学科の学生による課題作品
建築学科の学生による課題作品

建築学科へ進んだ島根出身の学生は、一級建築士を目指しているという。
「設計課題が一番忙しいんですが、先生や先輩からアドバイスをもらい完成した時の達成感は大きいです。資格を取得して、将来はその土地ならではの特性を生かした建築を考えたいです」
2025年の就職率は99.5%と高い水準を維持し、出口支援にも力を注いでいる。

成長分野は「デジタル」「グリーン」

少子化で大学を取り巻く状況は、親世代とは様変わり。「2026年問題」が指摘される今、変化する大学事情の中で進路をどう選ぶかが問われている。
河合塾の近藤治主席研究員はこう語る。
「今後も少子化が進み、2040年には志願者が今の7割ぐらいに減ると見込まれています。大学は拡大路線と縮小路線に分かれていく。ただ大切なのは、“自分が本当に行きたい大学かどうか”、そして“その大学で目標を果たせるかどうか”を親子でじっくり考えることです」

広島大学大学院・匹田篤准教授
広島大学大学院・匹田篤准教授

国は「デジタル」や「グリーン」など成長分野に対応する大学を支援し、広島修道大学や安田女子大学もその支援を受けている。
だが、地域の将来を見据える視点では別の懸念もある。教育現場にいる広島大学大学院の匹田篤准教授は強い危機感を抱く。
「広島大学もAIやデータサイエンスに力を入れています。ただ18歳人口が減る中で大学が縮小に向かうと、若者が首都圏に流れてしまう。広島にある大学が一定の規模を保つことは地域社会にとって重要です」

自分の将来と向き合い、大学入試に挑む受験生。そして大学もまた、増える見込みのない進学者数を前に自らの“価値”を問い直している。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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